【コラム】日本より深刻な中国の歴史歪曲
5日付香港紙東方日報で、中国人民政治協商会議の劉夢熊・香港地区委員(62)が、中国紙環球時報に掲載された寄稿を公開批判した。環球時報は中国共産党機関紙・人民日報の姉妹紙だ。香港で親中派の代表的存在である劉氏が、共産党の立場を代弁する新聞を批判した格好だ。
劉委員は、上海外国語大のホウ中英教授(ホウはまだれに龍)が2日付環球時報に寄稿した「南シナ海問題、安易に多者会談を行うな」と題する文章を取り上げた。批判の矛先となったのは「米国が連合軍の名義で韓国戦争(朝鮮戦争)を引き起こした歴史は、多者システムが必ずしも優れているわけではないことを証明している」と結論づけた部分だ。
「1950年6月25日に北朝鮮の金日成(キム・イルソン)政権がソ連のスターリンの指示を受け、武力で韓半島を統一するため、横暴にも38度線以南の韓国を奇襲し、韓国はなすすべもなく攻撃され、ソウルは3日で陥落した。韓国戦争は明らかに金日成が起こしたものだという歴史的事実は当初から外部に広く知られていたが、中国は数十年間にわたり、その真相を隠してきた。しかし、1990年代に旧ソ連が解体された後、スターリン、金日成、毛沢東の間で交わされた秘密電報が暴露されたのを機に、歴史は正された。『米帝国主義と(韓国の)李承晩(イ・スンマン)政権が韓国戦争を起こした』という中国の教科書に記された論理は完全に崩れ、歴史の笑い草になった」
劉委員はこのように述べた上で、歴史のうそを繰り返すことは「教授という肩書きに対する侮辱だ」と厳しく非難した。
ところで、現在の中国の歴史教科書は韓国戦争をどう記述しているのか。人民教育出版社の高級中学(高校に相当)向け歴史教科書の106ページには、「朝鮮戦争」について、▲第二次大戦以降、韓半島に対立する二つの国ができ▲米国の覇権主義拡大-によって、必然的に戦争が引き起こされたとの説明がある。さらに、まとめの部分には、「1950年6月25日に朝鮮戦争が起きた。(中略)同年10月、米軍は急速に中国国境の鴨緑江まで進撃するとともに、中国東北部を爆撃し、中国の安全を著しく脅かした」と記されている。北朝鮮が戦争を引き起こしたという説明は一切なく、米国の覇権主義が戦争の原因だと指摘したもので、米軍が鴨緑江を超えて満州まで爆撃したいう部分は、全て歴史的事実を避け、歪曲(わいきょく)したものだ。
中国は2002年からの「東北工程」により、高句麗と渤海の歴史を中国史に組み入れる歴史歪曲を大々的に展開してきた。さらに、古代史だけでなく、わずか数十年前の歴史も歪曲して教えているほどだ)。最近、中国中央テレビ(CCTV)で有名な歴史講師が東北工程を痛烈に批判し、「日本も歴史教科書の内容を歪曲しているが、中国どではない。中国の歴史教科書に真実は5%もなく、大半は完全な虚構だ」と主張し、話題になった。
日本の菅直人首相による謝罪談話について、中国の新華社通信は11日、「謝罪は行動がより重要で、反省には共通認識が必要だ」と指摘した。これは当然の言葉だ。だが、劉委員が指摘するように、中国も事実を追求し、歪曲された歴史記述、歴史教育を自ら正さなければならない。
香港=李恒洙(イ・ハンス)特派員