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バーチャル恋愛、リアル熱海にご宿泊 「ラブプラス+」

2010年8月14日

図:  拡大  

 携帯ゲーム機で遊ぶ恋愛ゲームのユーザーがこの夏、静岡県熱海市に集結している。ゲーム会社コナミが6月に発売した「ラブプラス+」の舞台となった同市で、仮想の恋人と過ごすという趣向だ。老舗(しにせ)温泉街は、今や仮想空間と現実をつなぐ「異空間」と化している。

 熱海の観光の名所「お宮の松」。若い男性が、携帯電話で写真を撮る――。一見普通の観光地の風景だ。

 違うのは、男性が持つ携帯電話の画面。レンズの先には誰もいないのに、画面に「彼女」が写る。携帯電話のQRコードに似た「ARマーカー」という30センチ四方のボードを高機能携帯電話のiPhoneで写すと、ゲームの登場人物が浮かび上がる仕組みだ。

 ユーザーは市内の観光名所13カ所にある撮影ポイントで、「彼女」と写真を撮り、携帯ゲーム機・ニンテンドーDSを片手に、ゲームに登場する場所を次々と回って、デート気分を味わう。

 「ラブプラス+」は、高校生の自分が転校した学校で、女の子と出会い、付き合う設定で物語が進む。「彼女」と付き合い始めた後、どう付き合うかを考えながら楽しむのが特徴。うまくキスしたり、優しく接したりすれば彼女が徐々に自分好みになっていくなど、人間関係が変化していく。そんな恋愛生活の一こまとして、1泊2日で彼女と熱海に旅行に行く場面がある。

 なぜ、その舞台が熱海なのか。製作者の内田明理氏は「現実感」と説明する。物語は、ゲーム機に内蔵された時計に合わせて進む。時間が「いま」なら、舞台も実在する街にしようと考えた。誰でも知っていて、温泉も名跡もある。昔の新婚旅行の名所というイメージも生かせる熱海に決めた。

 ゲーム発売を前にした今春、コナミは地元・熱海市にイベント開催を打診。7月10日から「熱海L(ラブ)+(プラス)現象(まつり)!!」(8月末まで)というイベントを続けている。ARマーカーを置いたほか、市内6カ所を回るスタンプラリーを作り、グッズ販売も企画。ゲームを体感できるようにしたのだ。

 最初は受け入れ側に戸惑いもあった。熱海市商店街連盟会長の岩本寛さん(61)によると、最初は抵抗感があり、ゲームの中身を聞いて「公序良俗に反する」という意見すら出たという。とはいえ、熱海市の観光宿泊客は1991年度の440万人を境に減り、昨年度は281万人。「何かやらないと」と16カ所の協力店舗が現れた。

 当初は半信半疑だったが、7月10日のイベントには直前の告知にもかかわらず、250人が集まった。スタンプラリーの参加者は7月15日から8月13日までで1500人を超えた。「女性もいるし、何より礼儀正しく、何の苦情もない。神風が吹いたようなもんだ」と岩本さんは驚く。

 「どうせやるなら」と、協力店舗も知恵を絞った。焼き肉屋が「ラブプラス+」のコースを用意したり、練り物屋がかまぼこを作ったり。すると、グッズは仕入れればすぐに売り切れるほどの人気に。ユーザーがツイッターなどを使って在庫状況を仲間に伝え、瞬く間に評判が広まる。

 ゲームでキャラクターと一緒に泊まる設定のホテル大野屋は、「ラブプラス+」仕様のサービスを始めた。予約の際に「ゲームの関係です」と言っておけば、1人で来てもフロントが「お2人様ですね」とにっこり声をかける。布団も2組並べる。ホテル総出の演出が話題を集め、200人以上が利用したという。さらに、ゲームに登場するホテルの浴衣を売り出したら、飛ぶような売れ行き。ホテル大野屋専務の大野篤郎さん(40)は「今までにない客層がいらっしゃるようになり、将来につながる」と喜ぶ。

 8月初旬、熱海市の海岸沿いの花火大会の会場。東京都から1人で訪れていた会社員の男性(21)はグッズを買っていた。すでにこの夏、熱海には3回来たという。「ゲームの中の世界とまったく一緒なのが面白い」

 今、ゲーム中の「彼女」はいるが、本物の彼女はいない。男性は「彼女ができた時の練習になるかも」と魅力を話す。来月は、ゲーム仲間とホテル大野屋に泊まるつもりだという。(河野正樹)

     ◇

 〈ラブプラス+〉 携帯ゲーム機ニンテンドーDS向けにコナミが今年6月に発売した恋愛ゲーム。高校生の自分が転校した学校で女の子と出会い、付き合う設定。「凛子(りんこ)」「愛花(まなか)」「寧々」の3人の女子高生の中から1人を選び、ゲームを進める。昨年9月に発売されたラブプラスの続編にあたる。

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