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2010年8月16日(月)付

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党首選のあり方―政権交代時代にあわない

民主党の代表選が9月に行われる。目前に迫ってくる前に、党首の選び方のそもそも論を考えておきたい。今回の民主党代表選になにか釈然としない思いを抱く人も少なくないと思う。疑[記事全文]

クラスター爆弾―作らせない金融の大切さ

クラスター爆弾禁止条約が発効した。親爆弾がばらまいた多数の子爆弾が不発のまま残り、一般市民を殺傷し続ける。とりわけ子どもの犠牲が多い。非人道兵器を象徴するこの爆弾の製造、使用、備蓄やそれらへ[記事全文]

党首選のあり方―政権交代時代にあわない

 民主党の代表選が9月に行われる。目前に迫ってくる前に、党首の選び方のそもそも論を考えておきたい。

 今回の民主党代表選になにか釈然としない思いを抱く人も少なくないと思う。疑問は大きく二つあるだろう。

 仮に菅直人首相が敗れれば、新代表が首相になる。毎年のように首相が代わったあげく、今度は3カ月でお払い箱か。こんなに短命政権続きで日本は大丈夫か。それが、疑問の第一だ。

 次に、菅氏は先の参院選で自民党に敗北しても首相を辞めなかったのに、なぜ一政党内の手続きにすぎない投票の結果次第で首相を辞めなければならないのか。それが第二の疑問だ。

 むろん9月の代表選は公明正大にやってもらおう。それとは切り離して、今後の党首選のあるべき姿を今から議論しておくことは有益だと考える。

 日本の首相は大変である。政権を維持するのに乗り越えなければならないハードルが実に多い。政権選択がかかる総選挙、中間評価としての参院選、それに加えて党首選も、だ。どれも、しくじったら退陣に追い込まれかねない正念場である。

 永田町の抗争局面である「政局」がほとんど毎年のように首相を脅かす。これでは内政外交の重要課題に腰を据えて取り組むどころではない。

 代表選をにらんで党内を刺激しないよう気を使い、精彩を欠く菅首相の現状はその象徴だろう。

 ハードルの多さが政権を弱体にし、ひいては短命政権の連続にもつながる。日本政治が急いで解決しなければならない宿題である。

 自民党の一党支配が盤石だった頃、首相は党総裁選で事実上、決まった。総選挙を通じた政権交代など想像できない時代だったから、それが通った。

 いまは、有権者が総選挙を通じて新しい首相を直接指名し、政権交代を起こしうる時代になった。

 総選挙よりも党内手続きを優先し、党の都合で首相を交代させる従来のやり方は正当性を失ったといっていい。

 有権者が「自分たちで選んだ」という意識を持てない首相は、最初から基礎体力を奪われているに等しい。

 小泉内閣後、総選挙を経ずに生まれた安倍、福田、麻生各内閣の発足時の内閣支持率は63、53、48%と、たらい回しの度に低下。昨年の総選挙で生まれた鳩山内閣は71%、菅内閣60%だ。

 改革の方向ははっきりしている。

 現状では党首の任期は総選挙の時期と無関係に決められているが、これを見直すことである。

 民間有識者らがつくる「21世紀臨調」は、党首の任期を総選挙のサイクルと一致させるよう提言している。首相候補である党首は、原則として次の総選挙の前に選挙する。

 現実的なアイデアだろう。

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クラスター爆弾―作らせない金融の大切さ

 クラスター爆弾禁止条約が発効した。親爆弾がばらまいた多数の子爆弾が不発のまま残り、一般市民を殺傷し続ける。とりわけ子どもの犠牲が多い。非人道兵器を象徴するこの爆弾の製造、使用、備蓄やそれらへの協力を禁じる条約に108カ国が署名し、38カ国が批准した。

 米ロ中など未加盟国をどう巻き込むか。条約ができて未加盟国もこの兵器の使用をためらうようになったが、「使わせない」から「作らせない」へ、圧力をかけていきたい。

 生物兵器や化学兵器など大量破壊兵器の禁止条約作りは、各国政府が取り組んできた。ところが、一般市民を巻き込む非人道兵器の削減や禁止には及び腰が続いた。

 流れを変えたのが非政府組織(NGO)だ。欧州の国々などに働きかけて生まれたのが1999年発効の対人地雷禁止条約だった。クラスター爆弾禁止条約はこの民間参加型をさらに発展させた。兵器を「作らせない」金融を目指して銀行や証券会社の投融資姿勢に圧力をかけた点もそのひとつだ。

 企業が環境、平和、人権、平等などに配慮した経営を行うのが社会的責任(CSR)。投資や融資の先を選ぶことで企業にこの責任を全うさせようというのが、社会的責任投資(SRI)と呼ばれる考え方だ。

 欧米では人種差別、ベトナム反戦などを経て、1世紀近い歴史がある。この流れと非人道兵器廃絶の流れが一体化したのがクラスター爆弾の禁止条約作りだった。

 ベルギーのNGOがメーカーや投融資する銀行・証券を洗い出し、リストを公表した。欧州では製造元を投資先から除外する年金基金や、融資しないリストを示した銀行もある。投融資を法で禁じる動きも、欧州やニュージーランドなどに広がる。

 NGOのリストには日本の3メガバンクと大手証券も挙げられた。これを受けて、クラスター爆弾製造のための融資を禁じるように内規を改訂したり、株式運用の対象から外したりする動きが起こった。

 銀行は非公表の内規で処理しているが、投融資の基準として預金者や株主にはもちろん、社会にも公表した方がいい。劣化ウラン弾など他の非人道兵器への対応も含めて基準を改め、情報を開示すべき時代ではあるまいか。

 社会の支持が得られないビジネスに持続性はない。これは大きな意味でのリスク管理でもある。

 日本でSRIが本格化して10年ほど。歴史も浅ければ底も浅い。関心領域は環境に偏り、動く資金も数千億円と欧米より3ケタ少ない。「自分のお金の使われ方」に私たちはもっと注意していいはずだ。条約の発効を日本のSRI発展の契機にもしたい。

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