【ソウル=牧野愛博】韓国軍合同参謀本部によれば、朝鮮半島西側の黄海で9日夕、北朝鮮軍が海上の軍事境界線にあたる北方限界線(NLL)付近に向け、陸上に設けた海岸砲を130発余り発射した。同日まで付近の海域などで行われた韓国軍の軍事演習への対抗措置とみられる。
同本部は砲弾はすべてNLLの北側海域に落下し、韓国軍に被害はなかったとしているが、一部が南側に落ちたという情報もある。3月には、同海域付近で、韓国哨戒艦沈没事件が発生している。
北朝鮮軍は、沈没事件を受けて5日から9日まで行われた韓国軍の演習に強く反発し、「強力な物理的打撃によって鎮圧する」と警告。7日付の朝鮮労働党機関紙、労働新聞は「われわれの警告は決して空言ではない」と強調していた。
ただ、海岸砲による砲撃は、NLLを越えない範囲で行われており、主に北朝鮮軍の威信を保つ目的から出た示威行動とみられる。韓国軍によれば、9日現在、北朝鮮軍にその他の通常と異なる動きは確認できないという。
また、在韓国連軍は9日、北朝鮮軍との間で、沈没事件の処理を巡る4回目の大佐級実務協議を10日に板門店で行うと発表した。国連軍は事件が朝鮮戦争の休戦協定に違反したとの前提で双方が意見を交換する「共同評価団」の結成を提案。北朝鮮軍は、独自の「検閲団」の韓国派遣を主張しているが、対話の継続には応じた。