【社説】ビザ発給緩和だけで中国人観光客は来るのか
韓国政府は、中国の大学教授や富裕層に限定していた数次ビザ(マルチビザ)の発給対象を今月から、同国の500大企業の社員に拡大した。また、中国政府が定める優秀な大学の在学生には、在学の事実さえ確認できればビザを発給することにした。中国人観光客が気軽に韓国を訪問できるようにするのが狙いだ。
韓国を訪れた中国人観光客は2005年の71万人から昨年には134万人へと増加した。09年時点で日本人観光客の305万人に次ぐ2位で、米国人観光客の2倍を超える。しかし、韓国に向かう中国人観光客は、約4700万人と推定される中国人海外旅行客の2.8%にすぎない。つまり、韓国を訪れる中国人観光客に韓国の魅力を植え付ければ、いくらでも観光客を誘致することができる。昨年韓国を訪れた中国人団体旅行客は一人当たり1791ドル(約15万3000円)を使った。日本人観光客の1267ドル(約10万8000円)を上回り、観光収入面では特に重要な存在だ。
しかし、韓国は準備不足で中国人観光客を他国に奪われている。日本人や米国人が高級ホテルを独占してしまうため、中国人はソウルで買い物をしても、宿泊先は1時間以上も離れた京畿道の衛星都市にある中低価格のホテルを使う。中国語に精通し、韓国の文化、歴史に関する知識も備えた中国語観光ガイドは300人にすぎない。この数では中国人観光客18万人にしか対応できない。ガイドが不足しているため、無資格の中国同胞(朝鮮族)や華僑がガイドを務め、「朝鮮は中国の属国だった」というようなとんでもない説明をすることも多いと聞く。中国人は韓国ドラマ『宮廷女官チャングムの誓い』(原題『大長今』)の影響などで、40.7%が「韓国に来たら韓国料理を食べてみたい」と答えるが、帰国時には「食べるべきものがない」と答えるという統計もある。中国人観光客は、中国人を西洋人や日本人に比べて軽視する韓国人の態度に不満が多いという。
日本は先月から中国人観光客に対するビザ発給要件と手続きを緩和した。成田空港には中国人観光客専門の案内員を配置し、同空港周辺には2013年に中国人観光客向けの大型ショッピングモールができるという。札幌には中国人専用のホテルまである。中国の富裕層を対象とした健康診断ツアー、がん治療ツアーなどメディカルツーリズムにも力を入れている。大統領直属でろくに仕事もしないさまざまな委員会を統合し、観光事業の育成策でも考えろという宿題でも課したらどうだろうか。