2010年6月21日 21時4分 更新:6月21日 22時48分
菅直人首相は21日、首相官邸で記者会見し、消費税率の引き上げ時期について「少なくとも2年、3年、あるいはもう少しかかるのではないか」との見通しを示した。その上で「大きな税制改革をやる時にはまとまった段階で、国民に判断する機会を持ってもらうのが必要だ」と述べ、消費増税に踏み切る際は衆院解散・総選挙で、信を問う考えを明らかにした。
首相は与野党に呼び掛けている消費増税論議について「参院選が終わって本格的な議論をスタートさせたい。自民党から提案されている10%も一つの大きな参考にしていきたい」と指摘。10%との自らの発言については「(民主党の)公約と受け止めてもらって結構だ」と明言した。
税率引き上げに伴い低所得者の負担を軽減するために、「複数税率にはインボイス(食料品などの仕入れに含まれる消費税額を示す書類)の準備が必要。(税の)還付の形をとろうと思えば(国民の所得を把握する)番号の導入が必要だ」と指摘した。
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題を巡り、日米共同声明で8月末までに代替施設の位置や工法を専門家で決めるとしていることについて、「ここで決めたからあとは問答無用という意味合いにすることは考えていない」と強調、沖縄側の理解を引き続き求めていく意向を示した。【坂口裕彦、横田愛】
菅直人首相の会見要旨は以下の通り。
日本はバブル崩壊からの間、閉塞(へいそく)状態にあった。元気な日本を復活させることが、私の内閣がやらなければならない第一の取り組みだ。強い経済、強い財政、強い社会保障を一体として強い政治的リーダーシップのもとに実現していく。強い経済は6月18日に新成長戦略を閣議決定した。強い財政を作るには、無駄の削減、経済の成長に加え、税制の改革が必要だ。消費税は参院選後に本格的な議論をスタートさせたい。自民党から提案されている消費税率10%を一つの大きな参考にし、消費税の持つ逆進性(低所得者ほど負担が増すこと)を改めるために、複数税率、あるいは税の還付といった方式も合わせてしっかりと議論したい。
カナダで開かれるG8、G20サミット(首脳会議)では財政再建が大きな課題になるだろう。成長と財政再建を両立させるにはこういうやり方がある、日本はその道を取ろうとしているとしっかり表明し、他の国の参考にしていただければありがたい。米国、中国、ロシアとの個別会談も極めて重要だ。こうした国々との関係性をしっかりとしたものにする第一歩としてG8、G20に臨みたい。
--日米首脳会談で、米軍普天間飛行場の移設問題ではどのようなメッセージを伝えるか。
日米合意はしっかり踏まえて対応する。沖縄の負担軽減にも、政府として取り組むと同時に、場合によっては米国にも協力をいただきたいとの基本的立場で臨みたい。
--普天間問題の日米共同声明で8月末までに代替施設の位置や工法を決定するとあるが、厳格に守るか。
沖縄の皆さんとの話し合いをこれから本格的に始めなければならない。そのスタートが先日の仲井真(弘多)知事との会談や23日の沖縄訪問だと思っている。8月末までに専門家の議論を完了する趣旨のことが(日米共同声明の中に)あるのはよく分かっており、さらに(その後の)2プラス2(日米安全保障協議委員会)の日程も出ているが、ここで決めたら問答無用という意味合いにすることは考えていない。進め方は米側、沖縄の皆さんとしっかり話し合っていきたい。普天間の移設問題は非常に難しい課題であることを十分認識しながら、同時並行で沖縄の負担軽減になる問題も進めていきたい。
--消費税率に関し自民党が掲げた10%を参考にするというのは民主党の公約か。国民新党が反発し連立離脱もあり得るとしているが、どう対応するか。
公約と受け止めていただいて結構だが、あくまでこういう方向で議論を始めたいということだ。また、選挙のマニフェストはそれぞれの党が独自性をこれまでも出してきた。選挙における主張が異なることと政権離脱は若干の違いがあると思っている。
--消費税は早ければいつから増税となるか。
逆進性を緩和するために複数税率を入れるとなるとインボイス(税額明記伝票)の準備が必要で、(税の)還付の形を取る場合は番号(納税者番号制度)の導入が必要になる。少なくとも2~3年、あるいはもう少しかかるのではないか。
--消費税率は最終的に何%ぐらいまで国民は覚悟すべきか。
私は消費税を引き上げることがいいと言っているのではなく、前提になっている現実をぜひ国民にも理解いただきたい。今は税金でなく赤字国債で多くの社会保障の費用がまかなわれている。その結果、GDP(国内総生産)比で180%を超える債務残高が累積している。この状態で持続可能性があるのかということだ。新しいものをどんどん買うために(税率を)上げたいと申し上げているのではない。認識を共有できる皆さんとしっかり議論するための一つの材料として、自民党から提案された(税率)10%を一つの参考にする。
--来年度予算の編成方針は。消費税引き上げの際、国民に信を問うか。
新成長戦略を組み上げたので、どの分野に財政投入すればどういう成長が見込めるか、成長を大きな柱に置いて予算編成に当たりたい。基本的には大きな税制改革をやる時は、まとまった段階で国民の皆さんに判断する機会を持ってもらうことは必要だろうと思う。
--鳩山前政権は地域主権改革を1丁目1番地と位置づけていたが、菅内閣では何丁目何番地か。
全く変わらない重要性で取り組む。明日の閣議で一定の中間的な方向性を出す。
--参院選マニフェストで最も思い入れの強い部分は。
元気な日本を復活させるために、強い経済、強い財政、強い社会保障を政治的リーダーシップで実現するということだ。
--前回衆院選のマニフェストには冤罪(えんざい)防止のための取り調べ過程の可視化があったが、参院選マニフェストで消えたのはなぜか。
すべて載せているわけでないので、必ずしも考えが変わったということではない。