高橋「守りに回らないこと」

　高橋　それでも４位ですか。僕は８位。中途半端な結果に何とも言えない気分で、明確に五輪への思いが生まれた。自分を盛り上げようと、自信がなくても目標を口に出した。目標は高く持たないとそこにいけない。目標が３番じゃ、絶対５番か６番に終わってしまう。

　北島　カッコイイ。一度立てた目標を下げるのはダメだよね。調子悪くても、そこに向かう姿勢がある限りやれるんだ。五輪のたびに騒がれて「ふざけるな（笑）」って言いたいときもあるけれど、そんな五輪が好き。

　高橋　本当に。アスリートの４年はいろんなことがある。（五輪は４年に１度しかないから）選手が自分にかけるプレッシャーが出るのか、緊張感や空気が違う。

　北島　大舞台で力を出し切るために、何かしていることはある？

北島「すべきことが分かってくる」

　高橋　守りに回らないこと。調子が悪いからといって（難度を下げ）守りに入ると、逆に自信のあるものを失敗したりした。あまり練習熱心でないもので……。

　北島　まあ、分かるよ。すべきことが、年を重ねるごとに分かってくる。いい練習をするには目標が必要で、それがないと僕も怠ける。楽をして強くなりたいけど、それは無理じゃない？　アスリートの宿命だと思うし、それは上にいくほど分かる。

　日本人は勝負弱いとかいわれるけれど、世界で勝負して勝つには何が必要だと思う？

高橋「自分を信じる力」

　高橋　自信。外国の人の自分を信じる力はすごい。風習の違いかもしれないけれど、日本は自分を下げて下げて（へりくだる）という国民だから。僕も世界で場数を踏むうちにずうずうしくなって、自分を信じる力がついてきた。そうすると土壇場で吹っ切れる。

　北島　自信は大切。（勝負強い）弱いとかでなく、どれだけ自分に自信を持って、その舞台に立てるかなんだよね。