きょうの社説 2010年8月21日

◎追加経済対策 11兆円規模なら効果はあるが
 国民新党と新党日本が補正予算を編成し、約11兆円規模の追加経済対策を実現するよ う政府に要請した。確かに景気をてこ入れする策を講じるのであれば、それぐらいの規模でないと、効果は見込めないだろう。

 週明けにも開催される見通しの菅直人首相と白川方明日銀総裁の会談を前にして、市場 では政府や日銀による景気浮上策への期待が先行し、円高も小康状態になっている。もし会談が期待外れに終われば、市場の失望を招き、円高、株安、デフレが一挙に加速しかねない。息切れし始めた景気の二番底回避へ、思い切った追加経済対策が必要だ。

 巨額の財政赤字を考えれば、財政出動を増やすなど、受け入れ難いと思うかもしれない 。だが、ここで円高、株安の悪い流れを断ち切ってしまわないと、反転のきっかけがつかめない。企業の資金需要は一層細って、経済活動が停滞・縮小し、税収が大幅に減るのは目に見えている。長期金利の低下で預金金利が下がれば、消費の低迷に拍車が掛かるだろう。

 政府は、市場が発するSOSに背中を押され、ようやく追加経済対策の検討を始めた。 財源として、2010年度予算に計上した「経済危機対応・地域活性化予備費」の活用を模索し、同予備費で残っている約9200億円に09年度予算の剰余金約8千億円を加え、計1兆7千億円余りを充てるつもりのようだが、この程度の予算では明らかに力不足である。

 補正予算を組んで景気対策を実行することに、自民党は反対しないはずだ。成立させる までに時間がかかるのはやむを得ないが、政府の姿勢が変われば、市場の見方も変わる。「国策に売りなし」の言葉通り、急激な円高、株安、デフレの三重苦を回避する道が開ける。企業業績は決して悪くないのだから、企業や消費者心理も一変するのではないか。

 日銀は追加の金融緩和には、慎重な姿勢を崩していない。資金需要が乏しいなか、実効 性のある策がなかなか見当たらないのは確かだが、政府に歩調を合わせて、緩和策を打ち出していくのは、日銀として当然の務めである。

◎アカペラ・タウン 新たな試みに期待大きい
 21日に金沢市中心部で繰り広げられる「金沢アカペラ・タウン2010」は、都心に 音楽があふれる豊かさを発信する新たな試みである。金沢では、春に「ラ・フォル・ジュルネ『熱狂の日』音楽祭」、秋には「金沢JAZZSTREET」などが行われ、都心のにぎわい創出に果たす音楽の力が再認識されている。クラシックやジャズに続き、アカペラも定着すれば、「音楽の街」という金沢の顔が一段と鮮明になり、音楽を愛好するファンのすそ野も広がっていくだろう。

 アカペラはこの10年で全国的なブームとなり、県内をはじめ各地でグループが誕生し ている。高音、低音などのパートが重なり合う美しいハーモニーが魅力である。それぞれの実力派グループの音楽世界とともに、音楽と人、街が響き合う都心ならではのハーモニーに浸り、金沢の街づくりを見つめ直すきっかけにしたい。

 「金沢アカペラ・タウン」は、全国から78グループ、約400人が参加して行われる 。昼はストリートステージとして近江町いちば館やプレーゴ、柿木畠、竪町広場など10カ所が会場となり、夜は、しいのき迎賓館前の特設舞台でファイナルステージがある。

 金沢の都心部は、歩いて回れる範囲内にライブが可能な大小さまざまな会場がある。そ れらをつなげば人の流れが生まれ、回遊性を引き出す効果がある。まちなかと音楽の相性がよいのはクラシックやジャズで実証済みである。音楽ジャンルが変われば、街の表情も違って見えるかもしれない。

 しいのき迎賓館の緑地空間も、オペラ祭などが行われる金沢城三の丸広場とともに、城 の石垣を借景にする城下町らしい野外舞台として定着してきた。広坂緑地周辺の整備が進めば、文化発信空間としての機能も充実するだろう。

 都心を巨大な音楽ホールに見立てれば、街の景観や歴史的なたたずまいに磨きをかける ことは音響効果を高め、ライブの余韻を心地よいものにする。人と街が一体となって音楽を育て、その営みを通して新たな街づくりのヒントを得る好循環を引き出したい。