【2010-KG035】
米国の夏休み読書推進プログラム
カレントアウェアネス-E 第176号(2010.8.5)掲載記事(E1078)を転載したものです。
米国の多くの公共図書館では、6月から8月の子どもたちの夏休み期間に、“Summer Reading Program”と呼ばれる読書推進プログラムが行われている。このプログラムは、子どもたちの夏休み期間中の読書や図書館利用を推奨するための取り組みとして1890年代に初めて行われ、以来100年以上にわたって続けられている。
プログラムの主導的な役割を果たす組織として“Collaborative Summer Library Program”(CSLP)がある。CSLPは1987年にミネソタ州で設立され、現在では49の州と特別区等が参加するまでに拡大し、参加館はアイデアや知識等の共有を図ることができる。CSLPは毎年、対象世代別のスローガンを設定しており、2010年のスローガンは「水」をテーマに、子ども向けは“Make a Splash - READ”、ヤングアダルト(YA)向けは“Make Waves at Your Library - READ”、大人向けは“Water Your Mind @ the Library”として いる。各地の図書館は、これらのスローガンかあるいは独自に設定したテーマに基づき様々な活動を行っている。
CSLPの設定したテーマを基にした活動では、カリフォルニア図書館協会を始めとして、「水」や「海」に関する本のリストを作成・公開し読書を推進している、という場合が多い。独自にテーマを設定している例としては、“Reading is Art-RAGEOUS”をテーマにしたシカゴ公共図書館の活動がある。街にある芸術を探したり、本の中のキャラクターを模写したり、絵や芸術に対する関心を高めて、図書館にある関連資料を利用してもらおうという活動である。
複数の図書館が連携して活動している場合も多くある。例えばニューヨーク公共図書館では、ブルックリン公共図書館やクイーンズ図書館等と連携して、“summerreading.org”というウェブサイトを運営し、ソーシャルネットワーキングサービスを使った利用者同士の情報交換や、本のレビューの共有などを図っている。
動機づけのための特典を付けるプログラムもある。ボストン公共図書館は、地元のメジャーリーグチームであるボストン・レッドソックスと提携し、本を3冊読んでそのうちの1冊のエッセーを書いて応募すると、抽選でレッドソックスの試合のチケットがもらえるイベントを実施している。デトロイト公共図書館は、ファーストフード大手のマクドナルドと提携し、図書館の資料を読んでスタンプを集めた子どもたちに、マクドナルドでの食事をプレゼントするという方法で読書推進に努めている。
2010年6月には、米国ドミニカン大学の図書館情報学の研究グループが、“Summer Reading Program”の効果に関する調査レポートを発表した。レポートでは、プログラムに参加した子どもたちが参加していない子どもたちよりも読書能力に関するテストで高い成績を残したことや、プログラムに参加した子どもたちは夏が終わっても読書を続け図書館にも足を運んでいること、などが報告されている。
(2010.8 update) |