「阪神9-6ヤクルト」(15日、京セラ)
巨人が横浜に敗れ、阪神が首位を奪回した。金本知憲外野手(42)は5月30日以来の猛打賞。同点の二回、天井に当たったインプレーの打球を、球審がファウルと誤審。真弓明信監督(57)の猛抗議にも判定は覆らなかったが、打ち直しで勝ち越しの10号ソロを放った。17年連続2ケタ本塁打で長嶋茂雄氏らに並んだアニキは、好守も光り、貫禄を見せつけた。
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野球の神様が勝敗を決めかねた一戦は、最後に阪神へと笑顔を向けた。一塁上から左手でベンチを指して、興奮を隠さなかった鉄人。3時間44分にわたる熱戦の殊勲者は、猛虎の主砲金本だった。
1点ビハインドの八回だ。無死一、二塁で打席に向かうと2‐3からの6球目、外角のスライダーに食らい付いた。打球は一、二塁間を抜け、二塁から新井が生還して同点。なおも1死一、三塁の好機をつくって、続く城島の逆転打につなげた。
「オールスター明けから、あまりいい仕事ができてなかったんでね。うれしいというより、すごくホッとしています」
城島と初めて並んだお立ち台で、金本は偽らざる心情を吐露した。5月30日以来、77日ぶりの猛打賞。始まりは二回だった。1死走者なしで迎えた打席で初球、完全にとらえた打球はドームの天井にある、スーパーリングの2段目を直撃した。跳ね返った打球は二塁後方にポトリ。本来はインプレーだが、一塁審判がファウルの判定。前代未聞の打ち直しとなった。
10分以上の抗議後、2‐3からの6球目。外角低めの143キロを狙った。打球はグングンと伸びて、右中間スタンドに着弾。虎党は総立ちで鉄人をたたえた。衝撃の10号アーチで17年連続の2ケタ本塁打。長嶋茂雄氏(巨人)の記録に肩を並べた。さらに三回には1死一、三塁から中前適時打。この一打で2340安打とし、尊敬する山本浩二氏(広島)を抜いた。
小学1年生のころだった。観戦に訪れた市民球場で、外野スタンドから中堅を守るスターに声援を送った。数年後、初めて球場に足を踏み入れた際に迷わずセンターへ走った。「ここに浩二が立っとるんじゃのぉ」。感動で身震いした。「人気があまりに高かった」ため、幼少期は三村敏之が好きだった。それでも山本浩二は、野球少年にとって特別な存在だった。
「全然知らなかった。浩二さんを抜くなんて、おこがましいというか…。ビックリしています」
10日の広島戦前。オフの自主トレの拠点とするトレーニングジム・アスリートに向かった。この場で肩痛発症後初めてスクワットを解禁。故障中は持てなかったバーベルを肩に担ぎ、体に130キロの負荷をかけた。同日は休館日だったが、代表の平岡氏に無理を言って開放してもらった。静かな場所で1人黙々と、己の体と向き合った。1日あけて12日もスクワットを敢行。鉄人の体は日ごとに調子を上げている。
守備でも六回、後方の打球をフェンスに激突しながら好捕した。「来週末に巨人との3連戦があるので、勝ち越してドームに帰ってきたい」と金本。再び首位に立ったが慢心はない。見据える先はV奪回、日本一だけだ。