がたん がたん
朝の憂鬱な通勤ラッシュ。いつものように座席横の支柱に掴まるポジションにつき、まだまだ時間のかかる勤務先までの通勤時間を持て余していた。 今日までに資料の作成や溜まっていたデータのまとめ、やらなければいけないことが山ほどあるかとおもうといっそ電車なんか爆発してしまえ、と物騒な事を考えていたところで途中駅に到着。
ここの駅はやたらサラリーマンの乗客が多い駅だ、と思い出し、迫り来る親父の波に流されて折角ゲットした好ポジションを手放すものかと、がっしり支柱につかまった。
間もなく発車する、とベルが鳴り響いたとき、ふと車両の外に目を向けるとホームに繋がる階段からものすごい勢いで少年が走ってくるのが見えた。青いジャージを身をつつみ、大きなエナメルバッグと片手にはサッカーボールの入ったネット。どうやらサッカー少年のようだ。そのサッカー少年はなんとも不思議なナリをしていて、ふさふさ、と揺れるモヒカンに白いメッシュ、綺麗に剃られた頭がつるつると光っている。こんな見た目で友達なんかできそうにないだろうなと余計な事を考えていると少年は最後のスパートをかけ、ギリギリドアが閉まるところをちょっと挟まれながらも乗車してきた。
(やるな、少年 諦めないそのハングリー精神を評価しよう、その調子でサッカーも頑張れ。)
少年は自分の目の前のポジション(つまりはドア横、座席とのコーナー位置である)にすっぽり収まり、駆け込み猛ダッシュで乱れた息をふうふうと静かに鎮めていた。
自分の位置からは少年の後頭部しか見えないのだが、真ん丸いスキンヘッドはよくみるとなんとも可愛らしい小さなモノで、つう、と一筋汗が流れてなんとも耽美な光景だった。
気になってドアガラスに反射される少年の顔を覗き見てみると、大きなつり目がちの瞳ときゅっ、と片側だけ上がった口角、薄く色づいた唇、とそれはもう自分の好みにジャストミート 少年の顔を映すドアを食い入るようにまじまじと見つめた
あまりの熱視に少年も気がついたのか、ガラスごしに、きっと視線を尖らせ睨みをきかせてきた。
どうやら強気なのは顔立ちたけではなく中身も、なようだ。
気まずくなって視線を足元に落とすと少年の大きなエナメルバッグが目に入った。 そのベルトの根本には「不動明王」と小さな刺繍が入っている。どうやらこの少年は「あきおくん」というらしい。
早く痴漢させて
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