店頭に表示されているエアコンの「目安電気料金」が、実態の約6倍も懸け離れている可能性のあることが、産業技術総合研究所の田原聖隆(きよたか)主任研究員らの調査で分かった。性能試験に使う時間を算定根拠にし、家庭での使用状況を把握していなかったためで、エアコンの買い替えによる節約額や二酸化炭素削減量が実態より過大評価されている恐れもある。節約額を買い替えの目安にする人も多く、経済産業省は見直しを検討している。【大場あい】
目安電気料金は、経産省が06年に導入した「統一省エネラベル」に表示されている。また、エアコンの電気料金は、日本工業規格(JIS)の測定法に基づいた消費電力量に1キロワット時当たり22円を乗じて算出する。
産総研は2月、全国3754世帯を対象に、エアコンの使用状況をたずねた。それによると、関東地方の家庭(計350世帯)の場合、年平均の冷房使用時間は436時間、暖房は305時間。4キロワットの機種の消費電力は253キロワット時(電気料金換算5566円)だった。
ところが、統一省エネラベルの計算方法では、東京の場合、冷房使用時間が実態の3・2倍、暖房は9・1倍も使っているという想定だった。その結果、4キロワットの機種の消費電力は1474キロワット時(同3万2428円)となり、実態の5・8倍になった。
一方、冷蔵庫など他の家電の統一省エネラベルは、平均的な使用実態に基づいて表示されている。経産省資源エネルギー庁は「現在、基準にしているJISは性能を測るためで、使用実態を反映していないのは事実。当時は実態データがなく、JISを使うことが一つの割り切りと考えた」と説明、JIS改定の検討に着手した。
政府は温暖化対策の柱に「省エネ製品の選択」を掲げているほか、利用したエネルギーを数値で把握する「見える化」を進めている。主婦連合会の有田芳子・環境部長は「エネルギー消費量は商品選択の重要なポイントだ。過剰表示は、意図的ではなかったとしても、(制度や日本のメーカーの)透明性を信じてきたので、裏切られた思い」と話す。
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■ことば
省エネ法に基づき、小売業者が店頭で家電などの省エネ情報を消費者に提供するためのラベル。経済産業省が、星の数で省エネ性能を示す「多段階評価」や年間の目安電気料金などの記載内容、電気料金の計算方法を決めている。
毎日新聞 2010年8月16日 東京夕刊