ニュース争論

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ニュース争論:人口減にどう向き合う 駒村康平氏/松谷明彦氏(2/5ページ)

 ◇制度改革の是非

 立会人 なぜ少子化対策は必要だと思いますか。

 駒村 今の社会保障制度は、年金も医療も介護も、世代間の仕送り方式をとっているため、支え手の人数で、どの程度の規模の社会保障ができるかが決まる。支え手の数が急速に減れば、よほどのペースで保険料や税金を上げていくか、給付を引き下げなければもたない。社会保障制度を少子高齢化でも維持できるように変えていく必要はあるが、今のように極端に低い出生率が少しでも上がれば、人口構造の変化のスピードを抑えることができるし、その間に制度を切り替える時間も確保できる。特に超長期の財政の仕組みになっている年金制度は、まだ手遅れではない。

 松谷 出生率を多少上げても、人口構造の変化のスピードを抑えることはできない。これからの少子化は、出生率ではなく子どもを産む女性の数の急速な減少が原因だからだ。あと40~50年で、出産期にあたる25~39歳の女性人口は6割近く減る。出生率向上で対応できるレベルではない。加えて(年金などを)払う方ともらう方の割合が、今世紀の中ごろには5対5になる。高齢者対策の多くを、若い世代からの所得移転で賄うという考え方そのものが成り立たないと考えるべきだ。若い人の負担が重くなりすぎる。

 立会人 ではどうすればいいのでしょう?

 松谷 発想の転換が必要だ。所得移転で高齢者を支援するのではなく、高齢者の生活コストを引き下げ、もっとストック(蓄え)を活用するといった方向。公共賃貸住宅に力を入れるべきだろう。住まいが確保されることは高齢者にとって最大の安心だし、生活費も安く抑えられる。いま一つは、やはり賃金水準の向上だ。賃金水準が上がれば、若い人に負担を求めやすく、社会保障政策の自由度も増す。そのためにも企業の競争力を向上させる政策が望まれる。

 駒村 もちろん、社会保障以外でも工夫はいるが、財源が必要だ。低賃金は事実だが、経済成長がなければ賃金を上げることは難しく、人口減少社会で成長が高まるとは期待できない。社会保障の決定的な代替方法が見つからない中では、今のレベルは維持できないとしても、社会保障は国民生活の最後のとりでであるべきだと思う。

2010年8月21日

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