[Sona-Nyl previewstory 04]
「薔薇」
──両断する
──破砕する
──星の瞬きを散らして
巨大なものを振りおろす
あたしの指先
赤い手袋
あたしの指
魔女の指
指、触れるか触れないか
それなのに
こんなにも大きな、大きな、大きな
斧が──
ランバージャックの大斧が
たった今、死んでしまったはずの武器が
軋み、ひび割れて
圧壊してしまったはずの
彼の騎士
その、大きな、大きな、大斧を
ぐるりと
ぐるんと
あたしの指先が触れるだけで
持ってさえいないのに
ぐるりと
ぐるんと
おおげさなぐらいに旋回して
軌跡
閃光のように残して
黄金色に
斧、輝かせながら
かわいそうなくらいに、重く
目を背けたくなるくらいに、鋭く
重く
重く
重く
あいつに目掛けて
振り下ろされて、そして
──あいつを、殺す
──ううん、殺した。ばらばらに、砕いて
真正面から叩き割るのよ
真正面から叩き潰すのよ
両断
破砕
二等分断
そして
いくつも
いくつも
いくつも、ばらばらの、破片に変えて
忌まわしい風が
ばらばらに
眩いほどの白が
ばらばらに
むごいほどに引き裂かれて
けれど
一切の慈悲なく
一切の憂いなく
一切の赦しなく
あいつが死んでいく
あいつが砕けていく
砕けて
砕けて
砕けて
ねえ、もう、おまえなんか──
「おまえ」
「ここから」
「消えて、なくなれ」
無慈悲なくらいに
残酷に
無感情なくらいに
冷酷に
あたしは舞おう
あたしは踊ろう
この、白い破片がきらめく中で
あたしは舞おう
あたしが魔女よ
あたしが悪魔よ
こいつらを
白きものを
殺せるのなら
あたしが魔女よ
薔薇
魔女
黒色
黄金
薔薇の魔女の舞いを、さあ、見るがいい
あたしは
殺す
あたしは
潰す
あたしは
壊す
輝くほどに白きものを
ひとを、物言わぬ鋼に変えるものを
天使を──
殺す──
この、魔女のかたちで──
※プレビューストーリーは今回で終了です。ご覧いただきありがとうございました。
※23日からは詳報を公開して参りますので、引き続きお楽しみください(このページは詳報公開開始に合わせ消失します)。