15歳無職 生活保護停止 那覇市「働く力ある」

地裁「早計」 支給を再開

2010年8月17日 09時27分この記事をつぶやくこのエントリーを含むはてなブックマークLivedoorクリップに投稿deliciousに投稿Yahoo!ブックマークに登録
(6時間22分前に更新)

 那覇市に住む15歳の無職少女を「働く能力を活用していない」などとして生活保護世帯から切り離し、保護費を打ち切ったのは違法だとして、少女の母親が那覇市に世帯分離の取り消しを求めた仮処分で、那覇地裁(酒井良介裁判長)は16日までに、世帯分離を停止する決定をしていたことが分かった。処分は7月16日付。母親側は緊急性があるとして県への不服申し立ても同時に行っており、県も世帯分離の取り消しを裁決。これを受け、市は8月12日付で少女の生活保護費の支給を再開している。(高崎園子)

 訴状や決定書によると、この世帯は母親と子ども5人の母子家庭で、世帯分離されたのは15歳の長女。母親は長女が不登校になったのをきっかけに仕事を辞め、2009年4月から生活保護を受給するようになった。長女は今年3月に中学校を卒業し、高校を受験したが不合格になった。来春の受験を目指している。

 母親側によると、今年5月、那覇市の職員から「期限内(1週間後)に長女が仕事を探さなければ保護を打ち切る」と通告があり、6月から長女分の生活保護費3万4千円余が削られた。そのため食費や学用品の購入に不自由しており、幼い子どもたちの成長発達が著しく阻害される―と将来に不安を訴えた。

 一方、市側は、担当者が長女に就労支援を受けるよう促したり面会を求めても応じず、収入を得るための努力をしなかったと反論。長女分を除いても保護費など約23万7千円余のほか児童扶養手当、子ども手当の収入があり家計の見直しで対応できると主張している。

 那覇地裁は、この世帯は平均的な母子家庭より子どもの人数が多く、県内の平均給与所得や母子家庭の収入と比較することは合理性がないと判断。稼働能力の可否についても、不登校時期のある15歳の少女を中学卒業後わずか2カ月の間に判断するのは「早計にすぎる」とした。さらに全国的な不況や県内の芳しくない就職事情を指摘し、世帯分離は「裁量の逸脱と認めるべき余地がある」とした。

「すぐ働け」は酷

 子どもの問題に詳しい元児童相談所所長の山内優子さんの話 子どもが社会に出るための支援がないまま、中学を卒業した段階で、すぐ働けというのは非常に酷だ。(進学の場合、世帯分離の対象にはならなかったが)母親が働いていた間、少女が妹弟の面倒をみていたかもしれず、十分に受験勉強ができる環境があったかも疑問だ。

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