福岡との関係も深い、長崎県壱岐・対馬のいまをシリーズでお伝えしています。
きょうは、対馬につめかける韓国人観光客。
このところ、ある変化が起きています。
韓国からの高速船が、きょうも島に到着しました。
プサンから対馬まではおよそ2時間。
10年前に就航した船は毎日1往復しています。
もともと韓国では、登山など自然のなかでのレジャーを楽しむ人が多く、美しい海と山を持つ対馬は格好の観光スポットとして注目されています。
対馬を訪れる韓国人旅行客の間で今人気なのが、キャンプ場での宿泊です。
韓国から対馬を訪れる観光客は、2005年には3万5000人を超え、ピークの2008年には島の人口の2倍以上にあたる7万2000人に達しました。
その韓国人観光客に、いま、変化が起きています。
●韓国人観光客
「ツーリングを楽しんだり、釣りをしたりキャンプをしたり。登山を楽しむ人たちの間で、対馬は良く知られています」
キャンプ場で出会ったこちらの家族。
ソウルからやって来ました。
かつて、対馬を訪れる韓国人は、プサンからの団体ツアー客がほとんどでした。
しかし、最近は韓国全土から家族や個人で来る富裕層が増えています。
●観光客
「アウトドア好きが集まる同好会で、対馬の自然はすばらしいと聞いて、訪れることにしました」
●対馬観光物産協会・平山哲正専務理事
「目的を持った観光客、たとえば登山であったり、釣りをしたりとか、ツーリングでの対馬一周とか、少数ではあるけれどそういう観光客が目立ってきた」
最近海岸沿いの国道で目にするようになったツーリング客も、そのほとんどが個人旅行の韓国人です。
自転車の荷台にはテントを積み、野営しながらアウトドアを楽しみます。
取材に訪れた日は台風接近の情報もあり、人はまばらでしたが、対馬のキャンプ場では現在、客の8割以上を韓国人が占めているといいます。
施設の案内や使用申込書も全てハングル。
逆に日本語は小さく隅に追いやられています。
島の飲食店も、この状況に対応しようとしています。
店内に入ると、日本の客に混じって、韓国から親戚同士で来たグループが楽しんでいました。
●韓国人観光客
「対馬はとても美しい島です。私は兄弟と来ましたが、滞在をとても楽しんでいます」
●居酒屋赤ちょうちん・桟原盛久さん
「店も韓国の人が3分の1くらい。多いですよ。私もついつい、この時期には韓国語になってしまう」
増加する韓国人の客に対応しようと、店側もいくつかのメニューは韓国語で覚えています。
●桟原さん
「たとえば、セメクチュは生ビール、メクチュは瓶ビール、チョッパルは豚足、そういったのは覚えてますよ。覚えてないと商売になりませんから」
●韓国人観光客
「対馬はとても清潔で、人々は親切です。また来たいと思います」
韓国人観光客が、最初から好意的に受け入れられていたわけではありません。
かつて団体のツアー客は酒に酔って羽目を外しがちで、敬遠する店も少なくありませんでした。
しかし、家族や個人での客が増えることで、振る舞いに変化が見られるようになったといいます。
●桟原さん
「今、非常に韓国の人たちも礼儀正しくなりました。当初、10年くらい前は非常に悪かったです」
●日本人客
「僕も韓国が大好きなんで、韓国に行くこともあるけど、友好的な韓国人も多いので、一緒に楽しく飲む時もあるし、いいんじゃないかと思いますね」
島の経済にも大きな影響を与えています。
基幹産業の漁業は、船の燃料の価格高騰で疲弊し、林業も住宅の着工件数が減るなかで利益を出すのが難しい状況です。
そうしたなかで、いまや、島全体の経済を支える存在となった韓国人観光客。
文化の違いに戸惑うこともあるということですが、古くから日韓交流の拠点だった対馬の韓国との結びつきはいま、さらに強まっています。