平成18(2006)年5月18日[木]
■【主張】在日の和解 民団の“総連化”が心配だ
在日本大韓民国民団(民団)と在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)のトップ同士が会談し、約半世紀ぶりに和解した。「歴史的和解」といえるほどのものか、首をかしげざるを得ない。
韓国の盧武鉉政権は北朝鮮に対する融和姿勢を強め、六月に金大中前大統領と金正日総書記による二度目の会談を開くことを目指している。民団と総連の和解は、それぞれの本国の意向を反映したものといえる。
民団と総連はこれまで、在日朝鮮人の北への帰還(北送)事業や韓国民主化運動などをめぐり、激しい対立と抗争を繰り返してきた。両組織が教科書、靖国、歴史認識問題などで接近し始めたのは、初の南北首脳会談の二〇〇〇(平成十二)年以降である。
しかし、民団内部では、今も北や総連に対する不信感がくすぶっているとされるだけに、直ちに両組織全体の和解につながるかは疑問だ。
総連は本国の金総書記が拉致事件を認め謝罪したことに加え、朝銀系信用組合が不正流用事件で破綻(はたん)したため、離脱者が相次ぎ、財政も逼迫(ひっぱく)しているとされる。民団の財政支援を期待しての和解劇とも考えられる。民団系の金が総連を通じて北へ流れる可能性も否定できない。
折から横田めぐみさんの父、滋さんらが訪韓し、めぐみさんの夫とみられる金英男さんの家族と面会した。日韓両国の拉致被害者家族の連携が一段と強くなっている。そのような時期に南北融和路線に歩調を合わせ、民団と総連が和解したことも、拉致問題の解決には懸念材料の一つだ。また、民団がこれまで行ってきた脱北者への支援は、どうなるのか。
永住外国人の地方参政権をめぐり、民団は獲得運動を行ってきたが、総連は日本に同化するとして反対してきた。参政権は国民固有の権利であり、在日韓国・朝鮮人がいかに長く日本に住んでいようと、認められないものだ。今後、民団と総連がこの問題にどう対処していくのかも注視したい。
朝鮮総連は朝鮮労働党の工作機関に直結する組織として、さまざまな工作活動に関与してきた。民団系の青年や学生に近づき、北朝鮮シンパにして韓国に送り込んだともいわれる。民団の“総連化”が心配である。
【5月18日産経新聞朝刊】
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