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きょうの社説 2010年8月17日
◎4〜6月GDP 景気は「踊り場」の認識必要
4〜6月期の実質国内総生産(GDP)速報値が前期比プラス0.1%となり、市場予
想のプラス0.6%を大きく下回った。プラスとはいえ、9月発表の改定値ではマイナス転換もあり得る数値で、実質的なゼロ成長である。いよいよ景気減速が鮮明になってきたと受け止めてよいのではないか。荒井聡経済財政担当相は会見で「景気は持ち直しが続いており、自律的回復に期待して いる」と、従来からの判断を踏襲したが、甘過ぎる認識だ。GDP速報値の発表に際し、内閣府の津村啓介政務官は「(景気は)既に踊り場入りしている」と述べており、速報値の数字を見る限り、景気認識は政務官の見方の方がしっくりくる。 家電のエコポイント制度やエコカー補助金など、個人消費を支えてきた政策効果が一巡 し、個人消費は横ばいから下落に転じる気配がある。7〜9月期は猛暑による消費のかさ上げと、エコカー補助金の終了やたばこ増税前の駆け込み需要などで、なんとか持ちこたえるかもしれないが、下押しの圧力は強まるばかりだろう。 特に不安がよぎるのは、プラスとみられた民間住宅投資が予想に反して1.3%減と2 四半期ぶりに落ち込んだことだ。日銀による追加の金融緩和に対する期待とともに、政府による新たな経済政策の後押しが必要な局面である。 内需の中心である設備投資はプラスを維持したが、0.5%増という数字は市場予想の 下限であり、伸び悩んだ印象だ。円高による不透明感が強く意識されたためであり、企業の投資マインドは低調と言うほかない。米国や中国の景気減速が指摘されるなか、好調な外需が息切れするようなら、ほぼ確実にマイナス成長に落ち込むだろう。 家電のエコポイント制度やエコカー補助金は、政権交代前の麻生政権の置き土産だった 。菅直人首相には、日銀に追加緩和を要請するだけでなく、自ら主体的に行動することを求めたい。景気を下支えしてきた経済政策の賞味期限が切れてきた今、これに代わる新たなアイデア、特に個人消費を刺激する経済政策を真剣に考えないと、手遅れになってしまう。
◎来年の百万石まつり 加賀藩のスケール感が大事
60回を迎える来年の金沢百万石まつりは、2006年からの改革の成果と、まつりの
今後の方向性を示す節目である。14年の北陸新幹線金沢開業を見据え、新しい時代にふさわしい、まつりの姿を探る場とも言えよう。来年の改革案として、まつりのメーンである百万石行列に、歴代加賀藩主全員が登場す るほか、前田家の嫡子誕生や官位昇進などの慶事を城下挙げて祝った「盆正月」を再現する催しが固まった。これまでの行列では藩祖利家や2代利長、3代利常が登場していたが、節目の年に歴代藩主を紹介するのも一つのアイデアである。 「盆正月」は文字通り、盆と正月が一緒にきたような藩政期の熱気を再現するため、獅 子舞や太鼓などの地域芸能が繰り広げられる。企画を練り上げ、成功させれば、「盆正月」は百万石まつりの新たな基調になりうるだろう。 「盆正月」は年内に公開される映画「武士の家計簿」にも登場する。これを機に加賀藩 の歴史や金沢への関心が高まることが予想され、映画と連動した仕掛けをさらに工夫することも大事な視点である。加賀藩のスケール感をより鮮明に打ち出す改革を望みたい。 百万石まつりは、50回の2001年は、利家に松平健さん、まつに斉藤慶子さんが扮 し、まつ役に初めて女優を起用したことで話題性を引き出した。来年も大物俳優が登場すれば関心は高まるだろうが、より大事な点は、市民、県民が加賀藩の歴史や文化を見つめ直し、誇りや愛着を高める場として機能させることである。 この10年で金沢城跡、前田家墓所、辰巳用水の国史跡指定など、城下町の歴史資産に 磨きをかける取り組みが加速した。かつては商工まつりの色彩が強かった百万石まつりの改革も、その流れのなかに位置づける必要がある。 京都の衣装店から借りていた行列の衣装については、加賀友禅や加賀縫、加賀蒔絵など 地元工芸品の活用を検討することになった。行列で「工芸王国」を発信する意義ある案である。金沢の祭事を超え、加賀藩圏という、より広域的な視点をもって改革を重ねたい。
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