口蹄疫ウイルスの潜伏期間は牛では10日間程度とされ、動物衛生研究所への検査依頼が早ければ、早期に被害を食い止められた可能性もある。国の疫学調査チームは、4月20日の段階で、少なくとも10農場に感染が広がっていた可能性を指摘している。
国や県の防疫マニュアルには、この10年前の症例は具体的に記載されていない。
02年6月に農林水産省畜産部長名で通知した「防疫要領」では、付則で「(牛では)水疱は発病後6〜8時間以内に現れ、通常24時間以内に破裂する」などと典型的な症例を示しているが、例外については「軽度の症状しか示さないことがある」とするにとどめている。04年に農水大臣名で出した「防疫指針」でも症状について具体的に触れていない。
県の「防疫マニュアル」も、症状は典型的なものだけを紹介し、国の「防疫要領」を併せて記載するにとどめている。
青木獣医師は「マニュアルで、10年前の非典型な症状も周知されていれば、民間獣医師も家畜保健衛生所もより慎重な判断ができ、確認も早かったかもしれない」と話す。
東国原英夫知事は「どれくらいの症状で口蹄疫を疑うのか、新たな届け出基準づくりをやらないといけない」としており、県は防疫マニュアルを見直し、農家や獣医師に早期の発見、届け出を促す考えだ。(石田一光、野崎健太)