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電気代払えずクーラーなし 熱中症死

 さいたま市北区で電気代を10年間支払わず、クーラーのない生活を送っていた無職男性(76)が自宅で熱中症で死亡していたことが16日までに分かった。同居する長男(48)が15日午後4時20分ごろ気付き119番通報。救急隊員が駆けつけたが、すでに死亡していた。男性は年金暮らしで電気代を支払っておらず、長男が氷を買って手当てをしていた。熊谷地方気象台によると15日のさいたま市の最高気温は35・8度だった。

 大宮署によると、男性は年金だけの生活で、長男と2人暮らしだった。発見時、男性は肌着姿で、布団の上にあおむけに倒れていた。救急隊員が駆けつけた時は既に死亡しており、熱中症と診断された。

 自宅は住宅街にあるアパートで、約30年前から長男と住んでいた。間取りは2DKで風呂トイレ付き。家賃は5万5000円。男性が寝ていたとされる部屋の窓は雨戸が閉めてあり、しばらく開けられた様子はない。もうひとつの部屋のガラス窓も閉め切られていた。長男は体調不良で今も仕事ができず、収入は男性の年金が月に約10万円。10年以上前から電気代やガス代も支払っておらず、電話もなかったという。

 そのため冷蔵庫などの電気類を一切使用しない生活を送っていた。エアコンは設置されているが、もちろん使うことはできず、部屋の外にある室外機は使用していた形跡もなく、部屋につながるパイプのテープはボロボロにはがれていた。同居する長男によると「カセット式のガスこんろで自炊している」。水道代は支払っていたという。

 父親である男性は3日ほど前から体調を崩し寝込んでいた。買い物を頼まれ、飲み物とロックアイス、市販の解熱剤を購入。氷を頭に当てると男性は「冷たくて気持ちいい」と表情が和らいだ様子を浮かべたという。

 亡くなる直前、長男は台所にいたが、ペットボトルが倒れ足をばたつかせ始めたので、慌てて数百メートル先の公衆電話から119番通報した。年金暮らしについて長男は「年金は2カ月に1度で生活は苦しかった」とし、父親については「7月中旬くらいまでは元気で買い物にも出かけていた。普段はラジオを聞いたりしていた。10年以上前に生活保護の申請をしたが通らなかった。もし申請が通っていれば、少しは生活環境も変わっていたかもしれない」と肩を落とした。再び生活保護の申請をしたという。

 [2010年8月17日8時54分 紙面から]


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