Kiss ME Baby!

10/08/21 13:46 :novel
Lost Blue-2(4Dante×4Nero)

坊や、ネロの帰りが遅い。
別段気にする程では無い筈だ。
悪魔相手の仕事では時間通りにいかない事なんて普通にある。
それでも、今日は何故か胸騒ぎのような、嫌な感覚がぼんやりとダンテに纏わりついていた。
これじゃあ、ゆっくり雑誌も読めやしない。
溜め息をひとつ吐いて、雑誌を適当に放る。後で片付ければ坊やに文句は言われないだろう。
ふと、手持ち無沙汰になったから坊やに任せた仕事内容を思い出す。
確か、他愛もない下級悪魔で、いつも受ける仕事より楽そうだった。
坊やでも手こずらずにこなせそうな内容だった筈だ。だから、任せた。たまには体を動かさないと鈍ってしまうと不貞腐れながら文句を言っていたので任せたんだ。
気が乗らなかったが、あの目で言われたらノーと言えなかった。
坊やだって弱い訳じゃない。寧ろ、強い方だろう。渋ったのは大事な子だから、弱い悪魔相手とはいえ、そこは腐っても悪魔だ。
どんな予想外な事が起きたって不思議じゃない。
兎に角可愛い坊やを危険な目に合わせたくなかった。
それに、あの雪のように綺麗な肌に傷なんて言語道断だ。と仕事内容から昨日の夜の行為に移り変わってダンテは知らずにニヤついていた。ネロが居たら気持ち悪いと悪態をついていただろう。そんな所も愛らしいけれど。
どんどん話が脱線していっている事に突っ込みを入れてくれる者は居なかった。

「…流石に、遅いか?」

果ては妄想にまで発展していた脳内を現実に引き戻した。これはあまりにも遅い。
手こずったとしても遅すぎる。嫌な考えが一瞬過ぎたが、軽く頭を振って追い出した。
ネガティブな考えは嫌いだ。
ちょっと迎えにでも行こうかと愛銃だけを手に取り、ドアに向かって歩き出した。丁度、ノブに手を掛けた瞬間、けたたましく電話のベルが鳴った。

…依頼か?

けれど、こんな時間に?合言葉付きのものだろうか?眉を潜めながら、それよりも坊やが優先だとドアノブに再度手を掛けた。
しかし、ベルは鳴り止む様子を見せない。
ふと、ネロの顔が頭を過った。

−−−−−もしかしたら、坊やからかも知れない。

今日はいつもと違う事ばかりで調子が狂う。
溜め息ばかり出るなぁと思いつつ、鳴り続ける電話に向かって踵を返した。
何故か坊やの、ネロの顔が頭から離れなかった。
嫌な予感に気のせいだと、気を取り直して受話器を取り、気だるげに耳に当てた。

「Devil May Cry 」

いつも通りの言葉を口にした瞬間に受話器の向こうからビチャリと耳障りな水音がした。同時に荒い呼吸音、新手の悪戯電話かと思った時に、間違えようもない声が聞こえた。
『…お、さん?』
ゼェゼェと嫌な呼吸の中から絞り出すように愛しい坊やの声が耳に広がる。
その声に安堵なんか覚えなかった。ゾクリと背筋が震えた。
「坊や?どうした?」
努めて冷静を装った。もしかしたら坊やにはバレていたかもしれないが。
『ちょ、と…ヘマ…し、た』
悪魔から毒を受けた。もう動けそうもない。格好悪いだろう?と途切れ途切れに坊やが言葉を紡ぐ。
真面目な坊やが冗談でもこんな笑えない事をすると思えない。
心臓が早鐘を打つ。最強と謳われるダンテの手が震えた。
「今、どこにいる?」
声が強張っていたかもしれない。けれど、そんな事に構っていられない。
もう冗談でも何でも良かった。早く、坊やの元に向かいたかった。
少しの沈黙のあとに、坊や、ネロの震える声。

−−−−−−−−近くの電話ボックス。

瞬時に頭の中で地図を広げる。
「すぐに行く。待ってろ」
場所が特定出来た瞬間、投げ付ける様に受話器を投げ、駆け出した。
坊や−−−ネロの掠れた声が耳にこびり付いて、離れなかった。

 




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