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2010年8月18日
日産自動車は10月から、事務系の派遣社員を期間を定めた直接雇用に切り替える。労働者派遣法で期間を規制されない「専門業務」として派遣社員を受け入れてきたが、実態は派遣期限に3年という上限がある「一般事務」であるとして、東京労働局が是正指導していた。事務派遣の規制を強化する派遣法の改正が検討されていることも、影響したとみられる。
日産によると、現在は数百人いる事務系派遣社員を、本人の希望に応じて直接雇用に切り替える。契約期間は半年で、判例などから雇い止めをしづらくなる3年を超えないよう、最長2年11カ月まで更新する。今月から新規採用の募集も始めた。
派遣法では、専門的な知識や技術が必要とされる26業務以外は、派遣社員を3年を超えて働かせることを禁じている。日産はこれまで、専門業務の「事務用機器操作」などとして事務系派遣社員を期間を限らずに受け入れていた。
昨年、派遣社員2人が「実際には会議室の予約やお茶出しなど庶務的業務が大半を占める」などと東京労働局へ是正を申し立てた。労働局は、3年の期間を超えて一般事務派遣を受け入れていたとして、直接雇用も含めた雇用の安定を図るよう指導した。
日産の広報担当者は「事務系派遣は法的にグレーな部分がある。法律違反の可能性を残したまま派遣の受け入れを続けるより、直接雇用の方が社員と会社の双方にとってよいと判断した」と話す。
労働局への申し立てを支援した「首都圏青年ユニオン」の河添誠書記長は「直接雇用への切り替えは一歩前進と評価できるが、契約更新に上限を設けることで、いつでも解雇できる安い労働力として使い続けようとする狙いが明らかだ。安定雇用には程遠い」と指摘する。