ブラジルとブラジルのマーケティングあれこれ

ブラジルで日々おこることをマーケッターの目で解説するページ。広告業界の情報も。筆者はブラジル在住22年目のマーケッター。

大統領選挙の政見放送が始まった

2010-08-19 03:17:12 | 政治
セーラは保健大臣時代の実績を全面にだし、医療・健康政策にほとんど終始した。現在のルーラへの高支持率（70％を超える）では、政府批判は機能しないし、有権者に彼がいえることはこれしかないだろう。

真面目は真面目とはいえ、ユーザー、市民の証言（つまり賛辞）を積み重ね、医療の現場に自分も登場するというオーソドックスなスタイルだった。映像として一定のレベルには達しているが、クリエイティブな驚きはなかった。明らかにこれまでの枠からでない、「普通」のフィルムだ。大統領候補というより、保健大臣候補のプロモーションフィルムかな。

ジルマのフィルムは予想の通り、ルーラのイメージを自分に結びつけることに力を注いだ内容だ。ルーラも少なからぬ回数登場し、喋りまくった。

ブラジル全体を扱って、雄大なイメージ、今のブラジル力強さを見事に見せている。勢いのあるBGMにのせて、北から南のプロジェクトの現場を、クリエイティブな映像で表現しているし、セリフの喋り方は、明らかにリーダーとしてのイメージを意識している。迫力と自信に溢れていいて、これは演技指導した演出家の成功だ。アマゾンにいるルーラとのかけ合いのテンポのよさは、きちんと計算された効果、つまり二人の一体感を伝えることに成功している。

フィルムとしてのできは完全にジルマの方が上で、これでもう選挙の結果は決まったかもしれない。誰もどの候補が何を喋ったなんて覚えない。音と絵がどれだけ印象に残るか、そのイメージがメッセージだ。

昼はまた違ったバージョンが流れたのだけど、これからそれぞれの陣営は相手のフィルム、世論の変化、マスコミの論調を見ながら調整して毎日、違うバージョンを出していくことになる。製作スタッフは体力だけが勝負だろうね。

セーラのフィルム

ジルマのフィルム

政見放送について

各候補者のプロフィールなど
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今日からテレビで大統領選挙の政見放送

2010-08-18 01:23:00 | 政治
今日から大統領選挙と統一選挙（上院の半分、下院、州知事、州議会）の政見放送がはじまる。これはブラジルのすべてのテレビ、ラジオで同時放送されるもので、一日あたり2時間10分。日曜日を除く毎日放送される。放送局によるこのスペースの提供は義務となっている。義務だけど、代償はあり広告の定価の80％を法人税から割り引くことができる。その金額が今回の選挙では4億8000万ドルにのぼり、4年前の1億3000万ドルから3.5倍以上に増加している。広告枠の定価は需要と供給の関係で、まぁ大体インフレ以上に改定さっるから、それの影響もあるだろうが、この膨張の本当の原因は僕には不明。

テレビの放映時間は午後1時からと夜の8時30分から。昼はともかく夜は完全にプライムタイムだ。この間の広告収入を逃すのはテレビ局としては痛いところで、それを政府がある程度補償するとうことだが、これは局の大小によってとらえ方がちがうだろう。視聴率の高い番組を持たないところは、収入が保証されることになるから。

それにしてもブラジル国民は毎日、この選挙放送を見させられるか、スィッチを切ることになる。しかし、逃げ道もある。衛星、ケーブルの有料チャンネルに切り替えることだ。有料チャンネルでは政見放送は放送されない。やっぱり選挙演説を聞いても面白くない。

しかし、候補者の方は、これに賭けている。どの候補も選挙マーケティング担当のプロを雇って勝負しているのだが（高いギャラをとっていることに加え、候補者が当選したときは政府系の企業や政府そのもののキャンペーンのアカウントが転がり込むことが多い）、彼らの主な腕の見せ所は、この政見放送の良し悪しだ。またお金のかけ方も桁違いで、それぞれの陣営の運動費の半分くらいがこのフィルムの製作に投入されことになる。ジルマの場合は、1700万ドル、セーラはその倍の3400万ドルと報道されている。選挙は見えないお金が動くから、実際はそれ以上の金額となっていることが想像される。

さて劣勢のセーラがどのように巻き返しをはかるか？　どういうイメージを作ろうとしているのか？
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ちょっと大統領選挙を整理しておこう

2010-08-17 06:40:14 | 政治
10月3日は大統領選挙の投票日だ。現大統領のルーラ指名のジルマ（元官房長官）とセーラ（元サンパウロ州知事）、そしてマリーナ（緑の党で元ルーラ政権の環境大臣）がプレイヤーだが、土曜日の新聞で発表された世論調査（Datafolha）では、ジルマがセーラを突き放し、第一次投票で決める可能性がでてきた。

3月末の時点ではセーラがジルマに10％の差をつけて優勢だったが、5月半ばに均衡し、それが7月までつづいていた。それが土曜日の数字では、41％と33％大幅に逆転した。得票数が無効票を除いた有効投票数の50％を超えると第一次投票で決定、それ以下だと1位と2位の候補が第二次投票で一騎打ちというのがルール。今回の調査ではジルマは有効票の47％をとっており、調査の誤差2％というから、第一次投票で決まるかもしれない。

簡単に3人のキャリアを見てみよう。

【ジルマ】

ジルマは62歳。ミナスジェライス州の比較的裕福な家に生まれた。軍事政権時代に左翼の武装グループに所属して逮捕され約3年間懲役していて、この間、拷問にも合っている。釈放後はポルトアレグレに移り、同じグループで活動家だった夫ともに、政治に参加、ポルトアレグレ市の財務局長を皮切りに政府内の実務家の道を歩みはじめている。ルーラが大統領に当選後、リオグランデドスール州の鉱山エネルギー局局長時代の手腕を認められ、連邦政府の鉱山エネルギー大臣、そしてPT内の汚職スキャンダルで現役の官房長官であるジルセウが追放されたと同時に同ポストにつく。そして、ルーラの後継者に抜擢されて立候補。

左翼運動というイメージはつきまとっているが、どちらかというと優秀な実務家というイメージが強く、リオグランデドスール時代の電力行政の成功が連邦政府への道を開いたといえる。また全国規模のインフラ整備を民間と政府で進行するというPACプロジェクトの立案者であり、その実績を選挙運動の材料に使っている。しかし、選挙運動最大の武器は好景気をバックに圧倒的な支持率を誇るルーラ（70％を超える）の後継者、このままうまくやってくれるという期待感を票に結びつけるのが選挙マーケティングの戦略となっている。

【セーラ】

セーラはサンパウロ市生まれで68歳。イタリア移民の父親と、イタリア系二世の母親との間に生まれ、市内の旧工業地帯のモッカで育つ。父親は市営市場で野菜、フルーツの販売をしていてほとんど文盲だったという。名門のサンパウロ州立大学の工学部に入学してから学生運動の闘士として頭角を表し、1962年に全学連の委員長となり、政治の世界に顔をだすようになる。これによって1964年以降、軍事政権に睨まれ、国外に亡命することになる。亡命先はボリビア、チリ、米国で、亡命は1977年まで14年間にわたっている。チリでは経済学を専攻して修士号、米国では博士号を取得して、大学教授としてのキャリアももつ。

1977年に帰国してからは軍政時代の野党の運動に参画して、サンパウロ州の企画局局長、その後州議会議員、連邦政府下院、上院議員と政治家としてのキャリアを蓄積。フェルナンド・カルドーゾ（チリ時代を共にした）政権時代は企画大臣、保健大臣に就任、とくに保健大臣としてはジェネリック薬品の導入とエイズ対策で評価されている。

2002年にルーラと大統領選挙を争うが落選、2004年にサンパウロ市長に当選、2006年には市長を辞任して州知事に立候補、当選。そして知事を辞任して、今回の大統領選挙に立候補と、完全に政治一色の人生を歩んでいる。そして、この「政治一色」というのが売り物で、ジルマと対比して政治家としてベテランというイメージをだした選挙運動を展開している。しかし、圧倒的な人気を誇るルーラ政権への批判は「満足している」国民の反発を買うこことになるのがわかっているから、「引き続き発展させるには自分の方が相応しい」というメッセージをだしている。

【マリーナ】

この人の経歴も一筋縄でいかない。52歳でアマゾンのアクレ州のゴム採集労働者の子供として生まれる。15歳のときに病気の療養のために州都のリオブランコへでるが、このときまで文盲だったとか。識字教育からはじめて、アクレ連邦大学の歴史学科に入学、卒業後は公立高校の教師。そのころにゴム採集労働者の組織化とエコロジー運動のリーダだったシーコメンデス（後に暗殺される）と知り合い、全国規模の労働組合であるCUT（統一労組）に参加、以後、市会議員、州議会議員、連邦上院議員といった政治家として表舞台にでる（PT所属）。一貫して環境保護が政治テーマで、ルーラ政権では環境大臣に就任、政府の大型プロジェクトとその環境ライセンスの問題で、当時、鉱山エネルギー大臣だったジルマと衝突を繰り返してきた。開発したいジルマと環境保護を盾に慎重な態度をとるマリーナは犬猿の仲という感じだったが、結局ルーラがジルマをとり辞任、ついでにPTも脱退して緑の党に移った。

この人は印象はいいが、テーマが環境に限られ、国政の舵取り役としてはどうかという評価だ。しかし、副大統領候補にNaturaというブラジル最大の化粧品メーカーのオーナー経営者を担ぎだして、驚かせた。選挙資金のベースはこの人の拠出金だろう。エコロジーをブランドイメージにしている同社としては、もっとも効果的なマーケティングかもしれない。マリーナにとっても経営者を副大統領にもつということは、財界との調和をとった安定した経済政策を取るというイメージにつながる。因みにルーラの副大統領は、COTEMINASという繊維会社のオーナー経営者だった人物である。

マリーナの支持率は10％ぐらいで、まぁ当選の可能性はないが、第二次投票にもつれ込んだ場合、どちらにつくかという駆け引きが行われるから、影響力は大きい。反対にいえば第一次投票で決着が着けば、ジルマは誰にも借りを作らないので、舵取りが楽になるといえる。

まず3人のうち2人が女性だ。ブラジルでは女性大統領はまだでていない。しかし、それがあんまり話題にならないのは、エリート層では民間も政府も男女同権が進んでいるということの証かもしれない。

そして3人とも保守ではなく（もう左ともいえないけど）、反軍政活動の中でキャリアを積んできている。今のルーラも、そしてその前のカルドーゾも同様で、これがコーロルが罷免された後の現代ブラジルの政治の特徴といえる。その「元左」が資本主義世界でどうどうとゲームをしているのだ。

ルーラが2002年に初めて当選する直前は、国営化などをするのではないかという不安が国内の財界と国際金融機関の間でおこり、ドルが今の相場の倍以上に跳ね上がったが、今回はそうこともない。結局、誰が政権を担当してもベネズエラやボリビアのようなことにはならない、というのがはっきりしているのだろう。ブラジルは、もうグロバリゼーションで世界のプレイヤーになってしまったので、後戻りはない。

ただ8年も同じ人物と党が政権を担当すると、それでなくてもひどい汚職がずいぶん蓄積しているだろうから、このあたりでリセットする方がいいのでは、と僕個人は思っているけど。

それにしてもこの3人のキャリアを見ていて、日本の政治家というのが、何か子供のように感じられるのは僕だけだろうか？　
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JALはブラジルでのブランドロイヤリティを捨てていいのか？

2010-08-15 05:55:16 | マーケティング
9月に日本航空の成田・サンパウロ線が廃止されるのだけど、その存続を求める署名運動が行われて、約1万2000人分の署名が、日本の国土交通省に提出されたとか。このニュース、僕の知る限り日経、産経、時事のサイトにでていた。デジタル版だけでなく紙にもでたのだろうと思う。マスコミへの根回しを上手にやった結果と思うがPR効果は十分だ。日本のマスコミとしても、JALネタは何かと使いやすいのだろう。

日経
産経
時事

日本航空のサンパウロ線は、1950年代に移民の里帰りのためのチャーター便ではじまり、移民70年祭の1978年から定期便を開始、出稼ぎがピークだった1990年代には名古屋便も飛ばしている。

ヴァリグが撤退売却された後、ブラジルと日本を結ぶ直行便としては唯一となっていた。時間も約24時間で最短。大韓航空や米国系の航空会社やヨーロッパ、アラブ系の航空会社でも行けるが、値段は高めだし、経由地でとんでもない時間、待たされる。まぁ僕らが日本へ行くのに使いやすい航空会社だった。

しかし、今回の署名運動はそういう利便性ではなく、もっと心情的なものが底にある。昔、海外旅行をしていて外国の空港でJAL機体を見たら日本が懐かしくなったといったことを聞かされたが、それといくぶん似たような心情だ。日本と遠く離れて暮らしながらも、日本が支えで、片思いに近い形で思いをかけている移民にとって日本航空というのは、たとえ利用することはなくても、日本のシンボルの一つとして機能してきたといえる。

日系社会のJALに対する思いはブラジルの日本語新聞が繰り返し書いている。

サンパウロ新聞��
サンパウロ��

JALもそれに応える、あるいは広報に利用することを目的に落語や映画の上映会などを主催してきたし、最近では2008年に就航30周年と移民百周年を記念してきには、日系の高齢者などを招待しての遊覧飛行を実施している。（朝日）

ここ数年、JALの問題についてはさまざまブラジルに伝えられたが（NHKの国際放送をみんな見ている）、移民の同社に対するブランドロイヤリティはまったく揺るいでいないことは、今回の署名運動でよくわかる。実際、このロイヤリティ半端じゃないよ、普通の企業がこれを得るためにキャンペーンしたらどれだけの広告投資が必要か。

このユーザーとそれの母体となるコミュニティの片思いともいえる好感を、売り上げというか、利益（だいたい満杯だ）に繋げてこれなかった経営手腕に問題があると思う。

企業再生支援機構とやらは、数字を見ながらリストラ、路線廃止の判断をしているのであり、彼らも素人ではないのは当然だが、これまで気づきもしなかったブランド価値が地球の裏側にあったのである。それを切り捨ているというのは、それはまたお金の問題で損失も計算できるのではないだろうか。

稲盛和夫会長が「国際線のないはJALはイメージできない」と発言しているが、これも同じ問題だと思う、数字だけで見て、あるいはブランド価値を数字で見ることができずに切り捨てていると、イメージという付加価値をつけることができず、原価販売に近い商売になり、それはそれで経営を悪化させる。
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ブラジルへの留学生が急増

2010-08-10 06:39:37 | 経済
外国からブラジルに来る留学生が急増しているという。
連邦警察の数字によると、2006年の934人から2009年の2278人に倍以上の増加だ。今年はもっと増えているだろう。

Folha（2010. 08. 09）の記事にはFGVの例がでていた。FGVはブラジルでもっとも有名な経営・経済大学で、授業料も高いので慶応や早稲田のビジネススクールだけが独立したものというイメージかもしれない。同校は世界の28のビジネススクールとパートナーシップを結んでいて、それらの学校からマスターコースの学生を受け入れるプログラムをもっているという。そのプログラムでは留学生は最低半期の授業を受けることになる。USP（サンパウロ州立大学）、マッケンジーなども同様のコースがあるという。

これまでの流れでいうブラジルの学生は外国で勉強することが夢で、調べてみると2009年に米国だけで8767人が留学している。僕の知り合いでも、子供を外国に留学させている人が少なからずいる。それらの留学生の少なくない数が、現地に残り就職してきた。ウォール・ストリートの金融マンにはブラジル人エリートも多い。

その逆の流れがおきてきているということ。記事によるとブラジルを「チャンスの国」と見る学生もあり、仕事探しも眼中にあるようだ。たしかにポルトガル語をマスターして（修士課程をするんだから覚えるだろう）、専門ができれば、レアル高ということもあり、ブラジルのサラリーは魅力的なものになる可能性はある。

FGVのプログラムの歓迎合宿はパラチだったようで、ヨットで楽しそうに遊んでいる写真がでている。やっぱりエリートはエリートらしい。
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都道府県
中南米
自己紹介
サンパウロで広告会社を経営。 ブラジル生活も22年目に突入。 質問アリです。fukui-br●mail.goo.ne.jpまでお願いします。わかる範囲でお答えします。

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