Kiss ME Baby!

10/08/21 13:49 :novel
Lost Blue-MyBlue(4Dante×4Nero)

世界から色が消えた。
あの子が居ない。此処にはまだあの子の匂いも気配も残っているのに、どうして会えないのか。
寂しい、寂しくて死んでしまいそうだ。
あの子だけは、あの子だけでも、あの子しか、護ろうと愛そうと、共に居ようと誓ったのに。
何一つ守れなかった。世界に奪われた。
何を憎めばいい?悪魔か?世界か?自分自身か?
あの子が居ない、それだけで思考は鈍り、世界は色を無くす。
嗚呼、坊や―ネロ、俺の愛した子供、逢いたい。
抱き締めて、愛を囁きたいんだ。

 

閉じられた瞼はもう二度と彼を映す事なく、長い睫毛が影を落とすだけだ。
腕に抱いたまま、どれくらいの時間が経ったのかダンテにも解らなかった。
ただ、降り出した雨がネロの涙を、血を総て流し尽くす。
「…ネロ、ネロ、ネ、ロ…」
どんなに名前を呼んでもその瞳がダンテを見ることもなく、その唇が返事を紡ぐこともないことに胸がズキズキと痛んだ。
このまま、雨に溶けて消えてしまえればいいのに。
このまま、この胸の痛みで死んでしまえたらいいのに。
無理な話なのは十分に判っている。けれど思わずには居られなかった。

暫くネロの髪や頬を撫でていたダンテは息をひとつ吐いて立ち上がる。
立ち上がった拍子にネロの腕がだらりと力無く垂れた。ズキズキと痛む胸を押し殺してダンテはネロに笑い掛ける。
「…家に、帰ろう、ネロ」
落ちた腕が触れてくることも、返事が返ってくることも無い。
その事実にダンテの胸は潰れるんじゃないかと思うほど苦しくなった。
こんなに痛くて苦しいのに変わらない事実が酷く恨めしい。
闇色の空を見上げて、ダンテは魔力を解放した。旋風が吹いた次の瞬間には二人の姿は無かった。
降り続く雨が何事も無かったかのようにすべて洗い流していった。


濡れる床を気にすることなく、薄暗い室内を迷う事無く進んでゆく。
数時間前までは暖かな空気が流れていたとは思えないほど、室内は暗く冷たく冷え切っていた。
まるで今の自分のようだとダンテはぼんやりと思う。
階段を上がって奥にある扉を開く。途端広がるネロの香りに胸の痛みは一層酷くなって目の奥が熱くなる。
ベッドに壊れ物を扱う様に寝かせる。ただ眠っているようにしか見えない。それくらい安らかな顔だった。
呆然と立ち尽くす。何度も思った、これは性質の悪い夢なんじゃないかと。目が覚めれば横にはネロがいて、また変わらない日常を過ごすんじゃないかと。
何度も、何度も思った。けれど、醒める気配も無ければ、この胸の痛みも軽くなる事はなく酷くなる一方だ。

 

「ネロ、愛してる…」
そうだ、これからもずっと、ネロだけを愛す。それだけは変わらない、変えられない。
眠るネロに口付けを落とす、ヒヤリと冷たい唇が酷く寂しい。

目の奥がズキズキと痛いのに、もう涙も出ない。辛くて哀しくて寂しいのに、感情が出せない。
ちぐはぐな心と身体が嫌で縋る様にネロの胸元に顔を寄せた。触れればその冷たさに悲しみは広がるばかりだというのに、どうしてもネロに触れていたかった。
離れたくない、この子が居ないと駄目なんだ。思い出なんかにしたくない。
窓から日の光が差し込んでくる。夜が明けた。光がネロを連れ去ってしまいそうでダンテは慌ててカーテンを閉めた。
解ってる、解ってる解ってる!理解しているんだ、ネロはもう目覚めない。それでも、それでも、祈るようにダンテは目を閉じた。

 

ダンテは気が付くと、誰も居ないネロの部屋に立ち尽くしていた。
「ぼ、うや…ネロ?」
頭痛が止まない。痛む胸を押さえながら脳がゆっくりと動き出す。
…ああ、そうだ、ネロはもう。

あれからトリッシュとレディが訪れた。二人に発見されて、酷く慌てた様子の二人に珍しいな、とぼんやり思った。
それから、色々あった気がする。ネロと引き剥がされて、暴れる俺を容赦なく二人に鎮められた。トリッシュとレディの悲痛な表情だけはよく覚えてる。
気が付いたらすべて終わっていた、内容なんて覚えていない。ずっと記憶が朧気なままで気付いたらひとりだった。
それから淡々と日々が過ぎていった。時折目に入るネロの瞳色の空に痛む胸を押さえながらただ呼吸をして色の無い世界を見てぼんやり過ごした。

ネロ、逢いたい。寂しくて寂しくて堪らない。
ここにはまだネロの匂いも気配も残っているのに、どうしてあの子は居ないのか。
嗚呼、嗚呼、坊や―ネロ、俺の愛した子供、逢いたい。抱きしめて愛を囁きたいんだ。

(あのこがいればなにもいらないのに、)

 


あれ、廃人ダンテ?うっかり死にネタ、おまけに長い。
最後はもう強制終了に近い^q^
激しく自己満足作品でした。お目汚し失礼!




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