事務系派遣社員を直接雇用に切り替えることを決めた日産自動車。毎日新聞は同社の一部職場で使われていた管理職向けの派遣社員対応マニュアルを入手したが、労働者派遣法などに違反する行為が行われていた可能性をうかがわせる記述が並んでいた。
「派遣staffを選択する行為は禁止されています。それらを候補者本人同意のもと、『職場見学』という事に置きかえて『面談』を行っています」
マニュアルは、同法で派遣先(日産)が派遣社員を選考する行為が禁じられていることを説明し、「単にことばの問題ですが『面接』ということばは使用せず、『面談』『打ち合わせ』という表現を使用するようご留意ください」と注意喚起。「受入の可否はGP3(人事担当)へ報告してください」とも記しており、事実上の選考が行われていたことをうかがわせる。
本来は派遣会社が決める賃金についても、「オーダーする業務内容と料金テーブルと照らしあわせ、購買H53(派遣社員を管理する部署)にて決定」などと書いている。実際、同社で事務の仕事をしていた複数の元派遣社員は毎日新聞の取材に、「日産との面接でスキルなどを聞かれた」「派遣会社ではなく日産と賃金交渉した」などと証言する。
同社広報部によるとマニュアルは08年、一部署の人事担当が管理職向けに作った。同社広報部は「外部の人が読めば、採用行為や賃金決定をしているようにとられても仕方ないが、実際には事前面接や賃金決定はしていないはずだ」と説明している。【市川明代】
毎日新聞 2010年8月18日 東京朝刊