歌舞伎の殿堂、東京・銀座の歌舞伎座が、建て替えのため4月公演を最後に休場に入った。37歳で立ち役として活躍する花形は、新しい劇場が開場する予定の2013年春までの3年間を、「一日一日が勝負のサバイバルレース」と位置づけている。
(新しい)歌舞伎座ができるまでに、どれだけ実力を蓄えられるかで、今後のすべてが決まる。5月はそんな緊張感を覚えながら舞台に臨みました。
《歌舞伎の本拠地が新橋演舞場に移って初めての「五月花形歌舞伎」では、「熊谷陣屋」の熊谷直実(なおざね)を初演した。源氏方の武将である熊谷は、源平の合戦で平敦盛の命を救うために子の小次郎を身代わりとする》
曽祖父の初代中村吉右衛門以来、祖父の(初代松本)白鸚(はくおう)(八代目幸四郎)、父の幸四郎と代々が得意にしてきた役です。できなければ高麗(こうらい)屋(幸四郎家の屋号)を名乗ることすら許されないのではという気持ちで舞台に立ちました。父に教わりましたが、4月は叔父(吉右衛門)が歌舞伎座で同じ役を演じていた。父や叔父のような存在感を出すことが必要だと思いましたが、さていざとなると、なかなかできない。とことん悩み、心身共に維持するのがきつい1カ月でした。
《熊谷以外に「寺子屋」の源蔵、「お祭り」の鳶頭(とびがしら)、「助六」の白酒売という大役3役を演じた。共演は尾上松緑(しょうろく)、市川海老蔵、中村勘太郎、中村七之助という面々。松緑の祖父の二代目松緑、海老蔵の祖父の十一代目市川團十郎は祖父の白鸚の兄弟である》
毎日が怖かった。そんな中で支えになったのが同年代の役者さんと一緒だということ。隣の楽屋が海老蔵君でしたし、近くには松緑君、勘太郎君、七之助君がいる。感想を話し合ったりすることが刺激になった。10年後、20年後、30年後、40年後にもベストキャストであり続けなければいけない、すごいメンバーだったなと思います。
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聞き手・小玉祥子/「時代を駆ける」は火~土曜日掲載です。
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■人物略歴
歌舞伎俳優。1973年1月8日生まれ。79年3月に三代目松本金太郎を名乗り初舞台。81年10、11月に七代目染五郎を襲名(写真は今年5月、新橋演舞場の「熊谷陣屋」の熊谷直実=松竹提供)
毎日新聞 2010年8月17日 東京朝刊
| 8月18日 | 市川染五郎/2 二度と舞台は休まない |
| 8月17日 | 市川染五郎/1 一日一日、勝負の舞台 |
| 8月7日 | 古葉竹識/10止 人生預かる立場は同じ |
| 8月6日 | 古葉竹識/9 津田を襲った悲劇 |
| 8月5日 | 古葉竹識/8 「江夏の21球」で日本一 |
| 8月4日 | 古葉竹識/7 優勝で広島に恩返し |
| 8月3日 | 古葉竹識/6 後遺症克服し盗塁王 |
| 7月31日 | 古葉竹識/5 念願のプロ入り、広島へ |
| 7月30日 | 古葉竹識/4 完全試合、現場で体験 |
| 7月29日 | 古葉竹識/3 稼ぐためプロ目指す |
| 7月28日 | 古葉竹識/2 焼け跡、越境、甲子園 |
| 7月27日 | 古葉竹識/1 監督退き20年、再び |
| 7月24日 | 羽生善治/9止 勇気持って「羽生流」へ |
| 7月23日 | 羽生善治/8 名人戦問題で発奮 |
| 7月22日 | 羽生善治/7 再挑戦で初の7冠 |
| 7月21日 | 羽生善治/6 米長名人との死闘制す |
| 7月17日 | 羽生善治/5 初めてのスランプ |
| 7月16日 | 羽生善治/4 将棋漬けの10代後半 |
| 7月15日 | 羽生善治/3 強烈な奨励会の体験 |
| 7月14日 | 羽生善治/2 毎日熱中、小学生名人に |
| 7月13日 | 羽生善治/1 手が震える名人の重み |
| 7月10日 | 川口淳一郎/10止 宇宙大航海時代へ挑戦 |
| 7月9日 | 川口淳一郎/9 夢の跡に立って |
| 7月8日 | 川口淳一郎/8 意地と忍耐の7年 |
| 7月7日 | 川口淳一郎/7 人事を尽くし神頼み |
| 7月6日 | 川口淳一郎/6 人類初のだいご味 |
| 7月3日 | 川口淳一郎/5 破れかぶれの挑戦 |
| 7月2日 | 川口淳一郎/4 「軌道の魔術師」現る |
| 7月1日 | 川口淳一郎/3 米の惑星探査機に驚き |
| 6月30日 | 川口淳一郎/2 夢のようなフィナーレ |
| 6月29日 | 川口淳一郎/1 「はやぶさ」帰還に涙 |
| 6月26日 | 川島隆太/10止 「賢く老いる」懸け橋 |
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| 6月23日 | 川島隆太/7 認知症の高齢者に笑顔 |
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