05年を境に日本は人口減少に向かい始めた。長期にわたる出生率の低迷で、若い世代の人口が減る一方、高齢者は激増していくという特徴を持つ。少子・人口減社会にどう向き合っていくべきか。立場の異なるお二人と考えた。【立会人・山崎友記子】
立会人 日本の少子化、人口減少をどうみていますか。
駒村 人口減は避けがたいが、問題は今の出生率の低下が、人々が望んだ結果かどうかということだ。結婚や子どもを持つことをためらわざるを得ない制度上の問題があるのではないか。そうした障害に対応するために重要なのは子育て支援だ。子ども手当は増加する貧困世帯の子ども対策としては有効で、2万円程度は先進国では標準的。子ども手当が多い国では子どもの貧困率は低い。さらに重要なのは保育所の整備だ。支援の結果、出生率の回復に影響を与えることができるかもしれない。
松谷 少子化は長期的な傾向で、今後もその流れは変わらない。出生率の低下は婚姻率の低下が主因。若い人の価値観が変わり、結婚や子育てを選択しない人が増えている。しかし、それは個人の選択だから、社会がとやかくいう話ではない。ただし90年代ごろから、結婚したくてもできない人が増えているのも事実。これは、若い人の賃金水準が低すぎるという労働市場の問題だから、社会全体で取り組むべき問題といえる。結婚の自由を確保した上で、あとは個人の選択、というのが望ましい社会ではないか。
駒村 少子化に未婚の要因は大きいが、経済的問題とともに、結婚の制度にも課題があるのではないか。結婚するかしないかは「1か0」で、他国のように同棲(どうせい)を事実上の結婚とみなすような中間的なものがなく、選択の幅が狭い。また女性の就業と子育ての両立の問題も解消できておらず、子どもを産むか産まないかも1か0かの選択になっている。制度・政策の失敗で人生の選択肢が制限されているのならば、それを取り払うこと自体に意味があると思う。
松谷 原因の多くを社会のせいにするのはいかがか。出生率の低下は先進国共通の現象。制度の失敗というなら、すべての国が失敗していることになる。制度上などの理由で結婚や出産に踏み切れない人もいるだろうが、病気や失業など、もっと困っている人も多い。社会として少子化を解消する必要があるのか。何をどの程度優先するのか、幅広い議論が必要だ。
2010年8月21日
8月21日 | 人口減にどう向き合う 駒村康平氏/松谷明彦氏 |
8月15日 | 英語の社内公用語化 夏野剛氏/西垣通氏 |
8月2日 | ねじれ国会の合意形成 玄葉光一郎氏/石破茂氏 |
7月26日 | 「ねじれ」をどう克服する? 斎藤十朗氏/竹中治堅氏 |