富士河口湖町船津の住宅で新聞販売店従業員、平尾恵美子さん(当時61歳)を殺害して現金を奪ったとして強盗殺人罪に問われた元同僚の無職、田中龍郎被告(58)=甲府市中小河原1=の裁判員裁判の初公判が27日、甲府地裁(深沢茂之裁判長)であり、田中被告は「やっていない」と無罪を主張した。
同地裁の裁判員裁判では初の無罪主張事件。強盗殺人罪の刑は死刑または無期懲役と定められており、裁判員は難しい判断を迫られることになる。
起訴状によると、田中被告は1月31日午後8時前ごろ、平尾さんをビニールひもで絞殺し、約57万円を奪ったとされる。
検察側は冒頭陳述で、田中被告は長男の学費や家賃など110万円以上の負債があって金に困っていたと主張。また、事件後、40万円以上を使うなど急に金回りがよくなったことや、田中被告が使ったり持っていたりした札から平尾さんの指紋が検出されたほか、平尾さんの衣服やつめから田中被告のDNAが検出されたことなどを挙げた。一方弁護側は、田中被告が事件当日、平尾さん方を訪ねたのは午後4時半~5時ごろで、借金返済の猶予と両替を求めるためだったとした。この際、怒った平尾さんに顔を引っかかれたため、DNAが平尾さんのつめに残ったほか、タンス預金があって金には困っていなかったとして「田中被告の犯行を直接立証する証拠は皆無」と主張した。
男性4人、女性2人の裁判員と女性2人、男性1人の補充裁判員が選任され、判決は8月4日の予定。【水脇友輔】
毎日新聞 2010年7月28日 地方版