福岡県水巻町で7月24日に開かれた第132回患者塾。「2歳になりました」をテーマに、1歳と3歳の「はざま」に当たり、ちょうど健診がない2歳という年齢の子供について、親や祖父母がどんなことに気を付ければいいか、小児科医らが語り合った。
◆友達と付き合い下手
<福岡県水巻町の29歳女性> 長女が2歳になりましたが、健診が3歳までありません。少しみんなと仲良くできないことと、あいさつが下手なのが気になるのですが。
津田さん 乳幼児健診は大体、1カ月、4カ月、7カ月、1歳半、3歳にあり、ちょうど2歳がありません。発達の遅れが見つかりやすい月齢に設定しています。でも1歳半で異常のあった子がいたら、3歳まで何もしないのではなく、中間の2歳でチェックすることもあります。忙しくて健診に来られない場合には2歳の時に確認しています。
三宅さん 普段小児科にかかった時に問題を指摘されなければ特別気にすることはありません。仲良くできるかというのは、人見知りするかどうか、保育園に行っているかどうか、などでも変わってくるので一概に異常とは言えません。「おおらかに育つのが一番いい」と指導しています。
小野村さん 孫が友達などとうまくコミュニケーションを取れているかどうか心配という祖父母からの質問をよく受けます。
三宅さん 祖父母は「友達はこういうことができるけれどうちの子はできない」と心配することが多いですが、それぞれ個性があるので人と比べてはいけないと思っています。早くおしゃべりを始めたからと心配する人はいません。小児科医としては、ここまでは遅れたらいけないというところを健診では見逃さないよう気を付けています。
◆せき込みが続く
<福岡県遠賀町の30歳女性> 息子が2歳になりました。熱はなく、元気なのですが、よくせきをします。小児科医はレントゲンも撮らずに「心配ない」と言うのですが大丈夫でしょうか。
津田さん 乳幼児には不必要な放射線は当てないのが原則ですが、2週間以上続いてせきが止まらない場合はレントゲンを撮ることがあります。
三宅さん せきがあるけれども熱を伴わずに調子も悪くなければ、1~2週間様子を見ます。気になるけれども、赤ちゃん本人はよく寝ているという場合は、「日常の生活に変わりがなければ心配ないことが多いですよ」と説明しています。家族や周囲に百日ぜきのような人がいる場合には気を付けて診ます。
津田さん 百日ぜきは年々20代以上で増加しており、子供に感染する危険性があります。熱がほとんどなく、夜間のせき込みが強くなり、ひどい子はせき込みによって呼吸停止もある疾患です。早く治療を開始しないと脳症や肺炎を起こすケースもあり、周りに広めていってしまう恐れもあるので、検査の結果を見てからではなく、百日ぜきを疑った早い段階で抗生剤を投与しています。
3歳の姉と1歳の弟。ブランコで遊ぶ二人の笑顔の写真が目に焼き付いて消えない。この年ごろの子供は、まなざしを真っすぐ親に向けてくる。ある意味「痛い」くらい強烈に「全幅の信頼」を寄せてくる。それに応えようと、親の側も身が引き締まる。もちろん楽しいことばかりではない。子育ては喜怒哀楽すべてを背負う。今回の塾にも、子育てに懸命な親たちの悩みが寄せられた。一方、笑顔の二人はマンションの部屋に放置され亡くなった。この落差を生んだ社会の大人の一人として二人に言わなければならない。「ごめんな」と。【御手洗恭二】
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三宅巧さん=みやけクリニック(北九州市、小児科)▽伊藤重彦さん=北九州市立八幡病院(外科)▽津田文史朗さん=つだ小児科アレルギー科医院(福岡県水巻町)▽平田敬治さん=福岡山王病院(福岡市、外科)
▼司会・小野村健太郎さん=おのむら医院(福岡県芦屋町、内科・小児科)
〔福岡都市圏版〕
毎日新聞 2010年8月17日 地方版