岩国基地の滑走路沖合移設事業で新設された港湾施設について、「海上輸送作戦を支援するのに十分な能力がある」と米軍が分析していたことを示す文書が、内部告発サイト「ウィキリークス」に掲載されていると16日、共産党の久米慶典県議が明らかにした。久米県議は「移設事業で輸送補給基地としての機能が付け加えられたことが明確になった」としている。
文書は「世界の港湾についての軍事分析2002」と名付けられ、2858ページに及ぶ資料。国際政治学者の新原昭治さんがウィキリークスで入手し、久米県議が岩国関係分17ページを分析した。
久米県議によると、米陸軍の軍事管理輸送司令部から調査チームが97年6月に岩国基地を訪問。当時の港湾施設と、移設で建設予定の新港湾施設について能力を比較し、分析結果を99年にまとめたとみられる。ウィキリークスによると、米軍の公式サイトに掲載されていたが、その後、削除されているという。
沖合移設事業は97年6月に起工。埋め立てられた港湾に代わる新港湾施設は、南側工区に建設され、05年7月に日米合同委員会で米軍への提供が承認され、運用開始。新港湾には水深13メートル、延長360メートルの岸壁が整備され、5万5000トン級の大型艦船が停泊可能になった。
県は「新港湾施設は給油や補給物資の積み降ろしに使われ、大型船舶接岸のために建設したのではない、と国から説明を受けている」としているが、運用開始後には米軍の掃海艦やフリゲート艦が寄港している。
久米県議は「今年6月には、厚木基地の早期警戒機E2ホークアイが、岩国基地の港湾から米サンディエゴに海上輸送されたことが基地内機関紙で報道されている。輸送基地として、旧港湾施設時代にはない形で使用されている」と指摘した。【大山典男】
〔山口東版〕
毎日新聞 2010年8月18日 地方版