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遊びあふれるまちへ:/上 「子どもが主役」貫く

 ◇「冒険遊び場」全国に265カ所 地域が活動支え

 「自分の責任で自由に遊ぶ」をモットーに地域住民が主体となって運営する「冒険遊び場」が、この夏初めて「全国一斉開催の日」を企画した。冒険遊び場は現在265カ所を数えるが、その存在を知らない人も多い。危なくても、汚くても、子どもがやりたいと思うことの大切さを訴え、外遊びの楽しさを実感してもらうのが目的で、約半数の遊び場が29日を中心に一斉開催する。「もっともっともっと外遊び!」を合言葉に、子どもの笑い声が響き渡る一日にしたいと願っている。【吉野理佳】

 「冒険遊び場」はプレーパークとも呼ばれ、欧州各地の遊び場を訪ねた東京都世田谷区の夫妻が呼びかけて75年、夏休み限定の「経堂子ども天国」を開いたのが始まり。4年後、同区代田4に初めて常設の「羽根木プレーパーク」ができた。

 誕生から31年を祝った今年7月、子どもたちは35度を超える猛暑の中を駆け回っていた。木と木の間に張られたロープを渡り、木の囲いに青いシートを敷いた手作りプールに飛び込む。かまどに火をおこし豚肉とニンニク炒めを作る親子らの横で、爆竹の音も響く。

 週末は1000人もの子どもたちが訪れる。30年以上続いてきたのは「地域の人が支えてくれているから」とプレーリーダーの吉田貴文さんは話す。

 プレーリーダーは常設の遊び場で子どもとともに遊び、子どもの遊びを保障するためのあらゆる役割を果たす専門職だ。吉田さんは「何か問題があった時に逃げないこと。小さな問題にも丁寧に対応すれば、周りの人も認めてくれる」と言う。

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 全国の遊び場活動を支援するNPO法人「日本冒険遊び場づくり協会」(同区)によると、遊び場を運営する団体は初めて全国研究集会を開いた98年には57団体だったが、その後12年間で5倍近くに増え、行政の支援、連携も進んだ。

 横浜市は、市内の9団体と運営市民が02年に設立したNPO法人「横浜にプレイパークを創(つく)ろうネットワーク」(YPCネットワーク)の働きかけに応え、06~10年度の中期計画に「プレイパークの推進」を盛り込んだ。10年度末までに18カ所を目標に掲げ、5カ年で1億3280万円の補助金をYPCに交付し、プレーリーダーの人件費などを支援してきた。

 また計画に先立つ04年には「横浜市プレイパーク運営支援要綱」を策定。活動団体を登録して覚書を結び、穴を掘ったり、火を使ったり、ウオータースライダーのような遊具を設置しやすくした。

 同市内のプレーパークは18区のうち13区に14カ所を数えるまでになった。YPCのプレーリーダーで「全国一斉開催の日」の事務局も務める山田久美子さんは「五つの区にはまだないが、その地域、地域で運営する人を見つけるのが難しい。プレーパークのないところに出前をするなど種をまいて、やりたい、おもしろいと思ってくれる人を増やしたい」と話す。

 現行の中期計画は今年度で終わるが、市放課後児童育成課の持田敏担当課長は「今後も小さな公園で試しにやってみて、すそ野を広げていくなど、多くの市民にプレーパークを知る機会を持ってもらいたい」と話す。

 30年前、羽根木プレーパークで日本初のプレーリーダーになった天野秀昭さん(現・大正大教授)は「全国一斉開催の日」の実行委員の一人だ。天野さんは今の子どもたちの「生きている実感の希薄さ」を危惧(きぐ)する。「ゲームなど消費される遊びばかりで、子ども自身が生み出す遊びがない。大人がさせたいことではなく、子どもがやってみたいと思うこと、子どもが主役になる遊びが損なわれているから。大人の期待に応えるようにばかり生きていたら、自分の人生を生きられなくなる」

 天野さんは「子どもの五感をフル稼働して、自分で生み出す外遊びをすれば、エネルギーがいっぱい戻ってくる。命が輝いてくる。冒険遊び場をもっと多くの人に知ってもらいたい」と一斉開催の意義を話している。

 ◇29日中心に117カ所一斉開催

 「冒険遊び場全国一斉開催の日」には、27都道府県の計117カ所が呼びかけに応えて遊び場を開く。8月29日午前10時からが中心だが、場所によって28日、30日の場合がある。誰でも遊びに行ける。

 禁止事項をできる限りなくし、自由に遊ぶのが特徴のため、当日も特別なプログラムがあるわけではないが、実行委員会は「もっともっともっと外遊び!」の合言葉を使ったオブジェの制作を参加団体に呼びかけている。横断幕に書いても、木に刻んでも、土に掘っても、どんな形でもいいから現場で作ってみよう、との提案。

 開催場所・日時の詳細は「日本冒険遊び場づくり協会」のホームページ(http://www.ipa-japan.org/asobiba/)で。トップページ→News最新情報へ進む。23日以降(25日は休み)は電話(03・5430・1060)でも問い合わせが可能。

毎日新聞 2010年8月19日 東京朝刊

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