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◆女子プロゴルフツアー CATレディース第1日(20日、神奈川・大箱根CC=6653ヤード、パー73) プロ6年目の恒川智会(27)=高沖Gアカデミー=が6バーディー、ボギーなしの6アンダー67をマークして、首位に1打差の2位スタートを決めた。自宅で3匹の犬を飼う愛犬家は、左前脚を骨折して入院中の13歳雄のラブラドルレトリバー「ワサビ」の治療費を稼ぐために必死。初の優勝賞金で、犬と家計を救う。福嶋晃子(37)=NEC=が7アンダー66で回り首位発進。
ツアーフル参戦1年目の恒川を駆り立てたのは、“家族”への思いだった。「(けがを)治すためにお金を稼がなきゃって、ずっと犬のことを思ってラウンドしていた。だから集中して回ってこられた」。今季19戦中、予選突破が11回と苦戦が続く27歳の“ルーキー”が、猛チャージで自身のベストスコア67をたたき出した。
インスタートの11番でグリーン左奥からカップに放り込み「今日はついてるのかなあ」。続く12番パー3では5メートルの下りのスライス、13番では第3打をピン奥2メートルにつけて3連続バーディーを奪い「気持ちよくゴルフができた。いい感じ」と豪快に笑った。
その笑顔の裏に悲しい出来事があった。前週のNEC軽井沢72から15日に帰宅し「ワサビがいない!!」とパニック。家族から散歩中に骨折し、入院したことを知らされた。動物は保険がきかないため、高額な治療費が必要。「お金がかかるねえ」と嘆いた母・容子さんに対し、父・順継さんは「お金じゃねいだろ」と激怒した。そんな様子を眺めていた長女は「私がやるしかない」と拳を握り箱根に乗り込んだ。
犬と共に歩んだゴルフ人生だ。クラブを初めて握った12歳の時に「70台が出たら飼ってあげる」と両親に言われ、126で回った初ラウンドから1年でノルマをクリア。最初に飼ったのはラブラドルレトリバーのゴハン(14)で、その1年後にワサビが仲間入り。そしてプードルのダイズ(1)を購入直後の最終予選会(昨年12月)で26位に入った。
ワサビは現在も入院中で手術はこれから。「知り合いは手術して70万円かかったって」と戦々恐々だが、優勝すればそんな心配は無用。賞金は1080万円で治療費分を差し引いても余りあるが「老犬だから家の中をバリアフリーにしてあげたい」と、すべては犬のため。ヤーデージブックに挟んだ「うちの子たち」と残り2日間を戦い抜く。
◆恒川 智会(つねかわ・ちはる)1983年3月20日、愛知・名古屋市生まれ。27歳。同大卒業。04年日本女子学生優勝。05年プロテスト合格。07年ステップアップツアーのパー72カップで優勝。昨年12月の最終予選会で26位に入り今季からフル参戦、日医工女子オープンの23位が最高成績。師匠は高沖陽介。趣味は映画観賞で落ち込んだ時は「天使にラブソングを」を観賞。お酒が大好きだが、現在禁酒中。家族は両親と弟。157センチ、57キロ。
(2010年8月21日06時02分 スポーツ報知)