梅田・北ヤードの先行開発区域。9月以降の生コン調達のめどが立っていない=大阪市北区、本社ヘリから、伊藤恵里奈撮影
ストの影響は大きい。固まりやすい生コンは工場でセメントと砕石と砂を水で混ぜてから90分以内の使用が目安。「代わりに神戸や京都から持ってくるのは不可能」(竹中工務店)なためだ。
大阪では現在、2013年の完成を目指す大阪駅北側の梅田北ヤードの先行開発区域や、14年完成予定の近畿日本鉄道阿部野橋ターミナルビルの建て替えといった全国屈指の大規模プロジェクトが進行中で、ストの長期化に気をもむ関係者は多い。
それでも、8月に入って梅田北ヤードなど生コンの搬入が再開された現場も目立ち始めた。大阪広域協組の役員によると、19日の労使協議では要求額を千数百円下回る額で妥協することを確認。要求に応じるゼネコンに納入を再開し、今月の出荷量は通常の6割超まで戻る見通しという。
ただ、複数の大手ゼネコンは「状況は変わらず、譲歩していない」と説明。梅田北ヤードの関係者も「搬入は8月末までの緊急対応にとどまる」としており、にらみ合いはさらに続く可能性もある。(佐藤亜季、山村哲史)
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今回の対立の背景には、生コンの需要量の減少と業界の構造的な問題がある。全国生コンクリート工業組合連合会がまとめた全国の出荷量は、2009年度が前年度比15%減の8603万立方メートルで、ピークだった1990年度の半分以下に落ち込んでいる。
公共事業の抑制で縮小する建設業界でも、大企業が力を持つゼネコンやセメントメーカーに比べ、生コン業界は零細業者が大多数。同業者が集まって価格交渉力を強めるための協同組合が「統一価格」を要求しても、実際の取引価格は案件ごとの交渉で下げられる場合が多い。今回は、組織率が高い労組と協調して取引先と正面から対抗した形だ。