アフラトキシンの毒性はどのくらいかまとめてみた

ニュース | 2008/09/10

9/13 解説記事を全面改訂し、大幅にデータ・出典を充実させました。図に掲載したデータ以外にも多数のデータを掲載したので参考にしてください。

9/16 「その他の論点」として、「アフラトキシンの毒性の評価」以外に、事故米中のアフラトキシンの偏りなど、関連する論点を取り上げました。

三笠フーズの汚染米騒動でアフラトキシンの毒性が話題です。動物実験でアフラトキシンが実験動物の100%に肝臓がんを引き起こすという実験データが話題になり、ここから、「100%肝臓がん」という言葉が一人歩きしている面もあるからです。

では、アフラトキシンはどのくらいの濃度でどのくらいの毒性をもたらすのでしょうか?ネット上で手に入るリソースをもとに、アフラトキシンの毒性を検討してみました。実は、この記事を書くに当たって、「どうせそんな毒性があるわけないだろう」という先入観を持って調べたのですが、実際に調べたみたら、解釈によってはかなり危険とも言える分かりました。何よりすみやかな詳細な調査と情報の公開が必要ではないかと思います。

結論を先に言うと、

1.事故米を米飯として毎日食べると、ラットがかなりの確率で肝臓がんになると言われる量を摂取することになる

2.年に数回のペースで事故米に汚染された米菓(せいべい、おかき等)を食べるだけでも、健常人10万人中あたり0.01人、B型、C型肝炎キャリア10万人あたり0.3人が肝臓がんになると言われる量を超えてしまう。

3.多くの人が、1と2の中間の量の事故米を摂取していると思われるが、その影響は未知数。ただ、かなりの影響を及ぼしている可能性がある。

図にすると以下のようになります。計算方法、情報の出典は、図の後に詳しく説明しているので、そちらをご覧ください。

Aflatoxin

携帯用画像(240x320, gif)

拡大縮小用画像( swf, svgz, emf, png)

携帯で画像が乱れる場合は「携帯用画像」をご覧ください。拡大縮小用画像は、引用時にご利用ください。(emfは200%以上の拡大用、pngは200%以下の拡大用。)

改訂の際、図のURLを変更することがあるので、図への直リンクはお避けください。


解説

○事故米のアフラトキシン濃度(農水省)

まず、本題に入る前に、今回の事故米のアフラトキシンの濃度を確認しておきます。農水省の発表によると、アフラトキシンの濃度は、0.01ppm~0.05ppm(10ppb~50ppb)ということになっています。(http://www.maff.go.jp/j/press/soushoku/syoryu/pdf/080905_2-01.pdf)

60kgの体重のヒトだとすると、

一日の摂取量を300g(米飯の場合)とすると、0.05~0.25μg/kg/日
一日の摂取量を30g(頻繁に米菓を食べた場合)とすると、0.005~0.025μg/kg/日
一日の摂取量を3g(月一回程度米菓を食べた場合)とすると、0.0005~0.0025μg/kg/日
一日の摂取量を0.3g(年一回程度米菓を食べた場合)とすると、0.00005~0.00025μg/kg/日

となります。

ただし、この計算は、事故米のアフラトキシン濃度が農水省の発表の通りであり、均一に汚染されているということを前提にしています。つまり、事故米のある部分にアフラトキシンの濃度が特別高い部分があれば、局所的にこの数倍、あるいは数十倍の濃度で汚染されている可能性もあります。逆に、農水省が測定した場所が、たまたま濃度が低かっただけという可能性もあります。

○急性毒性

毒性には、いくつかの種類があり、これは分けて考えないといけません。まず、重要なのが急性毒性と慢性毒性の違いです。急性毒性は、ある時点でその毒物を摂取したときの毒性、慢性毒性は長期間にわたってその毒物を摂取したときの毒性です。

急性毒性に関して、アフラトキシンは、それほど強くなく、メタミドホスとそれほど変わりません。LD50(半分が死ぬ濃度)動物実験の結果で0.3mg/kg(ウサギ)~17.9mg/kg(ラット)ということになっています。これは体重60kgで20mg~1000mg相当します。(1日当たりではなく、一度に摂取する量ということに注意してください)。これはもっとも高い濃度のアフラトキシンに汚染された汚染米で計算しても、20t~1000tです。これを短期間に食べたときの毒性が急性毒性ですので、これに関しては、基本的に心配しなくて良いということが分かります。(Newberne and Butler 1969(Review): http://cancerres.aacrjournals.org/cgi/reprint/29/1/236.pdf)

○慢性毒性

一方、問題なのが「慢性毒性」です。アフラトキシンの慢性毒性は、肝臓がんを引き起こすものだということが分かっています。では、アフラトキシンの慢性毒性はどの程度なのでしょうか。これを調べるには、大きく二つの方法があります。一つは実験室で実験動物に毒物を与えて調べる方法、もう一つは複数の地域での統計的調査)で測定された毒性です。

この二つは多くの場合、かなり異なるデータになります。ただ、それぞれ長所と短所があるため、この両方から毒性の評価がなされることに注意する必要があります。

○動物実験での慢性毒性

・Woganand and Newberne 1967

アフラトキシンの毒性に関してもっとも有名なのは、15ppbで100%のラットを肝臓がんにするというデータでしょう。この実験は、ラットに68~82週間、15ppbのアフラトキシンを含む餌を与えたところ100%(23匹中23匹)に肝臓がんが見られたというものです。(Woganand and Newberne 1967:データは以下の総説を参照http://cancerres.aacrjournals.org/cgi/reprint/29/1/236.pdfのTable 3)

このデータは飼料中のアフラトキシン濃度を基準にした結果ですが、すべてのラットが肝臓がんになるという15ppbは、事故米中のアフラトキシン濃度とほぼ同じレベルです。つまり、ラットが事故米を食べ続けると100%の割合で肝臓がんになることを意味します。

通常、毒性の度合いを測るときには、TD50といって、実験動物の半数に毒性が発現する(この場合は肝臓がんになる)量を見積もるのですが、この実験ではアフラトキシンの毒性が強すぎて、TD50を測定することができなかったということが分かります。つまり、この条件でのTD50は15ppbよりもはるかに少ない可能性があるということです。この実験結果こそが、アフラトキシンが「地上最強の発がん性物質」と言われるゆえんでもあります。

現代では、飼料中の濃度ではなく、1日あたりの摂取量(μg/day/kg)をもとに毒性を記述することが多いので、換算すると、ラットが摂取する飼料の量12.5g/day、ラットの体重を300gとして0.63μg/kg/dayになります。

・Butler and Barnes(1968)

一方、精製したアフラトキシンではなく、汚染された食物そのものを与えるという、上の実験とは違う条件では、TD50が200ppb(200ppbの飼料を与え続けると半数が肝臓がんになる)ということが分かりました。(Butler and Barnes 1968:データは以下の総説を参照http://cancerres.aacrjournals.org/cgi/reprint/29/1/236.pdfのTable 3)

これは、同じアフラトキシンでも、餌の条件を変えると大幅に毒性が変わることを示しています。人間の場合、食べ合わせの影響でアフラトキシンの影響が変わるということです。

・バークレー大学発がん性データベース

一方、バークレー大学の発がん性データベースによると、以下のような結果になります。

ラット:3.2μg/kg/day
マウス:(実験した濃度では発がん性が観察されなかった)
アカゲザル:8.2μg/kg/day
CYNOMULGUS猿:20.1μg/kg/day
ツパイ:26.9μg/kg/day
(http://potency.berkeley.edu/chempages/AFLATOXIN%20B1.html)

このことから、動物の種類によって10倍程度の差があるということが分かります。ただ、比較的人に近いと思われるアカゲザルでも、ラットに近い結果が出ていることから、「ヒトでは安心」ということにはならないでしょう。

ちなみに、ラットの結果に関しては、Woganand and Newberneの結果より、5倍以上毒性が少なく見積もられていますが、Butler and Barnesの結果とは同程度です。これには飼料の種類の違い、ラットの系統の違いなどが関係していると思われます。

・未確認情報

一部にラットが1ppb、104週間でも肝臓がんになるという噂があるのですが、情報源は2ちゃんねる等だけであり、この根拠となるデータは一切見つかりませんでした。1ppb、104weekでのラットでのデータとしては以下のものがあるのですが、アブストラクトを見る限り、「通常と変わらない」と書いてあります。本文を読まないと、肝臓がんを引き起こすか分からないのですが、検索した感じだと「ガセ」という可能性の方が高そうです。

http://www.springerlink.com/content/g31780u23g2013j2/

・動物実験の解釈について

発がんメカニズムはヒトとヒト以外の動物で基本的に同一であり、種や系統によって特殊な状況があるにしても、多くの種で一定レベルの毒性が見られれば、基本的にヒトでも同じレベルの毒性があると考えるのが毒性評価の基本的な考え方です。ただ、あくまでヒトでの実験ではないので、このままヒトに当てはまるわけではないということは考慮しないといけません。

○疫学調査での慢性毒性

・Peers & Linsell 1977

コメントをいただいたNATROMさんの情報から、IPCSで公表されている疫学調査の結果にたどり着くことができました。ここでは、Peers & Linsellの論文の引用として以下のようなデータが掲載されています。

これは、さまざまな地域で、実際に皿に盛られて出されようとしている状態の食事をサンプルとして集め、それと統計的に分かっている肝臓がんの人数を比較したものです。

Table 15. アフラトキシンの摂取レベルと原発性肝臓がんの発生数について入手可能なデータのまとめ(注a)

地域 アフラトキシン推定平均一日成人摂取量(ng/day/kg)(注b) 肝臓がんの登録数 10万人当たりの肝臓がん発生数
Kenya High altitude 3.5 4 1.2
Thailand Songkhla 5 2 2
Swaziland High veld 5.1 11 2.2
Kenya Middle altitude 5.9 33 2.5
Swaziland Mid veld 8.9 29 3.8
Kenya Low altitude 10 49 4
Swaziland Lebombo 15.4 4 4.3
Thailand Ratburi 45 6 6
Swaziland Low veld 43.1 42 9.2
Mozambique Inhambane(注c) 222.1 (注d) 13

注a Peers & Linsell (1977)による
注b 地域のビール?(native beers)に含まれるアフラトキシンは含まれていない。
注c 改訂された発生数の推定。Van Rensburg (1977)による。
注d 不明。ただし、100以上と思われる。

http://www.inchem.org/documents/ehc/ehc/ehc011.htm

このデータのうち、3ng/day/kg~10ng/day/kgはほぼ線形(アフラトキシンが2倍になれば肝臓がんの割合も2倍)で、計算すると、1ng/day/kgで、10万人あたり1年に0.4人が肝臓がんになるということが分かります。

一方、1件ですが、100ng/day/kgを超えるというモザンビークデータもあります。もしこのデータがそのまま日本に当てはまるのなら、事故米を食べ続けても10万人当たり13人しか肝臓がんにならないということですから、事故米の量(10t程度)を考慮すると「大したことがない」ということになると思います。

これは上の動物実験のデータよりも数万倍レベルで毒性が少なく見積もられていることになります。

ただ、100ngを超すのは1件のみであるため、統計的な信憑性はそれほど高くありません。したがって、これだけをもとに毒性を判断してはいけないという問題があります。

また、疫学調査であることに起因する、さまざまな問題があります。たとえば、実際には、これよりもずっと多い肝臓がんが発生しているのに、医療制度、特に疾病統計が未発達だったりするためにカウントされていないとい可能性も考えられるからです。実験動物ではすべての動物を解剖しているので確実にがんになったおいう判断ができるわけですが、疾病統計で同レベルで肝臓がんを見つけることが不可能です。また、複数の発がん性物質の組み合わせによる、肝臓がん以外のがんに対するリスクがが全く計算できていないという問題もあります。

さらに、同じ毒物でも寿命が長い日本では、より大きな影響を与えるという可能性、伝統的にアフラトキシンが食べて来なかった日本人と、古くからアフラトキシンと関わってきた民族では、遺伝的な耐性が異なる可能性もあります。

・JECFA

さて、上の疫学調査の結果はかなり古いものであり、B型/C型肝炎キャリアの計算がうまくできていないという問題もあります。こういったことを踏まえて出されたのが、JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)によるリスク評価です。

結論としては、体重1kg当たり1日1ngの摂取(体重60kgで0.06μg)で、アフラトキシン原発性肝臓がんになるリスクが健常人10万中0.01人、B型/C型肝炎キャリアで0.3人ということになっています。現在、aflatoxinの規制値を設定する上では、このデータが採用されているようです。

この原典となる資料はかつてネット上にあったようなのですが、リンクが切れてしまっていて、解説を頼りにするしかありません。内容の説明としては、このサイト(http://homepage3.nifty.com/junko-nakanishi/zak140_136.html)が詳しく、途中の図に関しては、こちら(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/03/dl/s0311-5h_0001.pdf)が見やすくなっています。

このデータ、今回の汚染米の問題に無理矢理当てはめると、毎日アフラトキシン汚染米を食べていた人でも、10万人中3人程度が肝臓がんになるだけということになります。

ただし、今回の汚染米の問題のような非常に高濃度(1μg/day/kgレベル)まで、このデータが当てはまめられるかどうかは分かりません。Peers & Linsell 1977の場合は、モザンビークのデータが(1件だけですが)ありましたが、JECFAの場合、どの程度の範囲で調査をしたのか分からないからです。これについては、JECFAのデータの原典を当たって検討する必要がありますが、そこまで考慮されている可能性はかなり低いと言わざるを得ないでしょう。

また、上でも書いたような疫学調査の不正確さという問題は同じなので、そのことも考慮する必要があります。

○動物実験と疫学調査の違いをどう解釈するか

さて、このように見てくるとaflatoxinの毒性を考える上では、実験室での結果と疫学調査の結果があまりにも違うため、どう判断していけば良いのか迷う人もいるでしょう。

現実には「あまりにも厳しすぎる」実験室の結果ではなく、疫学調査の結果が強調された議論がなされることも多いようです。たしかに疫学調査には、前述したとおり、疾病統計そのものの問題や地域間の遺伝子の違い等、さまざまな要因があり、そのまま信用することができないのも事実ですが、それを踏まえても疫学調査の方が現実に近いと思われるからです。

ただ、動物実験の結果を無視して良いということにはなりません。食品規制も「検出されたら破棄」という非常に厳しい規制になっているのもそのためです。

さらに、今回の事故米の問題に関して言うと、事故米を毎日米飯として食べたような場合、疫学調査の結果がそのまま適用できるかどうか全く分かりません。その意味で、「15ppbで100%のラットが肝臓がんになる」というような動物実験の結果も同時に参考にしてくのが正しいと思われます。

やってはいけないのは、動物実験の結果と疫学調査の結果を単純に比較して、「疫学調査はヒトでの結果だから、より信頼できる」と断定することでしょう。2つの実験は、お互いに補完関係にあるものですので、それぞれの長所と短所を理解しつつ、総合的に判断していくことが必要だと思います。

(参考)動物実験の結果を無視し、疫学調査だけをもとにして事故米問題について評価したブログ

事故米のアフラトキシンによる肝癌のリスクを大雑把に計算してみた/NATROMの日記
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20080910

○その他の論点(出典不明の情報を含む)

・ロット中の偏りというリスク

カビ毒はロットの一部に偏りやすい性質があるので、全体の平均の1000倍レベルのアフラトキシンが含まれる可能性があるようです。さらに、測定した場所が「たまたま比較的アフラトキシンがそれほど多くない場所」だったという可能性もあります。極端な例を出すと、測定値が50ppbだとしても、その近くに50,000ppb(500ppm)レベルの超高濃度のアフラトキシンを含む塊があり、そこから漏れて出てくるわずかの部分だけを測定しているという可能性だってあるのです。

こうなると、状況によってはお茶碗1杯でも致死量、あるいはかなりの確率で肝臓がんになる量を食べることになる可能性があります。それも考慮して「検出されたら食用にはしない」というルールになっているわけなので、検出値だけをもとに安心かどうかを判断してはいけないというもあるようです。

・飼料用穀物について

飼料用に使われた焼酎かすがアフラトキシンを含んでいることを心配する声があるようです。また、アフラトキシン汚染米そのものの飼料用への転用を心配する声もあります。この心配そのものは間違っているわけではないと思うのですが、飼料用穀物の場合、事故米と比べものにならないほど大きなアフラトキシン汚染の問題があり、それに比べるとほとんど問題ではないとも言えます。

なぜなら、飼料用輸入トウモロコシのアフラトキシンは、もともと無規制状態であり、すでに問題になっているようだからです。300ppbレベルでも普通に飼料として使われているという話もあります。

焼酎かすとして飼料に使われる汚染米のアフラトキシンの影響は未知数ですが、最大限に見積もっても、飼料用輸入トウモロコシのアフラトキシンというもっと大きな問題からすれば、微々たるものであることは間違いないでしょう。

さらに言うと、三笠フーズの事故米のアフラトキシンを心配するくらいなら、飼料用輸入トウモロコシ経由でアフラトキシンに汚染されている肉や牛乳のアフラトキシンを心配した方が良いという見方もあるようです。これは事故米のアフラトキシンが問題ないということを意味するのではなく、「両方とも大きな問題だが、比較すると事故米の方が問題の程度が少ない」ということです。

○余談

にんじんなどのセリ科の野菜にアフラトキシンの発がん性の抑制効果があるらしいです。

University of Washington, Apiaceous vegetable constituents inhibit human cytochrome P-450 1A2 (hCYP1A2) activity and hCYP1A2-mediated mutagenicity of aflatoxin B1., 2006 Sep;44(9):1474-84. (PMID 16762476)

論文は孫引きですが、英語版のWikipediaで見つけました。
http://en.wikipedia.org/wiki/Aflatoxin

上にリンクを張った総説記事では、飼料の種類によって10倍以上の毒性の違いがあることが示唆されていますが、それに類する効果は期待できる可能性があります。まぁ、もとの毒性が強すぎて10倍くらいじゃ大して変わらないかもしれませんが…。

○改訂履歴(大きなもののみ)

画像に間違いが含まれていたため訂正(9/11 2:16)
本文を全面改訂(9/13 4:10)
その他の論点を追加(9/16 0:49)

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コメント

>ただし、この計算は、事故米のアフラトキシン濃度が農水省の発表の通りであり、均一に汚染されているということを前提にしています。

アフラトキシンは測定限界以下でも有意に有毒なので、カビ発生してる米は全部、測定限界以下ぎりぎりとして評価すべきですよね。

ってか、なんで捨てないのかと。

>健常人10万中0.01人、B型、C型肝炎キャリアで0.03人程度ということになる。

キャリアは30倍なので、0.3人じゃ?

投稿: | 2008/09/11 1:00:49

ラットに関してはたぶんこれ
Wogan, G.N. , and NeWberne, P.M. : Dose-Response Characteristics of Aflatoxin B1 Carcinogensis in the Rat, Cancer Res., 27, 2370~2376, 1967
たぶん医学部か理学部の図書館なら手に入るはず(Opacで検索してみてください)

総説ならWebで読めて
http://cancerres.aacrjournals.org/cgi/reprint/29/1/236.pdf
のTable 3近傍にまとめられている。

投稿: | 2008/09/11 1:28:10

> アフラトキシンは測定限界以下でも有意に有毒なので、
> カビ発生してる米は全部、測定限界以下ぎりぎりとして評価すべきですよね。

たしかに。
上の図で言うと、米飯レベルの摂取量なら、
0.01μg/day/kgくらいで検出限界ですよね。

そもそも考えるまでもなく、そういう規則になっているわけですが…。

今回の事件があまりにもおかしいのです。

>健常人10万中0.01人、B型、C型肝炎キャリアで0.03人程度ということになる。

おっしゃるとおりです。
転記し間違えました。
さっそく訂正させていただきました。

コメントどうもありがとうございました。

投稿: 情報学ブログ | 2008/09/11 1:33:07

あと、情報提供をしてくださった方ありがとうございました。
家で調べられる範囲で横着してしまったもので…(笑)。

ちなみに、医学生理学分野は、昔勉強していたので、
基本的なことは理解しているつもりですが、
もうすっかり離れているのが現状です。
ただ、せっかくのアドバイスですので、
この記事の反響次第で考えてみることにします。

今後ともよろしくお願いします。

投稿: 情報学ブログ | 2008/09/11 1:40:04

総説の方、軽く見てみました。

Table2がまとめですね。
しかし、この表だと1日あたりではなく、
総摂取量になっていることを考慮しても、
本文で引用した資料より、
若干、毒性が低いことになってるんですけど…。

ちゃんと読んでないのですが、
Table3を考慮すると、
どうも、他の物質が共存すると
毒性が下がってしまうということなんじゃないかと思います。

いったいどうなのでしょうか。

投稿: 情報学ブログ | 2008/09/11 1:54:49

Table2は急性毒性で、いま騒いでるのはイニシエータの方じゃなかったでしたっけ?

でTable3の数値に関してはそうで、孫引きに次ぐ孫引きで、わすれされているのではないでしょうか。

投稿: | 2008/09/11 2:08:51

浦島太郎のような自分にちゃんと解説していただき、ありがとうございます。

そもそもタイトルが、Acute and Chronic...なのだから、
区別しないとダメですね。
ほんとお恥ずかしいです。

TD50が明記されていないので
Table3のデータから計算してみたら、
以下のような感じになりました。

他の物質が混合している場合(Rossetti)
TD50 200ppb

純粋なアフラトキシンB1の場合
15ppbで100%が肝臓がんになる(TD50は計算不能)

純粋なアフラトキシンB1の場合は、
本文で引用した東京都健康安全研究センターのデータと
完全に一致し、
また、他の物質が混合している場合は、
バークレー大学のデータとほぼ一致することが分かりました。

要するに本文の議論は間違っていなかったことが証明された形になりました。
ほんとどうもありがとうございます。

投稿: 情報学ブログ | 2008/09/11 2:37:31

カビは 洗ったから安全だ、と主張している人もいますが、洗えば落ちるものですか?

投稿: ゆめちゃん | 2008/09/11 15:06:56

"特定の米穀店を通して、特定の人々が食べていたというようなことが考えられます。"

”流通したアフラトキシンを摂取した人数が10万人ではなく、もっと少ないとしたら、1人あたりの平均年間摂取量も、摂取群内の発生率も増えるが、摂取群の人数が減るので肝癌発生数は変わらない。”
とNATROM氏は既に記載されていますが…

投稿: 匿名希望 | 2008/09/11 19:48:05

一日の摂取量が300gとなる人は最大で何人になるのか計算はされましたでしょうか?

投稿: NATROM | 2008/09/11 20:00:12

10万人中0.01人だと迫力ないので、アフラトキシン含有米が全て人の口に入ったとした場合の推定死亡者数も、欲しいですね。

4トンも出荷してるから、百人じゃきかないですよね?

投稿: | 2008/09/11 21:49:45

> ゆめちゃんさん

洗うことによって毒性が少なくなるという可能性はあると思いますが、
それで安全が海保されるということはないでしょうね。

菌糸は米粒の内部まで入りますから…。

ただ、これは実際に実験してみないことには、
分からないことではないかと思います。

投稿: 情報学ブログ | 2008/09/11 21:51:29

> 匿名希望さん

> ”流通したアフラトキシンを摂取した人数が10万人ではなく、
> もっと少ないとしたら、1人あたりの平均年間摂取量も、
> 摂取群内の発生率も増えるが、
> 摂取群の人数が減るので肝癌発生数は変わらない。”
> とNATROM氏は既に記載されていますが…

残念ながらそれは理論的には間違いです。
本文の図からも分かると思いますが、
アフラトキシンの毒性は摂取量が10倍になると発がん率が10倍になるわけではありません。
ある程度を越えると一気に発がん率が上がり、
それ以上はあまり変わらなくなると思われます。
この「ある程度」が分からないから、危険だと言われているのです。

たとえば、本文の図で空白となっている0.01μg/day/kgあたりの摂取量で、
10人中1人が肝臓がんになるという状況を考えてみてください。
1年間晒され続けると肝臓がんになるとすると、
事故米中のアフラトキシン総量は360mgと計算されますので、
最大で360mg/(0.01μg/day/kg×60kg×365day)=1600人を
肝臓がんにする能力があることになります。

ちなみに、「1年」という期間ですが、
これはアフラトキシンの毒性の性質を考慮しています。
アフラトキシンのような発がん物質は、
遅効性である一方、遺伝子の多型性による部分が多いので、
ある程度以上の期間晒されても、
一定以上に発がん率が高まらないと思われるからです。
たとえば本文のリンク先の総説記事では、
10日間、40μg/day(体重あたりにすると120μg/day/kgくらい)の餌を食べさせて、
その後、82週普通の餌を食べさせると1割(オスは2割、メスはゼロ)が肝臓がん
になったというデータがあります。
これは若干極端なデータ(最初の濃度が非常に高く、かなり期間が短い)ですが、
もう少し普通の条件でも、同様のデータが得られる可能性があります。

この点を含め、とにかく「良く分かっていない」から怖いのです。
上では1600人と試算しましたが、
もっと少ない期間(たとえば30日)で同じ毒性があるとすれば、
この10倍の16000人になります。
ヒトとラットの違いなどを考慮すると、
さらに多い桁数(10倍、100倍)になる可能性もゼロではありません。
そして、だからこそ、アフラトキシンに対して
厳しい規制がなされているということを考えなければいけないと思います。

> NATROMさん

> 一日の摂取量が300gとなる人は最大で何人になるのか計算はされましたでしょうか?

コメントありがとうございます。

質問に答えると約100人ということになります。

ただ、最大で100人しか被害を受けないという意味ではありません。
それは、上の匿名希望さんのコメントへの返答からも分かると思うので、
そちらをご覧ください。

投稿: 情報学ブログ | 2008/09/11 21:54:01

> 10万人中0.01人だと迫力ないので、
> アフラトキシン含有米が全て人の口に入ったとした場合の推定死亡者数も、欲しいですね。

> 4トンも出荷してるから、百人じゃきかないですよね?

グッドタイミングでした(笑)。
ちょうど、一つ上のコメントでそのことについて書いたところです。

実は、この記事の本文は、
摂取量と毒性の関係をまとめただけで、
地域全体としてどうなるかという疫学的視点には触れませんでした。
この背景には、疫学的視点で考えるためには、
関わっている要素が多すぎて、
結論の幅が非常に広くなってしまうからなのです。

質問に対するお答えも、
これは簡単に計算できません。
ヒトがどの程度の期間でがんになるかということに関する
直接的なデータがないからです。

上のコメントのように、
間違った理解に対して、
「こういう可能性もあるのでそれはおかしい」と言えても、
「結局どうなんだ」と言われると答えられないのです。

上のコメントで書いた「最大1600人」というのは、
ありえる計算だと思いますが、この10倍、100倍というのもありえるし、
10分の1、100分の1というのもありえると思います。

投稿: 情報学ブログ | 2008/09/11 22:05:26

本文の補足:

ちなみに、事故米のアフラトキシンが10ppb~50ppb、日本における規制値が10ppbです。国内産米はともかく、輸入米や輸入小麦には、10ppbぎりぎりのものが多数含まれているわけで、この問題だけをそんなに騒いでも仕方がないという人もいるようです。

ただ、アフラトキシンは大部分の食品で10ppbよりもはるかに少ないわけです。ごく一部のものに10ppb以下が含まれている程度なら大丈夫ということで決められたのが10ppbという規制値です。したがって、10ppbを超えたり、あるいはぎりぎりでもそれに近い濃度のものを常食していれば規制の趣旨を超えた影響が起きる心配もあります。それは本文の図が示すところだと思います。

実際問題、米菓のように少量しか食べないものに関しては、それほど心配しなくても良いと思いますが、一番心配なのは、常食している米飯用の米でしょう。普段食べている米が50ppbのアフラトキシンを含んでいるとすると、さすがに健康被害が心配されます。

政府としては国民の不安を払拭していくことが必要ではないかと思います。

投稿: 情報学ブログ | 2008/09/12 0:04:30

本文の補足:

コメントをいただいたNATROMさんのブログのコメント欄に、
以下のようなことが書いてありました。

> ちなみにモザンビークのInhambane州では、アフラトキシン摂取量が222.4ng/kg/dayで、がん発生率が13.0人/10万人/年間だそうです。222.4ng/kg/dayは、大雑把に言って、体重50kの人が50 ppbの汚染米を1日に220g食べることに相当します。

出典を確認したわけではないのですが、
これが事実ならかなり「話が違う」ということになると思います。
NATROMさんがしばしばおっしゃるように、
ラットよりもアフリカ人の方が日本人に近いでしょうし、
三笠フーズ問題も、かなり違った目で見ることができます。

ただ、問題として残るのは、
がんの問題は、遺伝子の多型性の違いの影響を受けやすいということです。
よく知られているように、日本にアフラトキシンの原因となる
カビがほとんど生息していないため、
日本人は特にアフラトキシンに対する耐性が低いということも考えられます。
これは高校の生物の教科書に載っている、マラリアと鎌形赤血球の関係と同じで、
数万倍の差異になることもあります。

その意味で、ラットのデータは「最悪の場合」として受け止めるべきだと思いますが、
あまりそういうことを言っているときりがないというのも事実です。
このデータだけから100%安心できるということはないと思いますが、
とりあえず話としては収束に向かいつつある…ということで、
良いのではないかと思っています。

投稿: 情報学ブログ | 2008/09/12 1:39:15

>アフラトキシンの毒性は摂取量が10倍になると発がん率が10倍になるわけではありません。
>ある程度を越えると一気に発がん率が上がり、
>それ以上はあまり変わらなくなると思われます。
>この「ある程度」が分からないから、危険だと言われているのです。

そりゃ、癌発生率50%の量の4倍たべても200%にはなりませんが、、、

1%の量の十倍ならほぼ10%、十分の一なら0.1%でしょ。


投稿: | 2008/09/12 8:53:44

> 1%の量の十倍ならほぼ10%、十分の一なら0.1%でしょ。

そんなことありません。
グラフにすると基本的に曲線になります。

投稿: 情報学ブログ | 2008/09/12 11:31:51

三笠に卸したアフラトキシン検出された米は10tとのことだけど、食用米ならアフラトキシン検査もするでしょう。

それすら「検査を実施していないにもかかわらず、検査証明書を不正に発行していた事案」がわかったようですが。
http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/hyoji/080911_1.html

でも、あきらかにカビが出てる事故米なら、工業用に使うしかないということで、何の検査もしないんじゃ?

投稿: | 2008/09/12 11:43:44

ほんとおっしゃる通りだと思います。

だとするとコメント欄での計算は、
大幅に異なることになりますね。

鋭い視点からのコメントをありがとうございました。

投稿: 情報学ブログ | 2008/09/13 0:53:04

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080906-00000102-san-soci

検査証明書を発行していたのは穀物の検査機関ではありません。農水省の書き方もわるいけど、なんでも今回の事故米にむすびつけるのは
いかがなものかとおもいますが

投稿: | 2008/09/13 2:24:30

検査の不正というのもありますが、それ以上に、「本当にすべて検査したか疑問」というのがあります。

たとえば、「非常にひどい目に見えるカビ」が生えていたとき、工業用への転用や廃棄が前提なら、アフラトキシンの量を測定する必要がないとも考えられるからです。

食用に転用されていることが分かった今から考えれば、すべての場合にやるべきですが、工業用を前提にするなら、すべての場合に検査するのは過剰検査とも考えられます。

もう少し詳しい情報がないと判断できませんが、いずれにせよ重要な問題だとは思います。

投稿: 情報学ブログ | 2008/09/13 4:28:30

こんばんは

初めてコメントさせていただきます。

各国で齢構成がかなり異なる為、
アフラトキシンの摂取濃度と肝がんでの死亡率を
線形関係に回帰する事は暴論だと思われます。

例えばAmesによれば1980年代のアメリカ人の
アフラトキシン平均摂取量は
18ng/dayとのことですが
10万人あたりの肝がん及び胆管がんでの死亡数は10〜15人前後です(アジア人)。

日本人はアフラトキシンの摂取量は
アメリカ人に比すと低いはずですが
肝がんでの死亡数は
150/10万(男女平均)ほどあります。

これは日本では感染症などによる死亡率が
とても低い為だと思われます。

アフラトキシンはトウモロコシや
ピーナッツなどを摂取している場合は避けられないものですし、
抜き取り検査というものの性質からして、
ゼロにする事はできません。

やはり私は気にし過ぎるのは良くないと思ってしまいます。

投稿: | 2008/09/13 20:02:47

> 線形関係に回帰する事は暴論だと思われます。

自分もそう思います。
平均寿命が少ない国での疫学調査を日本に適用すると
とんでもないことになってしまいます。

本文では再三そのことを強調するような形で書かせてもらいました。

> アフラトキシンはトウモロコシや
> ピーナッツなどを摂取している場合は避けられないものですし、
> 抜き取り検査というものの性質からして、
> ゼロにする事はできません。
>
> やはり私は気にし過ぎるのは良くないと思ってしまいます。

どこまで被害が拡大するか分からない現状では、
問題が落ち着くまで関連製品を食べるのはやめた方が良いとは思いますが、
一方、終わったことについては気にしてもしょうがないですから、
どうであろうと、後は健康的な生活を心がけていくしかありません。

この記事の最大の目的は、
ネットではさまざまな風説が飛び交っている中、
それを整理することです。
いまだに「一粒食べたら死ぬ」という噂がまかり通っていますので、
「そこまで危ないものではない」と訴えると同時に、
「こういう可能性もあるよ」というリスクに関しては
伝えていかないといけないと思っています。
一方、政府に対して、
「国民を安心させらるよう、持っている情報を出すべき」ということが
伝わればという思いもあります。

投稿: 情報学ブログ | 2008/09/13 21:07:08

>多くの種で一定レベルの毒性が見られれば、基本的にヒトでも同じレベルの毒性があると考えるのが毒性評価の基本的な考え方です

その通りだと思います。では、アフラトキシンでは、「多くの種で一定レベルの毒性」は見られますか?


>ただ、100ngを超すのは1件のみであるため、統計的な信憑性はそれほど高くありません。

その通りだと思います。ただ、今回の事故米で100ng/day/kgを超すのに相当するのは、事故米を毎日100g「一生涯にわたって」摂取した場合であることを明記するほうが、余計な不安を招かないと思います。


>疫学調査であることに起因する、さまざまな問題があります

その通りだと思います。情報学ブログさまは、疫学調査の限界に由来する誤差はどの程度あると思いますか?2ケタぐらいは誤差があるかもしれません。しかし、既知のもっともアフラトキシン感受性の高い種のデータをヒトに援用するよりかはずっとマシだと思いますが。


>今回の汚染米の問題のような非常に高濃度(1μg/day/kgレベル)まで、このデータが当てはまめられるかどうかは分かりません

1μg/day/kgレベルの汚染を一生涯とは言わず数年間でも受ける可能性としては、どのようなものがありますか?50 ppbの汚染米を毎日1kg食べるのに相当すると思いますが、私の計算は間違っているでしょうか?

投稿: NATROM | 2008/09/14 0:32:42

わざわざコメントありがとうございます。

それほど大きな意見の相違はないと思うのですが…。

> では、アフラトキシンでは、「多くの種で一定レベルの毒性」は見られますか?

本文で引用したデータによれば、
10倍程度のオーダーで、
「一定レベルの毒性」が見られています。
マウスでは確認されていませんが、
これは実験条件の問題で「確認されなかった」ということなので、
これをもとに「種間の差異が非常に広い」とは言えません。
具体的には、どういう条件か分からないと、
何とも言えないでしょう。
(これは通常なら原資料に当たれば分かる話ですが、バークレーのデータは、
あまり詳しいことが書いていないので、良く分からないとうこともあります)

動物実験の結果からすると、ヒトの疫学調査の結果が、
かけ離れた結果を示しているということは、間違いなく言えると思います。

ここで、

1. ヒトが非常に特殊な生物である。
2. (少なくとも高濃度域で)疫学調査の結果がそのまま適用できない。

という二つの可能性がありわけで、
やはり2の可能性を自信を持って切り捨てることができないということが、
分かると思います。
誤解のないように言うと、
別に2の可能性が高いと言っているわけではありません。
あくまで可能性を否定できないと言うことです。
本文でも書いたように、基本は疫学調査で良いと思うのですが、
動物実験の結果も「参考にするべき」というのが、自分の主張です。

> 1μg/day/kgレベルの汚染を一生涯とは言わず数年間でも受ける可能性としては、
> どのようなものがありますか?
> 50 ppbの汚染米を毎日1kg食べるのに相当すると思いますが、私の計算は間違っているでしょうか?

おっしゃる通りです。
「1μg/day/kgレベルの汚染」っていうのは、
「毎日米飯として摂取する」という状況を想定して書いています。
細かく言うと、300g、50ppb、60kgで、0.25μg/day/kgになりますが、
毒性の問題に関しては、「4倍」はそれほど大きな差異ではないでしょう。
常用対数スケールで約1/2で、この手の実験に関しては実験誤差の範囲です。
100ng/day/kg(同じ条件で、一日100g程度の米飯)でも、
疫学調査の結果で確実に該当するのは、
(自分の調査不足もあって今のところは)
モザンビークの1件だけですので、
疫学調査の結果を自信を持って使うことはできません。

すでに何度か言ったと思いますが、今回の事故米の量と濃度が、
肝臓がんの発生率の統計に影響していない可能性が高いという結論に関しては、
NATROMさんに完全に賛成しています。
特に西日本と東日本の違い云々に関しての結論に関しては、
全くその通りでしょう。

ただ、考えられる最大の被害者数に関する細かい議論について言うと、
NATROMさんの計算が違っている可能性も否定できないということです。
特に、動物実験の結果を考慮すると、、
実際の日本での疫学的な容量作用曲線が
すでに知られている状況から、
あるいは線形から大きく外れる可能性があり、
そうなると、事故米のアフラトキシン総量を元にした計算は
大きくずれることになります。
NATROMさんの主張の通りである可能性が高いということには
賛成できるのですが、
そうでない可能性も考慮しなければいけないと思うわけです。

薬事行政においては、
多少のリスクがあっても、効果の方が大きければ認可されるということが、
日常的に行われるわけですが、
食品行政は、それと異なり、
決して「壮大なる実験」であってはいけないわけですので、
動物実験の結果も踏まえて万全の対策が求められるでしょう。
そういうことも踏まえて考えると、
「今回の事故米が大きな健康被害をもたらす可能性は否定できないし、
無視するべきではない」というのが、
自分が伝えたいメッセージです。

もともと違う観点、違う目的で書かれた記事ですので、
本来は、そのまま比較することができないし、
矛盾するわけでもないのだと思います。
ただ、安全/危険という二項対立でものごとを見てしまう傾向にある
一般の人からすると、
その当たりのところが分かりづらいというのも事実ですので、
そういう意味で、
コメントさせていただいたと思っていただけると幸いです。

有意義な議論ができたことを大変感謝しています。

投稿: 情報学ブログ | 2008/09/14 2:56:49

他の食品にもアフラトキシンが入っているから気にするなと言っている人がいますが
だとすると他の食品の事も当然考慮に入れる必要がありますね
今回の汚染米での摂取量+その他の食品での摂取量になりませんか?
逆に怖くなったよ

投稿: | 2008/09/14 4:51:26

同条件でなければ、マウス実験も疫学的調査結果も同レベルの参考データであると判断するのは正しいと思います。ただ、気になるのは(多分無いと信じたいけど)、日本(人)固有の要素により、癌化の率が跳ね上がることです。医学関係は素人に近いですが、物理現象では閾値付近での大きな変化や、化学反応における触媒を見てると杞憂であって欲しいと考えます。

それから、以下の様な記事を見つけました。
http://www.j-cast.com/2008/09/11026863.html

これが事実なら、「工業用」で廃棄されていないものが全て食用になっていることを意味するような・・

投稿: めー | 2008/09/14 9:50:51

マウスの情報を無視するのはきわめて恣意的だと思います。それから、8.2μg/kg/day(サル)、ラット3.2μg/kg/day(ラット)で、50%が肝癌になるとあります。「ある程度を越えると一気に発がん率が上がる」と情報学ブログさまはおっしゃっておられますが、サルやラットについて、0.3~0.8μg/kg/dayあるいは0.03~0.08μg/kg/dayでは単純にリスクが10分の1、100分の1ではなく、もっと一気に小さくなると考えてよいのでしょうか。たんに種間の差異のみならず、濃度のオーダーがかなり異なることからも、動物実験を今回の汚染米のリスク計算に使用する妥当性に疑問がつきます。少なくとも、モザンビークデータのほうがずっと信頼できると思いますが。

「 (少なくとも高濃度域で)疫学調査の結果がそのまま適用できない」とありますが、これは超高度濃度(数μg/kg/day)のオーダーの話ですか?それとも数百ng/kg/dayのオーダーでの話ですか?また、少なくとも数~数十ng/kg/dayのオーダーでは疫学調査のほうが信頼できることは同意できていますよね。50ppbの汚染米を100gのオーダーで毎日、生涯にわたって食べ続けるという状況は私には想像できないのですが、そういうことがありうるとお考えですか?食品行政の基準は厳しくあるべきという話は十分に理解できますが、それにしても「(三笠フーズの汚染米が多くの人に)かなりの影響を及ぼしている可能性がある」という記述はきわめて不正確だと考えます。もういちど質問しますが、、疫学調査の限界に由来する誤差はどの程度あると思いますか?私は最大限にとっても100倍もないと思います。

投稿: NATROM | 2008/09/14 11:07:54

癌の様な潜伏期間が長く、年齢的にも進行形態が違う病気への影響に対して
「一生涯にわたる」リスクを考慮する場合には
平均寿命や他疾患での死亡を考慮に入れるべきではないかと思います。

死亡原因が老衰か癌ぐらいしかないならばいいのですが、死因にはさまざまな要因が絡みます(診断者の程度も含め)


特にモザンビークは平均寿命が40歳と世界的に見ても低いグループに属していますので
実際には発病していても別の要因で死亡したり発見が出来なかったりして肝臓癌として処理されていないリスクをもっと考えるべきではないでしょうか?

つまり、モザンビークの肝臓癌データというのはある程度の医療を受けられる上流層と末期癌として死亡した人間のみがカウントされているのではないかという懸念を抱きます。


余談ですが
アフラトキシンの規制値については最低作用量よりも検出限界量から決まっている感じを受けています。

投稿: | 2008/09/14 13:01:51

>1μg/day/kgレベルの汚染を一生涯とは言わず
>数年間でも受ける可能性としては、
>どのようなものがありますか?

実際に汚染物質を摂取し続けている量がそのレベルかどうかは今の報道では分かりませんが、医療食品サービス(たぶん業界最大手)が病院や福祉施設に納入しているため、ほぼ毎日確実に摂取している人たちがいるのかどうか気がかりです。

この問題、ある程度火が燃え上がるくらいでちょうど良いのではないでしょうか?隠蔽されそうで。

投稿: 燃料投下 | 2008/09/14 20:23:54

私も情報学ブログ様の考えに賛成です。
今回の事件は、パニックを避けるがために情報操作されている面が多々あるようです。
あまり取り上げられていない点について列挙いたします。

まず、1971年に規定された日本でのアフラトキシンB1基準値(10ppb)ですが、他国では5分の1位の国もあり見直しが近年叫ばれていたそうです。

また、カビという物は常に増殖するものです。
時間経過と共に毒性が低下するメタミドホスや、変化のないとされるBSEと同レベルで扱うのは大変危険と思います。

カビについては、収穫後の貯蔵-流通-保管-消費過程で、高温多湿あるいは不十分な種子の乾燥などが多発要因に挙げられています。
十分に乾燥しても菌の自然汚染で収穫物全体に分散して存在している胞子は、その周囲に偶然飛散した水滴あるいは燻蒸処理によって死んだ虫体の水分を利用して増殖する事が知られています。

よって、売却時のデータをもとにリスク計算することにあまり意味はないと思います。
実際に消費摂取したときにリスクが大きく左右されます。
よって消費が行われる時期が遅いほど、リスクは高まりますが目視による選別も可能になると言うことです。
目視による選別除去が有効と言われていますが、末端の食品加工会社もしくはご家庭でも実施が徹底されているかと言うと大変疑問です。

最後に牛乳の国際的な基準は、アフラトキシンM1(B1の代謝産物)で0.5ppb、乳幼児用のミルクで0.25ppbとなっています。
エームズテスト(ラットの肝臓をすりつぶして作った上澄み液と化学物質を混ぜ合わせ、サルモネラ菌に作用させて、突然変異の発生を調べる)では、人はラットの150倍と言う実験データがあります。

>やってはいけないのは、動物実験の結果と疫学調査の結果を単純に比較して、
>「疫学調査はヒトでの結果だから、より信頼できる」と断定することでしょう。
>2つの実験は、お互いに補完関係にあるものですので、それぞれの長所と短所を理解
>しつつ、総合的に判断していくことが必要だと思います。

まさにその通りと考えます。

投稿: | 2008/09/15 11:34:44

みなさまコメントありがとうございます。
すべてに返答することはできないのですが、
批判的なもののみ、返答させていただきます。

> NATROMさん

NATROMさんは、「科学的にもっとも正しいと思われる毒性を見積もる」(A)ということと、「(A)の見積もりそのもののリスクも踏まえながら規制値を決める」(B)という議論を混同していると思います。通常、医学生物学の基礎研究では(A)が重視されますが、薬事行政や食品行政では(B)も併用していくことが重要です。

さて、NATROMさんの議論は(A)の議論としては正しいと思いますが、(B)の議論としては不正確です。たとえばNATROMさんのおっしゃる通り、疫学調査から分かるリスクと動物実験から分かるリスクの差は100倍以内である可能性が高いと思いますが、両者の差が100倍以上であるリスクはそんなに低くないと思います。

(B)の議論として言うと、本文で書いたように「両者を踏まえて総合的に判断していく」ことが必要なのです。

投稿: 情報学ブログ | 2008/09/15 13:03:32

私は別に(B)の議論なんてしていませんが。むしろ、混同しているのは、私ではなく、情報学ブログさまのほうだと思います。でもまあ、「科学的にもっとも正しいと思われる毒性を見積もるという点からの議論としては正しい」という点に同意していただけたので満足です。「(三笠フーズの汚染米が多くの人に)かなりの影響を及ぼしている可能性がある」という記述はきわめて不正確だという指摘は、「科学的にもっとも正しいと思われる毒性を見積もるという点」からは正しいですよね。

それから、私が100倍以内と言ったのは、「疫学調査から分かるリスクと動物実験から分かるリスクの差」ではなく、「海外での疫学調査から推定されたリスクと日本人のリスクの差」です。「モザンビークは平均年齢が低く、また医療事情より、発がんのリスクが低く推定されてはいないか?」→「そうですね。でも、それで日本人と100倍違うってありえないでしょ?」というわけです。

投稿: NATROM | 2008/09/15 13:28:12

アフラトキシン毒素を産出する特定菌株は、熱帯および亜熱帯地域に棲息しており国内では沖縄県が北限と云われています。
またカビの発生・増殖には、水分含量16%以上、温度が最低25℃以上、そして若干の通気性(酸素供給)が必要と云われています。
(温度に関しては冷蔵庫内でも増殖可能ではないか?と感じます)

仮に飼料として牛が事故米を食べていた場合、その後産出される牛乳・糞による拡散も侮れない脅威と思います。
共に農業で使われる物質であるからです。
特に牛乳に関しては、不運にも減農薬栽培の除草剤(アブラムシ対策)に多用されるようになってきています。
受注調整で廃棄される牛乳や家庭で賞味期限切れの牛乳がメインとなるため、沖縄以南でも増殖条件に適したハウス栽培地域などで爆発的に「汚染作物」が増える可能性もゼロとは言えません。

こういった二次的・三次的被害も考慮しなければなりません。
狭義の理論だけでは「安全宣言」を出せないのが現状と思います。
数年後に汚染状況を調査・把握しなければ「実質的な安全宣言」は無いと考えます。

投稿: | 2008/09/15 13:57:19

> 私は別に(B)の議論なんてしていませんが

基本的にはおっしゃることに同意します。
一応、意見の一致が見られたということで、
別の話になりますが、
だとしたら、NATROMさんのブログの書き方は不親切ではないかと思います。

NATROMさんのブログの記事は、
あたかも、事故米のリスクがそれほど高くないというように読めるし、
少なくとも一般的にはそう解釈されています。
実際、NATROMさんのブログを見て、
「やっぱり、大きな問題ではないんだ…」という人が多いのです。

こういう解釈に対して、
NATROMさんは、「それは自分の本意ではない」と
おっしゃるのかもしれませんが、
一般にはそう解釈されてしまうということは考えなければいけないと思います。

質問にお答えすると…、

> そうですね。でも、それで日本人と100倍違うってありえないでしょ?

もしこれが、チンパンジーの食生活についての
生物学的研究だとしたら、「ありえない」という判断でかまわない。
しかし、リスク論的には、その可能性は十分想定しないといけないと言うことです。

投稿: 情報学ブログ | 2008/09/15 17:52:41

かたよりに関して

検査では少なくとも複数の場所からサンプリングして測定するのが通常です。もちろんそれでもばらつきはありますが。

食品そのものの場合ではありませんが、参考になるかと思い、ひとつの報告書をあげておきます。
http://www.jaish.gr.jp/horei/hor1-48/hor1-48-29-1-9.pdf
検出限界(および定量限界)もかこの10 ppbの基準を決めた当時よりだいぶ上がってますね。さすがMS。

投稿: | 2008/09/17 0:12:41

モザンビークのデータだけ1ng/kg/dayあたり0.05人で他のデータとあまりにかけ離れているんですよね。

他の地域に照らし合わせると13人ではなく60〜100人になります、総数はないのに10万人あたりの数字はあるとか妙な感じがします。

ところで1ng/kg/dayで10万人あたり0.01人ということはTD50は5000000ng、つまり5000μg/kg/dayということで良いのでしょうか?

投稿: | 2008/09/19 17:30:45

> モザンビークのデータだけ1ng/kg/dayあたり0.05人で他のデータとあまりにかけ離れているんですよね。

> 他の地域に照らし合わせると13人ではなく60~100人になります、
> 総数はないのに10万人あたりの数字はあるとか妙な感じがします。

この程度は完全に誤差範囲でしょうね。
もともと条件の違う地域で比較しているので、
ばらつきがでるのは仕方ないと思います。

> ところで1ng/kg/dayで10万人あたり0.01人ということはTD50は5000000ng、
> つまり5000μg/kg/dayということで良いのでしょうか?


毒性が純粋にランダムに表れるのなら、
TD50は以下の式で求まり、

-log2/log(1-0.0000001)=7000μg=7mgとなります。
だいたいおっしゃる通りの計算になります。

ただ、毒性がこういった形で
完全にランダムに現れるというのはむしろ考えにくいことで、
他のさまざまな影響を受けますから、
この計算通りになるわけではありません。

もともと疫学調査の結果と動物実験の結果は
そのまま比較することはできないものなのです。

投稿: 情報学ブログ | 2008/09/21 3:22:21

情報学ブログさんとNATROMさんの議論を大変興味深く読ませていただきました。薬学や疫病・毒物には全く素人の私にとって、公的機関やマスコミからアフラトキシンの慢性毒に関する情報公開がなされず不安ばかりが増大する現状でしたが、両人の科学的なアプローチによる討論は素人にもわかり易く、ネット内や自分の中での無茶苦茶な不安感からは随分安心する事が出来ました。
本当にありがとうございました。

投稿: | 2008/09/25 16:14:46

私は統計学も薬学もまったくもってして素人なのですが、頭がこんがらがりながら今回の事件を見ていましたところ。
ネット内とTVメディアの違いに物凄い驚きを感じたのと同時にある一つの恐ろしさを感じました。
もしネット内で流れる情報がTVメディアに流れたとして、殺意や悪意をもった誰かがその情報を掴み、意図的にカビを繁殖させるなどして、例えば妻や母がそれを毎日茶碗一杯にいれたとしても癌にはならないのでしょうか?
保険殺人などに使われる事故米ならぬ事件米になりえないか?と言うのが心配になってしまいました。

この心配が否定できない場合はこの情報から軽い気持ちで事件が起きてしまうかもしれないのでコメントは判断で乗せて頂かない方が良いのかもしれません。
まあ唯の通りすがりのろくに学の無い文系一般人の独り言なので、こんな馬鹿な発想をする奴も居るのだなと見ていただけたら幸いです

投稿: | 2008/10/11 16:53:53

癌の大半はアフラトキシンでなるのではないでしょうか、三笠フーズの社長さんも恐いカビである。
ことは最後は認めて。いたみたいですが、染色体
を傷つけ。P52?とかの細胞を作る、のがおかしくなり、がん細胞を作る、らしいです。?問題は
1998年あたりから三笠フーズが米にまぜて販売したらしいです、そしてどこで危険性に気が付いた。かです、1999年2000年2001年2002年2003年2004年?
致命的なアフラトキシン入りのこめを加工して。食べさせられた、ことは99パーセントまちがいない。
関係する、臓器の悪い方と。運の悪い方は。死ぬだろう、

投稿: mllrraa51 | 2009/06/07 21:55:33

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