李明博大統領がどうしてこうも豹変したのか。決定打となったのが、6月の統一地方選挙での惨敗だった。5年間の任期中で最後の大型選挙で「政権の中間評価」と位置付けられていた統一地方選で、与党ハンナラ党は惨敗を喫した。
統一地方選の敗北で大統領の意識が変わった
李明博大統領にとってショックだったのは、事前の「圧勝予想」を覆す惨敗だったことだけではない。若者を中心に投票率が高かったにもかかわらず惨敗したことだった。
哨戒艦沈没事件後、李明博大統領が「戦争も辞さない」という趣旨の発言をしたことや、行政機能の一部移転問題を巡る混乱など敗因はいくつかある。
李明博大統領は「経済の両極化」も大きな原因だったと見たようだ。
韓国経済は、米国発金融危機からいち早く回復。今年上半期のGDP(国内総生産)成長率も7%を超えるなど好調だ。サムスン電子以外にも、現代自動車やポスコなどの業績が絶好調で、海外では「強い韓国経済」のイメージが広まっている。
にもかかわらず、一般の韓国民は、景気回復を全く実感できていない。雇用は増えず、大学生の就職難は解消できていない。名門大学でも就職率は50%を割り込んだままだ。
それ以前に、せっかく大学に入学しても、父親が失業して学費が払えなくなって中退する学生が続出している。
大企業が利益を上積みする中、部品メーカーは赤字転落
中小企業や小規模商店、飲食店などの経営がさらに悪化しているうえ、不動産価格の下落で、建設、不動産業が不振に陥っているためだ。まさに「経済の両極化」が起きているのだ。
輸出が好調なIT産業でも格差は大きい。韓国の有力経済紙「毎日経済新聞」によると、サムスン電子で携帯電話機などを扱う情報通信部門の営業利益率は、昨年の第3四半期に9.62%だったが、第4四半期に10.32%、今年第1四半期に11.98%に上昇した。
一方で、携帯電話機の部品を製造する21社の上場企業の平均営業利益率は、同じ時期に3.93%→0.08%→マイナス0.37%と急減してしまった。21社がすべてサムスン電子の下請けではないが、利益が一部大企業に集中していることがはっきりとうかがえる。
李明博大統領は、昨年来、「主要国の中で金融危機からいち早く回復したのは韓国だ」と何度も強調してみせた。確かに、一部大企業の業績はV字型回復をしたが、それでも、雇用は増えないし、中小企業の業績は全く改善しない。
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