安くて旨い!福岡市民の台所、博多柳橋連合市場
生きのいい魚が食べられる、鮮魚店の食堂
福岡市民の台所と呼ばれる博多柳橋連合市場は、都心の天神から南へ1キロ余り、那珂川のほとりに、鮮魚、青果、乾物、精肉など47の店が軒を連ねる。吉田鮮魚店はこの市場に三つの店舗を構え、そのうちの一つが食堂も兼ねている。創業は1965年。大将の吉田精一さん(73)が、この市場の鮮魚店で15年間、奉公した後に独立した。食堂を開いたのは10年前だが、店頭に並ぶ新鮮な魚を食べさせてくれる店として、博多観光の人気スポットになりつつある。
フグの刺し身の皿や握りずしのパックなどが並んだ店頭を見ただけでは、食堂とは気づかない。奥に向かう狭い通路の壁に献立表がはられており、客は好みの料理を選び、代金を前払いした後、奥の階段を上って、2階の客室へ行く。お世辞にもきれいな店とは言えないが、そこがいかにも市場の中の食堂といった趣だ。
人気の献立は、日替わり定食と海鮮丼。定食は、焼き魚か煮魚の主菜に小鉢、ごはん、みそ汁、漬けものがついて650円。海鮮丼はタイやカンパチ、イカなどを盛ったスタンダードが650円。これにウニ、イクラを足したデラックスは1400円だ。昼食時には、32人分の席が、近辺のサラリーマンでいっぱいになる。マグロやホタテ貝の煮付け、アジの空揚げが皿に盛って置いてあるのは、元が鮮魚店だからこそのサービスである。
生きのいい魚で、ゆっくり飲みたいという人は、午後も2時を過ぎたころをおすすめしたい。「従業員がやってくれるから、私がしゃしゃり出てもじゃまになるだけ。私はお客さんとおしゃべりするのが仕事」と言う吉田さんの昔話を聞きながら昼酒を楽しむひと時は、この都会でめったに味わえないぜいたくである。
オコゼの姿づくり、100グラム500円!
10メートルほど離れた鮮魚の店舗で、魚を見繕い、「これ、切って、食堂に持ってきて」と頼めば、店頭の価格で、食堂で食べられる。常連客のそんな作法をまねて、私も大振りのオコゼを「姿づくりで」と所望した。100グラム500円で、380グラム。皮の湯引きもついて、締めて1900円。安い! 紅葉おろしをたっぷり使って、ポン酢でいただく。ここは、日本酒だろう。徳利はない。陶器のカップに注いだ1合をぬる燗にしてもらう。この飾りのなさも市場の食堂らしくて、好ましい。
博多の名物、アラの刺し身は2500円、釣りアジの刺し身は800円。これも博多名物のゴマサバは800円。これからが旬のトラフグの刺し身も1000円と、くり返すようだが、とにかく安い。煮魚の好きな人には、赤ムツの煮付け定食1500円がある。体長が優に25センチはある大振りの赤ムツの白身は、脂が乗っていて、しかも淡泊。無論、酒の肴としても絶品である。
吉田さんが奉公していたころ、休みが少なく、正月も元日の朝まで働き、その足で理髪店に行き、順番待ちをしたという。「今は幸福。なんかなし(とにかく)、何でも感謝せにゃいかんとですよ」。そんな感謝の心が、良心的な値段に込められている。
(西部本社編集委員・小林清人)
福岡市中央区春吉1−2−2
電話 092−761−1811
営業時間 午前11時〜午後4時
定休日 日曜日
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