マツダ11人死傷:「殺すつもりではねた」逮捕の元従業員

2010年6月22日 13時17分 更新:6月22日 13時45分

広島南署に運び込まれた引寺容疑者が乗っていた乗用車=広島市南区で2010年6月22日午前11時35分、中里顕撮影
広島南署に運び込まれた引寺容疑者が乗っていた乗用車=広島市南区で2010年6月22日午前11時35分、中里顕撮影

 静かな朝の出勤風景が一転、惨状へと変わった--。広島市のマツダ本社工場(宇品東地区、大州地区)に男が乗用車で突っ込み、従業員ら11人を死傷させた事件。逮捕された元同社期間従業員、引寺(ひきじ)利明容疑者(42)は、2カ月前に同社を解雇されたことへの恨みとともに「殺すつもりではねた」と供述しているという。男にいったい何があったのか。東京・秋葉原で08年に起きた無差別殺傷事件を思い出させる理不尽さに、同僚を失った従業員らは怒りに声をふるわせ、地元住民らには「不況が背景なのか」と、不安と驚きが広がった。

 ◇現 場

 現場周辺にはサイレンを鳴らしたパトカーや救急車が並び、騒然となった。

 工場から出てきた男性社員(33)は「午前7時40分ごろ、通勤バスの中から、男性がうつぶせに倒れ頭から血を流しているのを見て、何があったんだろうと思った。これだけ従業員がいたら中には不満を持っている人もいるだろうが、こんなことは二度とあってはならないし、非常に残念」と肩を落とした。

 現場近くの市立楠那小の森宗寿博校長は「午前8時過ぎにサイレンが頻繁に鳴り出した。職員に見に行ってもらったら、中から人が運ばれているのを見た。えらい事故やと思った」と驚いた様子。「今日は児童の心のケアのため、集団下校させる」と話した。別の教員は「情報が入ってこず不安。もし児童が巻き添えになっていたら、と思うとぞっとする」と話した。

 ◇病 院

 マツダ病院(広島県府中町青崎南2)には9人が次々に運び込まれた。マツダ社員約10人があわただしく出入りし、騒然とした雰囲気に包まれた。詰めかけた報道陣に対し、マツダ広報本部の男性社員は「何も分かりません」と応えるのが精いっぱいだった。

 ◇本 社

 現場から2キロ余り離れた府中町のマツダ本社。敷地内には県警の車両が出入りし、負傷者や事件の状況などに関する情報が錯綜(さくそう)する中、広報本部の社員らが対応に追われた。報道関係者を控室に案内した女性社員は「すいません。今はここに案内することしかできないんです」と力なく語った。

 マツダ東京本社広報によると、非正規従業員はリーマン・ショック以前は派遣従業員が多かったが、それ以降は直接雇用に切り替え、期間従業員が中心になった。

 会社全体で今年2~4月には約150人を期間従業員として採用し、5月以降も募集を続けているという。正規、非正規を含めた会社の全従業員数は3月末現在、約2万2300人。

 一方、広島労働局労働基準部は取材に「最近では、マツダの解雇に関する相談は把握していない」としている。

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