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国民擁護省が必要だ

2010年8月18日0時31分

 年金型生命保険金に相続税と所得税を課すのは違法な「二重課税」に当たるとした最高裁の判決は、市井の主婦が徒手空拳で、税務当局への異議申し立て、国税不服審判所の裁決という二重三重の障壁を乗り越えて勝ち取ったもので、平成の義挙というべきものである。

 しかもこの判決は、立法府である国会もあずかり知らない国税庁の通達が、40年以上もまかり通っていたことも明らかにした。

 この事態は、この国が官僚の差配する官治国家である実態の一端を改めて明らかにした。年金型生命保険を所管する金融庁も、その前身の大蔵省も問題視すらしなかった。法体系の一貫性を維持すべき法務省や、消費者としての国民の権利を担保すべき消費者庁はどのような行動をしているかすら分からない。

 要するに、国税庁の行動に、他省庁はわれ関せずなのである。局所最適ならぬ局省最適のみはかられ、全体最適である国民の権利擁護は無視されて久しい。

 しかも、最近の100歳を超える多くの高齢者の所在不明問題に見るように、縦割り行政がこの国の社会変動に予見的な対応をとる能力もなく、良くて泥縄式対処しかとれないこともあらわになっている。

 司法が機能しているという意見もあろうが、原爆症、水俣病、肝炎や一票の格差など数々の行政訴訟から冤罪に至るまで、この国の司法では、正義が実現するにしても長い時間を要するのである。

 ミイラ取りが瞬く間にミイラ化した現政権に期待するのも愚かなことだろうが、この国に必要なのは、国家戦略局などではなく、官僚を排した強力な国民擁護省の設置ではないだろうか。(匡廬)

    ◇

 「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。

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