IWC総会:商業捕鯨再開先送り 議長案、隔たり埋まらず

2010年6月23日 15時4分

 【アガディール(モロッコ)会川晴之】21日から当地で開かれている国際捕鯨委員会(IWC)総会は22日夕、各国の代表者会議を開いた。日本など捕鯨国と、欧州連合(EU)など地域別に分かれた反捕鯨国が同日まで2日間、妥協を探るため非公式折衝を重ねたが、双方の溝は埋まらなかった。25日までの会期中に、日本が南極海で実施している調査捕鯨数を削減する代わりに日本沿岸での商業捕鯨の再開を認める議長提案の合意を得るのは難しい情勢で、来年以後に先送りされる方向が強まった。

 体調不良を理由に総会を欠席したチリのマキエラ議長に代わって議長役を務めるアンティグア・バーブーダのリバプール副議長は21日、総会を中断し、日本、韓国、アイスランド、ノルウェーの捕鯨国と、地域別に分かれた反捕鯨国の多い6グループが非公式折衝する異例の措置に踏み切った。

 22日夕の代表者会議にその結果が報告されたが「歩み寄りはなく、1年間、議論を凍結する」(EU筋)方向が強まった。別のEU筋も「今週中の決着は困難」と述べた。また、中南米諸国も、同様の考えを示したと見られる。

 日本は、南極海でのミンククジラの調査捕鯨頭数を、現状の年約850頭(09年の実績は約500頭)から400頭に、15年以後は200頭に削減する議長提案を受け入れる考えを示した。さらに、現地で交渉に当たる舟山康江農林水産政務官は「最終局面では決断する」と述べるなど、最後まで合意の道を探る考えを強調した。

 だが、EU筋によるとアイスランド、ノルウェー両国は、捕鯨頭数削減や輸出禁止につながる議長提案に反対する姿勢を崩さなかった。また、最も強硬な反捕鯨国である豪州のギャレット環境相も22日、記者団に対し「議長提案は商業捕鯨再開を認めるもの」と、改めて反対を表明した。

 EUは南極海での調査捕鯨を段階的に廃止するほか、捕鯨で得た鯨肉は自国内消費に限り、輸出を禁止するよう求めている。

 総会は23日朝に再開し、リバプール副議長が今後の協議の方向を示す。IWC総会で捕鯨の枠組みを変えるには有効投票の4分の3以上の賛成を得る必要がある。

 加盟88カ国のうち、25カ国が所属するEUがまとまって反対すれば合意は困難な上、捕鯨国や反捕鯨国双方の反対も根強く、議長提案に代わる新たな合意案を探るのも極めて厳しい状況だ。

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