「巨人12‐5阪神」(20日、東京ド)
阪神は巨人戦3連戦の初戦を落とし、連勝は5で止まった。先発の小嶋達也投手(24)が2回もたずに降板するなど先発陣が駒不足の中、21日の先発にはドラフト4位ルーキーの秋山拓巳投手(19)が抜てきされた。20日に初めて出場選手登録されたルーキーは、球団史上初となる高卒新人の巨人戦での初登板初先発に挑む。中日がヤクルトに敗れ、巨人が再び2ゲーム差で2位に浮上した。
◇ ◇
五回が終わり、巨人ファンの大歓声を背中に聞きながら、秋山はひっそりとドームを離れていた。背負う責任の重さをかみしめながら、1人でホテルに戻った。託されたのは、猛虎史上初の歴史的なマウンドだ。戦う相手が、いかに強大であるかは百も承知。簡単には屈しない。巨人に待ったをかける。それだけだ。
「強力打線というのは、小さいころから見ていて今も印象は変わってない。小笠原さんとか、フルスイングを見せられるとすごい印象を受けます」
終わってみれば、6投手のリレーで16安打12点を浴びての敗戦。中日に3連敗し、沈黙していた巨人打線が目を覚ました感も否めない。そんな中でのデビュー戦だ。球団史上初となる、高卒新人の巨人戦での初登板初先発。酷な状況だが、決して役不足ではない。
2軍では、12試合に登板して2勝2敗、防御率2・15という成績だ。投げた試合ではしっかりとゲームを作ってきている。この段階での1軍デビューも、おかしくないだけの成績は残してきた。
慣れない敵地だが、偶然にも「予行演習」に恵まれていた。7月26日に、NPBフレッシュ選抜として大学日本代表と戦った場所が東京ドーム。そこで1回1安打無失点の好投を披露した。
「投げやすいです。ファームの初登板は緊張したけど、今回は大丈夫な気もします」と秋山。また、高校2年に神宮大会に出場した際、同時期に東京ドームで行われていた08年のアジアシリーズ・西武‐SK(韓国)戦を観戦していた。プロの真剣勝負の空気に触れた思い出深い場所。悪いイメージはない。
真弓監督は「ちょっと勢い付かせてしまったのはあるね。3連戦、5連勝と良かったんでこういう試合もある。切り替えていきます」と、敗戦を振り返った。ルーキーに重圧となりかねない黒星。悔やんでも時間は戻らない。信じてマウンドに送るだけだ。
この日はキャッチボールやダッシュなどで入念に調整した。19日に1軍に合流して、3日目で迎える運命の一戦。「そんなに緊張せずにやれればいつも通りできると思います」。期待と不安が交錯する。ドラフト指名後、1位でなかった悔し涙から、ただ上を目指して歩いてきた。伝統の一戦、ドラマの予感が漂う。堂々と、宿敵に立ち向かう勇姿が見たい。