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自転車保険:低い認知度 損保各社、販売中止 警察庁所管系も加入2%

 自転車と歩行者の事故が10年間で3・7倍に増え、自転車側への高額賠償判決が相次ぐ一方、それに備える保険への関心が極端に低く、損害保険各社が3月までに「自転車総合保険」の販売を中止していたことが分かった。警察庁所管の日本交通管理技術協会が交付する「TSマーク」に伴う安価な自転車保険の加入率も現在2%。全日本交通安全協会が05年に約900人を対象としたアンケートでは「保険に加入」16・5%に対し「保険自体を知らない」が54・9%に上っていた。(社会面に「銀輪の死角」)

 自転車は、車やオートバイが強制加入させられる自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)の対象外。自転車の車道走行のルールを厳格化するため道路交通法が改正された07年以降歩行者をはねた自転車側に対する高額賠償判決が相次いでいるが、自転車が保険未加入のため被害者に賠償が及ばないケースも生じており、保険における安全網構築の重要性が改めて浮かんでいる。

 損保各社は80年から自転車総合保険の販売を始めた。自転車に乗っていて自分が死傷した場合と、他人を死傷させたり物を壊した場合のいずれも補償。年3000円の保険料で、最高2000万円の対人事故補償が標準的だった。

 しかし、05年以降の保険商品簡素化の中、自転車総合保険も整理対象になり、3月で販売を中止。現在は、自転車事故やそれ以外も含めて他人の身体などに危害を与えた際に賠償する「個人賠償責任保険」を、火災保険などに特約として付けるよう勧めている。

 「自転車保険のニーズはあり、方法次第でビジネスになる」(朝日火災海上保険の営業担当幹部)と将来性に期待を寄せる声もあるが、ある損保関係者は「保険料が安い割に支払いが多く、販売実績も少ない。経費を考えると特約として販売した方が効率的」と指摘。日本損害保険協会も07~09年度、自転車の交通ルールや賠償について説明する冊子を12万5000部発行しPRに努めているが「『自転車に乗るなら保険に加入する』との認識は広まっていない」(損保関係者)という。

 このため現在、自転車専用の保険は、学校など団体向けの販売や、生活協同組合連合会の組合員向けなどにとどまる。他保険の特約は、どの程度普及しているかは不明だ。

 一方、日本交通管理技術協会は、自転車店での購入時や点検・整備時に1000~2000円程度の手数料で「TSマーク」(有効期間1年)を自転車に張り、対人死傷で最高2000万円を補償する保険制度を展開している。だが、09年度のTSマーク交付枚数は約141万枚で、08年の全国自転車保有台数約6910万台のわずか約2%にとどまっている。【馬場直子】

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 ■ことば

 ◇TSマーク

 財団法人・日本交通管理技術協会が、警察庁の指導で自転車安全対策の一環として79年に交付を始めた。協会の検定に合格した自転車安全整備士(現在約6万人)が自転車店で点検・整備し、安全と認めた自転車に張る。TSは「Traffic Safety」(交通安全)の頭文字。82年から事故被害者の救済などを目的に、自分や相手が死傷した場合に補償する保険が付けられた。保険料は点検・整備料に含まれ、各店で料金は異なる。

毎日新聞 2010年8月22日 東京朝刊

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