宮崎県で猛威を振るった家畜の伝染病・口蹄疫(こうていえき)で、今回の初期段階や10年前の発生時にはいずれも、牛の口の中の水疱(すいほう)など典型的な症状が見られなかったことがわかった。国や県の防疫マニュアルには、10年前の症例についてほとんど記載がなく、今回の確認遅れにつながったとの指摘が関係者から出ている。県はマニュアルの診断基準の見直しの検討を始めた。
2000年の発生は国内では92年ぶりだった。1例目の牛を診察した宮崎市の舛田利弘獣医師(66)によると、最初に異常が見つかった1頭は発熱と食欲不振だけで、水疱はなかった。その数日後に同じ農場の牛10頭すべてに同じような症状が広がり、県の家畜保健衛生所に届け出て、検査で口蹄疫と確認された。このときは、同県と北海道で計4例の感染が分かり、740頭が殺処分された。
国内では10年ぶりの発生となった今回、最初に感染が確認された同県都農町の牛を診察した青木淳一獣医師(38)によると、4月7日の初診では1頭に発熱と食欲不振、わずかな流涎(りゅうぜん=よだれ)があったが、口の中や蹄(ひづめ)に水疱は認められなかった。2日後には、口の中に軽い潰瘍(かいよう)が見られたが、周囲の牛への広がりがないことから、当初は感染力の強い口蹄疫を疑わなかった。
その後、他の牛にも症状が現れ、青木獣医師は家畜保健衛生所に届けたが、検査に来た衛生所も当初は口蹄疫ではないと判断していた。他の感染症の検査がすべて陰性だったため、念のために動物衛生研究所に遺伝子(PCR)検査を依頼。結局、口蹄疫と判明したのは、初診から約2週間後の4月20日だった。