そんな窮地をようやく脱した頃、アジア経済危機が起こり、次いでITバブル崩壊、さらには米国同時多発テロという大波が世界経済を襲ったのです。自民党政権が大胆な財政支出を行ったのは、これら相次ぐ危機を乗り越えるためにほかなりません。
強調したいのは、その間の失業率です。先進国の多くは10%を超えましたが、日本は最も悪化した時でも5.7%でした。財政出動により国債残高は確かに増えましたが、ならば失業という形で一部の方に痛みを押しつけた方がよかったのでしょうか?
私はやむを得ないことだったと思います。
財政状況を悪化させているのは、むしろ民主党です。自民党政権時代、2011年までにプライマリーバランスを黒字化するという目標を立てました。
私が総理を務めた時にはあと5兆円というところまで改善したのですが、その後のリーマン・ショックと鳩山由紀夫政権の放漫財政により、今では25兆円まで赤字が拡大しています。
自民党政権時代、その年の税収が国債発行額を下回ったことなど終戦直後の昭和21(1946)年、たった1度きりです。しかし今や税収が37兆円しかないのに44兆円も国債を発行し、そしてばらまいている。このままでは日本は大変なことになると思います。
民主政権は日米同盟の重要性を理解していない
北朝鮮のミサイル発射実験の様子〔AFPBB News〕
日本の外交、安全保障の基軸は日米同盟です。日本の安全は自衛隊と米軍によって守られています。
残念ながら、専守防衛を国是とする日本には攻撃力がありません。例えば北朝鮮が発射したミサイルに対する防衛、兵隊が上陸してきた時の軍事的対処はできますが、実際にミサイル攻撃をされてもミサイル基地を叩くことはできません。
代わりに攻撃するのは米軍です。周辺諸国もみんなそのことを知っています。だからこそ、米国と歩調を合わせることで日本の国際的な発言力も強まることになる。
日米同盟をしっかり守らなければ日本を守ることはできないということを、総理大臣はもちろん閣僚は一番に踏まえないといけません。
普天間基地問題で露呈されたことですが、民主党政権はそれが分かっていない。一番大事なポイントは、日米同盟は米国の若者が日本のために命を懸けることによって成り立つのであって、その逆(日本の若者が米国のために命を懸けること)はないということです。
同盟関係を機能させるにはそれを理解し、米国から信頼されないといけないのに、民主党は根本からぶち壊してしまいました。
そもそも鳩山前総理は「駐留なき安保」などという暴論を吐いていた人です。米軍は邪魔だけれど、有事の時には助けてほしいなどということが成り立たないのは、ちょっと考えれば分かるはず。
彼のような人が総理を務めたら、それだけで命を懸けて日本を守る気など失せてしまうでしょう。
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