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社説

国立追悼施設 超党派で議論進めたい(8月16日)

 65回目の終戦記念日だったきのう、多くの人が道内外で祈りをささげた。

 小泉純一郎元首相が2006年の8月15日に靖国神社に参拝し、内外で激しい論議を巻き起こしてから4年。菅直人首相と全17閣僚は事前に表明していた通り参拝を見送った。

 政府に記録が残る1985年以降、終戦記念日に閣僚が一人も参拝しなかったのは初めてだという。A級戦犯の合祀(ごうし)を理由に、首相や閣僚の公式参拝は問題があるとする民主党の見解に沿った対応だ。

 日韓併合100年の首相談話に続き、東アジアとの連携を重視する菅内閣のカラーを示したと言える。

 靖国参拝をめぐっては自民党政権時代、中国や韓国の反発をたびたび招いてきた。歴史認識問題で政権交代を印象づけた姿勢は評価したい。

 現職首相の参拝見送りは、安倍晋三、福田康夫、麻生太郎各氏に続き4年連続となる。

 内外の人々がわだかまりなく戦没者を悼み平和と不戦を誓う場をどう造るか−。政権が変わり閣僚参拝が見送られたのを機に、議論を深め、具体化する道を探ってはどうか。

 靖国神社は先の戦争を正当化する歴史観を持ち、A級戦犯を合祀する。国のリーダーである首相や閣僚の参拝が政治問題化し、中国などとの外交問題を生じるゆえんだ。

 そうした事態を繰り返さないためにも新たな追悼施設を考えたい。

 論議の土台となるのは小泉政権下の02年、当時の福田康夫官房長官の私的懇談会がまとめた提言だ。そこでは「国立」「無宗教」の施設が必要だと結論づけた。

 だがこの提言には日本遺族会や自民党が「靖国神社の形骸(けいがい)化につながる」と反発し、小泉元首相が参拝を続けたこともあって宙に浮いた。福田氏も首相就任後は慎重姿勢に終始し、たなざらし状態となっている。

 追悼をめぐっては、A級戦犯の分祀(ぶんし)や靖国神社を非宗教法人化し国家管理する案などもある。懇談会の提言を踏まえれば、国立の千鳥ケ淵戦没者墓苑を拡充し、新施設とする案が現実的な検討材料となるだろう。

 同墓苑は靖国神社の近くにあり、身元が分からない無名戦没者や民間人の遺骨を納めている。かつて自民党内でも拡充案が検討された。

 首相は14日、静養先の長野県軽井沢町で「議論の様子を見たい」と新施設には慎重な姿勢を示した。

 民主党は野党時代の09年の政策集で「無宗教の国立施設」の設置へ取り組みを進めるとしており、首相の模様眺めはいただけない。

 公明、社民、共産各党も無宗教の国立施設に前向きな考えを示している。超党派の協議を始めるときだ。

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