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【スポーツ】一二三 1安打完封 東海大相模 35年ぶり8強2010年8月17日 紙面から
◇夏の甲子園<第10日>プロ注目右腕の東海大相模、一二三慎太投手が、ようやく甲子園で本領を発揮した。土岐商戦で8回先頭に初安打を許すまでノーヒットノーランの快投。98年の松坂大輔以来となる快挙は逃したが1安打に封じて、甲子園で初完封を飾った。東海大相模は、巨人・原辰徳監督が2年だった75年以来35年ぶりに夏8強にコマを進めた。 勝利の瞬間、意外にも一二三に笑みやガッツポーズはなかった。98年の松坂大輔(横浜、現レッドソックス)以来の大記録は逃したが、夏の甲子園で東海大相模の投手として史上初めての完封。「やっと甲子園で納得できる投球ができた」というのにクールだった。「終わった瞬間、考えていたのは、次も勝つぞということ。ここで満足は全然してない。油断できない試合が続くんで」。つかんだ自信で、視線は、頂点に完ぺきにロックオンされた。 初戦は4安打3打点。本塁打も放って打撃で貢献したが、投げる方は8四死球と大乱調。「調子が良かった神奈川大会のころより腕の位置が低くなっている」と気づき、この4日間で修正。1回戦で15点を挙げた土岐商打線を、全く寄せ付けなかった。 途中で力の配分を変える余裕もあった。序盤には、最速145キロをマークしたが、5回以降はほとんど130キロ台後半止まり。「監督から“力を抜いて柔らかくムチのように投げろ”と言われたので」。制球重視で打たせて取る投球を心がけた。これも春から成長したところ。サイドスローに変えてから、自分で抑えてやるという意識や、球速、三振へのこだわりが消え、バックを信頼して打たせて取ることを覚えた。「ゴロが多くなったら内野陣とコミュニケーションをたくさん取るようになった。一人でやってるんじゃないという“守られてる感”がうれしい」とも言った。 初戦は、緊張から独り相撲をしてしまったが、この日は試合前、捕手の大城卓から「打たれたらオレのせいにすればいいから、ストレートをどんどん投げ込んでこいよ」と肩をたたかれ「思い切って投げられた」。昨秋新チーム発足以来、3年生は試合前日、そろってご飯を食べに行くなど“総決起集会”をしてきた。今大会の試合前夜は、宿舎前の銭湯に行き“裸の付き合い”で気持ちを一つにしている。孤高のエースは頼れる仲間を得て強くなった。 門馬敬治監督(40)は「一二三はまだまだ完成形じゃなく成長途中」と言う。進化し続けるエースに引っ張られて、70年以来の深紅の大旗にまた一歩近づいた。 (竹村和佳子)
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