MIRAIOでは弁護士の監督のもとで、事務員らが依頼者の債務状況などを電話で確認している=東京都港区、井上写す
だが、簡単で確実に稼げるため、弁護士・司法書士事務所の新規参入は増え続ける。テレビや電車内の広告で派手に宣伝し、年間数千〜数万件の債務整理を扱う事務所も少なくない。
そんななか、ホームページ上で「元大手金融業者スタッフ在籍」とうたう司法書士事務所もある。「債権者側の交渉と駆け引きの手法を熟知」とし、貸金業者との交渉がスムーズだとPRする。過払い金の返還がかさみ、経営が苦しくなった消費者金融各社が大量にリストラした人材が、流れ込んでいるという。
日本貸金業協会によると、過払い金の返還請求による金利の返還額と債務減額の総額は、08年度に1兆円を超えた。「過払い金バブル」の状況になっている。
さらに6月に改正貸金業法が完全施行され、借金額が年収の3分の1に抑えられたことも影響しそうだ。借金が上限を超えて融資を断られるケースが増えており、借りては返すを繰り返してきた債務者が、返済に行き詰まって既存の借金を整理するとみられている。大手弁護士事務所幹部は「整理の一環で、過払い金を取り戻したいという相談が増えるだろう」と話す。
■日弁連、報酬の上限検討
一方で、依頼者の苦情やトラブルは増加している。
債務整理は、弁護士と法務省の試験に合格した認定司法書士にしか認められていないが、事務職員に任せっきりにするなど、悪質な事例も尽きない。
全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会が09年11月、電話相談会を開くと、「説明もなく高い報酬をとられた」「電話のやりとりだけなのに、報酬が高すぎる」など、全国から124件の相談が寄せられた。本多良男事務局長は「債務者の生活再建などを考えず、高額な報酬を請求され、債務者にとっては二次被害だ」と指摘する。
全国の消費生活センターに寄せられた弁護士に関する苦情・相談件数は、06年度の946件から、09年度は1912件と倍増した。 日弁連や日司連も対策に乗り出し、昨年、債務整理の指針をまとめた。依頼者と直接面談する▽費用を丁寧に説明する▽債務整理のうち、過払い金返還だけを引き受けないことなどを規定した。だが、直接面談をしない事務所がいまだにあり、日弁連は今は原則自由化されている広告の規制や、報酬の上限設定も検討している。
規制強化の動きに、大手法律事務所側の反発は根強い。
法律事務所MIRAIO(旧ホームロイヤーズ)は、「電話対応で不都合はない」と強調する。代表の西田研志弁護士は「債務整理を希望する多くの依頼者に対応するため、処理を合理化するのは当然」と話す。(井上裕一)
政府や企業の機密情報を暴露する民間ウェブサイトが、威力を見せつけている。米軍内部からの情報流出も疑われ、オバマ政権の足元をも揺るがし始めた。