社説

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社説:民主代表選 政策と結束固める場に

 9月14日の代表選に向け、民主党の各グループの研修会が始まった。

 菅直人首相を再選するのか、それとも別の人に代えるのか、その場合どことくっつけば過半数を制するのか、サポーター票はどこが有利なのか、それと関連して新しい執行部の布陣はどうするのか、合従連衡を狙っての党内政局がスタートする。

 ここで勘違いしてほしくないことが二つある。一つは、与党、政権政党としての代表選だ、ということである。代表交代は、一国の首相の首をすげ替えることを意味する。この内外重要な局面で、党内事情により首相を在任3カ月で使い捨てにするのであればそれだけで公党としての責任は免れない。しかも、前任者が9カ月で退陣した後だ。人材不足と選出ミスの不明を恥じてただちに下野すべきである。どうしても代えざるを得ない、というのであれば、次に選ばれた人物はただちに解散・総選挙で国民の信を問うべきだろう。

 与党の党首を選ぶということは、それほど厳しいことである。すぐさま世界を相手に国の安危を背負わねばならない。そこは野党気分では困る。自民党が長期政権下で2、3年ごとに総裁選を実施していたのは、政権交代が起こりにくい中選挙区制ゆえに首相ポストを派閥間でたらい回しする、という疑似交代の知恵だった。小選挙区主体の制度になった今は、首相の交代は、衆院選での国民の投票で実現すべきだろう。当然のことながら代表任期を機械的に2年とする党規約も変えるべきだ。

 もう一つは、菅VS小沢一郎前幹事長による数の争いではなく、あくまで政策が肝心だということだ。1年前なぜ民主党政権が誕生したのか、その原点を思い起こすべきだ。政治主導による新しい政策実現を国民は新政権に託したのではないか。

 それには基本政策を鍛え直すことだ。まずは、あの時のマニフェストを今一度精査し財源との兼ね合いで優先順位をもう一回付け直すこと。次に、参院選で主張した消費税上げを軸とした強い経済・社会保障・財政戦略を再構築し、制度設計、工程表の全体像を描くこと。そして、外交・安保政策を当面の普天間問題と中長期的な戦略とに分別して、国民的な英知を結集することである。

 政策があって初めてそれが数となり、その二つが相まって政治的パワーに転化する。開かれた場での徹底的な政策論争、そして、雌雄を決した後の一致結束。国民が代表選に望んでいるのはそういうことではあるまいか。実際問題として、民主党はそのプロセスがあって初めてねじれ国会に対応できる強い与党になれるのだ。菅首相もじっくり休んだ後はひたすら政策を磨き直してほしい。

毎日新聞 2010年8月18日 東京朝刊

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