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2010年8月21日(土)付

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民主党代表選―なんのために戦うのか

この人たちはいったい何をやっているのか――。少なからぬ有権者があきれているに違いない。9月1日の民主党代表選告示に向け、党内各グループの駆け引きが激しくなってきた。困難[記事全文]

景気対策―成長戦略踏まえ骨太に

急場しのぎではなく、雇用の維持・創出を軸に新成長戦略を前倒しで実施するような骨太の政策こそが求められているのではないか。菅政権と民主党が景気対策の検討に入ったが、自公政[記事全文]

民主党代表選―なんのために戦うのか

 この人たちはいったい何をやっているのか――。少なからぬ有権者があきれているに違いない。

 9月1日の民主党代表選告示に向け、党内各グループの駆け引きが激しくなってきた。困難な時代のかじ取りを担う指導者選びだというのに、あまりに内向きな主導権争いである。

 鳩山由紀夫前首相のグループが開いた研修会は、衆参両院議員約160人が集まり、小沢一郎前幹事長に立候補を促す決起集会のようであった。

 「反菅」だ、「脱小沢」だと、自民党政権時代にさんざん見せられた派閥中心の総裁選びを思い起こさせる。政権交代で民主党が手を切ったはずの「古い政治」そのものではないか。

 菅直人首相は就任わずか3カ月である。参院選敗北の責任はあるにしても、実績を残すだけの時間がたっていないし、退かなければならないほどの失政もない。民意も続投支持が多い。

 なにより首相交代は総選挙による、という政権交代時代の原則をまたぞろないがしろにするべきではない。

 それでも、民主党が代表選をするのなら、その意味はどこにあるのか。

 政権担当後の迷走でぼやけてしまった政策路線を定め直し、再出発の土台固めをすることにしかあるまい。

 具体的には、財源不足で行き詰まった昨年の衆院選マニフェストを大胆に見直すのか、それとも文字通りの実現にこだわるのか。菅首相が提起した消費税の引き上げ論議に踏み出すのか、それとも棚上げするのか、である。

 互いに相いれない二つの潮流を整理できないままでは、だれが首相であっても力強い政権運営はおぼつかない。ねじれ国会の下で不可欠な、野党との話し合いに臨む足場も定まらない。

 2週間にわたる代表選で、党員・サポーターも参加して徹底した政策論争を行う。そのうえで勝敗が決すれば、あとは一致結束して政策を遂行する。民主党が進むべき道はそこにある。

 寄り合い所帯で出発した民主党は、亀裂を恐れるあまり外交・安全保障など意見が割れるテーマで党内論議を怠ってきた。もう逃げは許されない。

 菅首相はマニフェストや消費税に対する考えを封印し、争点をぼかそうとしているふしがある。これはいただけない。正式な立候補表明では対立をいとわず、堂々と信念を語ってほしい。

 小沢氏周辺では「小沢首相」待望論が勢いを増しているという。しかし、政治とカネの問題や強権的な政治手法で政権交代への幻滅を招き、今の苦境を招いたのは小沢氏ではないか。

 政治資金では、いまだに国会で何の説明もしていない。検察審査会の判断次第では強制起訴の可能性も残る。

 けじめをつけないままの立候補は、民主党政権からの民心のさらなる離反を招くだけだろう。

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景気対策―成長戦略踏まえ骨太に

 急場しのぎではなく、雇用の維持・創出を軸に新成長戦略を前倒しで実施するような骨太の政策こそが求められているのではないか。

 菅政権と民主党が景気対策の検討に入ったが、自公政権の政策をなぞるような手法であってはならない。菅直人首相が持論とする雇用重視の「第三の道」へ大胆に踏み出すべきだ。

 日本経済には懸念材料が増えている。15年ぶりの水準まで円高ドル安が進み、輸出産業の採算が悪化している。株価も下がっている。回復への自信が揺らぎ、金融市場や与野党から経済対策を求める声が上がった。

 必要な対策は一刻も早く打つべきだ。若者の就職難はひどい状況が続いているから、職業訓練や企業に対する採用助成策の拡充をはじめ、雇用の悪化を防ぐための取り組みは強めなければならないところだ。

 一方、年末に期限となる省エネ家電のエコポイント制度のように、もともと需要の先食いで効果も薄れてきた施策には、これ以上頼れない。環境エネルギーや医療・介護、観光などに焦点を当てた新成長戦略を踏まえて、もっと効果の期待できる政策に重心を移すべきではあるまいか。

 そのためにも大事なのは、首相自身が掲げる「財政再建と成長の両立」である。景気対策として雇用と内需の創出を図るにも、借金頼みでなくまとまった財源が必要になるからだ。

 当面の対策の財源には、経済危機対応の予備費や決算剰余金の1兆7千億円が想定されているようだが、これだけに頼るのでは、一時的な刺激効果しか期待できないだろう。

 かといって増税はすぐにはできず、当面は歳出の工夫などで財源を生み出さねばならない。このため来年度に向け、子ども手当や高速道路無料化など衆院選以来の民主党のマニフェストの全面見直しが避けて通れない。

 同時に大切なのは、政府と日本銀行との本格的な協調体制を築くことだ。菅首相は白川方明日銀総裁と来週中にも会談するが、単に金融緩和を働きかける場にしてはいけない。

 それにはやはり首相がデフレ脱却や景気回復のための当面の施策はもちろん、消費増税を含む税制抜本改革と財政再建の道筋についての基本的な考えを日銀側にきちんと説明し、理解を得ることが欠かせない。

 いまのところ国債はバブルといっていいほど順調に売れているが、巨額の発行を続ける限りは急落のリスクが高まっていく。いざという時、日銀に国債買い増しなどぎりぎりの手段で支えてもらうには、両者の緊密な関係を築いておきたい。

 そうしてこそ「急激な円高は望ましくない」との政府のメッセージも市場に力強く響くに違いない。

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