ベスト8が出そろった。特筆すべきは新潟明訓(新潟)と聖光学院(福島)の躍進だ。今大会開幕前の都道府県別の春夏勝利数を見ると、福島は29勝の44位、センバツ初勝利を平成18年まで待たねばならなかった新潟は22勝で最下位の47位。広陵(広島)、履正社(大阪)と強豪を撃破した聖光学院の斎藤監督は「これで壁をひとつ破れた気がします」と好成績に胸を張った。
好成績の要因は1人の好投手やスラッガーに頼らず、堅守のチームを作り上げたことだ。聖光学院はここまでの2試合は無失策。新潟明訓も3回戦で全国制覇の経験を持つ西日本短大付(福岡)に1−0で守り勝った。
もうひとつの大きな要因は、目標とすべきライバルの存在。昨夏の決勝で中京大中京(愛知)と熱戦を演じたのは日本文理(新潟)。新潟明訓は、その日本文理をものさしとすることで全国レベルの力を知り、目標が明確になった。聖光学院にとっての「日本文理」は、同じ東北地区の花巻東(岩手)のエースとして昨年活躍した菊池雄星(現西武)だった。
対照的なのが近畿や中四国。8強は報徳学園(兵庫)だけで、昨夏は両地区ともゼロだった。しかし、甲子園勝利数ランク1位の大阪(317勝)、6位の広島(195勝)など「野球どころ」が「没落」したというより、かつての「野球弱小県」が力をつけたと見るのが妥当。高校野球に地域格差はなくなったといえる。
今後、「各学年5人以下が望ましい」(日本高野連)としている特待生制度、4月にスタートした公立高校無償化制度の影響で、「公立と私立」、「地元と野球留学」の間で選手の流れが変わることも予測されている。高校野球の勢力地図は刻々と変わっていくだろう。