米国防総省が中国軍事動向に関する年次報告を公表した。中国への懸念が随所にうかがえる内容だが、米国には、脅威をあおって自らの軍事力を維持・強化する意図があるのではないか。そんな疑問がぬぐえない。
そもそも米国が個別の国に限定して軍事力に関する報告書を定期的にまとめるのは、冷戦当時のソ連以外はほとんどない。報告書をまとめること自体に、中国を「仮想敵国」とする意図がにじむ。
毎回、中国政府は反発するが、当然だろう。仮に中国が「米国の軍事動向」を分析して発表すれば米国が反発するのは間違いない。
この種の発表のたびに感じることがある。米国は常に、自らを棚に上げているという点だ。今回の報告は、中国の軍事費が12兆8千億円以上に達していると推計したが、64兆円を超す国防予算を支出し、全世界の軍事費の半分近くを投じる米国が、他国の軍事費膨張を論難する資格があるだろうか。
中国に空母建造の意思があり、近々、最初の空母を持つ、とも警戒しているが、米国は正規空母だけで既に11隻ある。強襲揚陸艦も含めるとさらに増える。他国を批判する前に、自国の軍縮を進めるのが筋であろう。
もちろん中国の軍事費増加は容認できない。近年、沖縄近海でも活動を増やし、4月には事前通告なしに大規模訓練を行うなどしている。圧倒的な米軍兵力を不安視するゆえかもしれないが、中国も軍事活動を沈静化すべきだ。
中国と米国が双方で警戒し、緊張を高めていけば、いずれ抜き差しならない局面になりかねない。こんな時こそ外交の出番だろう。
自らの近隣での出来事である。日本も、尖閣に関する米国の言動に一喜一憂している場合ではない。米国に全権委任したかのような依存外交から脱し、主体的に外交を構築すべきだ。
冷戦時代、あれほど対立していた米国とロシアでさえ、核軍縮交渉を始める時代だ。東アジアで雪解けをしていけない理由はない。米国と中国は軍拡に歯止めをかけ、本格的な軍縮交渉を始めてもらいたい。
日本も手をこまねくのではなく、むしろ積極的に軍縮を仲介すべきだ。軍拡は経済政策や社会保障を犠牲にする。米国にとっても中国にとっても不毛だ。そのように理を説き、打開に汗を流すべきだ。
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